明日26日(水)からバルセロナでプレシーズンテスト2週目が開始されるが、そこでもメルセデスが持ち込んだ革新的ステアリングシステムである『DAS』に大きな注目が集まることになりそうだ。
この『DAS』は“Duel-Axis Steering”の頭文字をとったもので、「2つの軸を持つステアリング」という意味を持つものだ。
ドライバーがステアリングを前後に押したり引いたりすることでフロントタイヤの「トー角」を調整することができるこのシステムに関しては、現在のF1技術ルールに照らせば合法だと考えている者が多いようだ。
メルセデスのバルテリ・ボッタスは、チームが1年前からこのシステムの開発を始めていたことを明らかにし、次のように語っている。
「FIA(F1統括団体である国際自動車連盟)が禁止すると考えられるものだったら、チームはその開発を始めたりはしなかったと思うよ」
DASが生む効果は?
この『DAS』が生む最大の効果はタイヤの熱を維持したり、逆に冷却したりすることが容易になることだと考えられている。
だが、レッドブルのチーフテクニカルオフィサーであるエイドリアン・ニューウェイは違う見方をしているようだ。
「空力的な理由があるはずだよ」
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』にそう語ったニューウェイは次のように続けた。
「そして、私にはそれが合法的だとは考えにくいよ」
「ドライバーがステアリングを押したり引いたりしているときにはクルマは曲がらないんだからね」
2021年にはF1レギュレーションが大きく変わることになっているが、その新ルールにはステアリングで操作できるのはクルマを左右に曲がらせることだけだと記載されることになると考えられており、メルセデスが開発した『DAS』が使用できるのは2020年限りとなりそうだ。
フェラーリのチーム代表を務めるマッティア・ビノットは、ほかのチームがこの『DAS』をコピーしようとしても、恐らくはシーズン前半のうちに導入できるところにまでは行かないだろうと語り、次のように付け加えた。
「彼ら(FIA)はすでに正しい判断を下しているか、あるいはこれからそうすることになるだろうと私は確信しているよ。だが、私はFIAが下すであろう判断を完全に信頼しているよ」
DASの安全性は?
F1関係者の中には、この『DAS』の安全性に疑問を投げかけている者もいる。
しかし、このシステムを先週のプレシーズンテストで実際に使用したボッタスとルイス・ハミルトンはいずれも危険だとは思わないという趣旨の発言をしている。
メルセデスを率いるチームCEOのトト・ヴォルフも自らシミュレーターでそのシステムを体験してみたものの、それはまったく安全性には問題がないと確信できたと次のように語っている。
「すごく簡単だったことに驚いたよ」
「不自然な動作ではあるものの、その動きは小さいし、動作させるのはストレート上だけだからね」
そして、FIA関係者によれば、クラッシュした際のステアリングコラムの強度には何も心配はないと考えられているようだ。
さらに、F1公式タイヤサプライヤーであるピレリも『DAS』を使用することでタイヤの安全性が損なわれることは考えられないと見ているようだ。
ピレリの自動車レース責任者であるマリオ・イゾラは次のように語っている。
「我々はテストで使われた全チームのタイヤを分析したが、メルセデスのタイヤには何もおかしなことは認められなかった」
こうしたことから、2020年シーズン1年限りということにはなりそうだが、メルセデスが今季『DAS』を実戦投入することになる可能性が非常に高いと考えられている。