F1ではレース中の「ハードな戦い」をこれまでよりも許容する方向に動いているのかもしれない。
今季のF1第7戦カナダGPと第9戦オーストリアGPでは優勝のゆくえがFIAのF1競技委員の裁定によって決着するという展開となった。
カナダではトップを走行していたセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)がコースオフした際、ルイス・ハミルトン(メルセデス)の走行を妨げる形でコースに復帰したとしてペナルティーが科された。
一方、オーストリアではトップを走行していたシャルル・ルクレール(フェラーリ)をオーバーテイクしようとしたマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が接触。ルクレールはコース外に押し出される形となったものの、フェルスタッペンにペナルティーは科されず、ルクレールはF1初優勝のチャンスを逃していた。
そしてシルバーストン・サーキットで先週末に行われたイギリスGP決勝ではその2人が再び激しいバトルを展開。今度はルクレールがフェルスタッペンをコース外に押し出すようになったシーンも見られた。
「あれは仕返しをしたわけじゃないよ。競技委員たちがハードなレースを望んでいるのなら、僕もそれは歓迎だよ」
ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』にそう語ったルクレールは次のように付け加えた。
「僕はレースの前にこれからはもっとアグレッシブなレースをすると言っておいた。そして、その通りのことをしただけさ」
一方のフェルスタッペンもシルバーストンで起きたことには何の問題もなかったと次のように語っている。
「彼はハードに防御していた。だけど、あれでOKだよ。あれが僕の好きなレースなんだ」
実際のところ、今回のルクレールとフェルスタッペンの接触に関してはおとがめなしだった。そして、それ以外にもいくつかコース上でマシンが接触するケースが見られたが、イギリスGPでペナルティーが科されたのはフェルスタッペンに追突したベッテルだけだった。フェルスタッペンはそのクラッシュにより表彰台を逃している。
メルセデスF1チームを率いるトト・ヴォルフ(エグゼクティブディレクター)も、オーストリアとイギリスでのF1競技委員たちの判断を見れば、F1はコース上で多少の接触が起きるようなハードな戦いを容認する方向に進んでいるのだと考えている。
「再びハードなレースが許されているようだ。だが、ファンはまさにそれを見たいと望んでいるのだと私は思うよ」とヴォルフは語った。