今年のフェラーリF1マシンの戦闘力の低さはすでに明らかになっているが、高速サーキットであるスパ・フランコルシャンで行われた先週末のベルギーGPはフェラーリにとってまさに悪夢のような週末となってしまった。
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予選ではなんとかシャルル・ルクレールもセバスチャン・ベッテルもQ2へ進出したもののそれが精一杯。決勝でも結局ポイントには手が届かずフェラーリのコンストラクターズランキングは5番手のままだ。
その一方でルノーがスパでは強さを見せてダニエル・リカルドとエステバン・オコンが4位と5位で決勝をフィニッシュ。現在コンストラクターズランキング6番手のルノーがフェラーリに2ポイント差まで追い上げてきている。
このままの状態が続けば、今年はフェラーリがコンストラクターズ選手権を6位以下で終える可能性も高く、母国イタリアのメディアたちはまさに“危機的”な状態だと報じている。
しかし、フェラーリを率いるチーム代表のマッティア・ビノットはテレビ局『Sky Italia(スカイ・イタリア)』に次のように語っている。
「危機的だと言うのは間違いだと私は思うよ」
「嵐のまっただ中にいるのは疑いようもないがね」
今季のフェラーリ不調の最大の原因は2019年との比較においてエンジンパワーが大幅に失われたためであることは確かだ。
2019年にエンジンの合法性に疑念が持たれたフェラーリだったが、F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)との間で秘密の取引を行い、違法な手法を2020年には用いないことを条件に2019年については目をつぶるという約束をとりつけたものだと考えているF1関係者は少なくない。
レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーはスパ・フランコルシャンにおいてそのことを考えると今でも苦々し思いだと語っている。
もしフェラーリの2019年仕様エンジンが違法だと判定されていれば、フェラーリには獲得ポイントの剥奪などの処分がくだされていたはずであり、その場合レッドブル・ホンダはランキング2位でシーズンを終えていたはずだからだ。
メルセデスF1チームを率いるトト・ヴォルフもホーナーの言う通りだと次のように語った。
「火に油を注ぐようなことをしたいとは思わないが、昨年や一昨年はものすごくハードな取り組みを行うしかなかったし、過重労働ゆえに何人かが辞めるような事態にもなっていたんだ」
「私がクリスチャンに同意するのはそのためだよ」
しかし、当然ながらビノットは自分たちが不正を働いていたと認めることはない。
「昨年に比べると我々はいくらかパワーを失っている。しかし、誰もが同じようにパワーを失っており、我々の方がライバルたちよりも大きく失ったということだよ」
そう語ったビノットは次のように付け加えた。
「今、我々は今年のクルマの限界を目にしている。そしてその責任はチーム代表である私がとることになる」
ともあれ、高速サーキットであるスパ・フランコルシャンで全くと言っていいほど戦闘力を発揮することができなかったフェラーリだが、今週末にホームレースとして迎えることになるイタリアGP(6日決勝)の舞台モンツァ・サーキットもスパ以上の高速サーキットであり、ここでも苦戦が必至だと考えられている。
イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』の記者アンドレア・クレモネジは、今年のモンツァは新型コロナウイルスにより無観客レースとして開催されることがフェラーリにとっては幸いだったかもしれないと次のように書いている。
「今年のフェラーリには無観客で開催されるモンツァがふさわしいよ」