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「EVってエレベーター?」竹岡圭、モータースポーツが未来のクルマを作る/未来のクルマとモータースポーツ

2017年10月12日(木)21:50 pm

【特集】「未来のクルマとモータースポーツ」では、モータースポーツも自動車もかつてないほどの大きな変化を迎えている今、各界で活躍するプロフェッショナルがどのように考えているのか、「未来のクルマとモータースポーツ」について語ってもらう。


「EVってエレベーター?」クルマ好きな方とそれほど詳しくない人とのギャップや電気自動車の今の課題を、女性の視点で楽しく分かりやすく解説してくれたのがテレビ番組でも活躍しているモータージャーナリストの竹岡圭さんだ。2017年からは自身の夢でもあった全日本ラリー選手権に参戦している。これまで数多くの新車に乗ってきた経験と、多くの知識を持っている女性ジャーナリストの目には、どんな「未来のクルマとモータースポーツ」が見えているのだろうか。

■女性視点で考える未来のモビリティとは?

「えっ?!「EV」ってエレベーターのことじゃないの?」と、この前友人に言われて、あぁ!普通はそうだよね!と、改めて思い直しました。自動車業界にいると、「EV」=Electric Vehicleが当たり前になっちゃってますが、まだまだこの言葉は浸透してないんだなぁ~と、改めて考えさせられた次第です。

でもね、実はEVを体験試乗していただくと、好感触を抱く女性が多いんです。「普通のクルマは、ガソリン燃やして走るなんて聞くと、変なところ触ったら危ないんじゃないかしら? なんて心配しちゃうけど、電気で動いてるって聞くとなんとなく安心かも」なんていう声が聞こえてくるほど大好評。掃除機や洗濯機等々、日常的に家電製品を使いこなしている女性は、もしかするとEVの方が親しみやすいのかもしれませんね。

特に街中で試乗していただくと、そんな声が多く聞かれます。停止状態からダイレクトにトルクを伝えてくれるEVは、ストップ&ゴーが多いところでは特に操作がしやすいんですよね。思った通りに操れるから、運転が上手くなった感じがするんですよ。同乗者として乗るにも、音は静かだし、振動は少ないし、ラクなことこの上ナシ。クリーンなイメージも伴って人気が高いのも頷けます。

とはいえ、EVがすべてにおいてベストか?というと、今のところはそうでもありません。意外に思われるかもしれませんが、まず環境面がそう。電気で走らせると確かに走行中は非常にクリーンです。排気ガスも出ませんからね。でもその電気を何で作ったのか?というのが問題になります。例えば、火力発電で作った電気で走っていたら元も子もないわけです。電気を作る際に、CO2(二酸化炭素)やNOX(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)等々が出てしまっていますからね…。

仮に、ソーラー発電や風力発電などクリーンな電気で充電できるとしても、設備の問題がありますよね。我が家もそうですが、マンション住まいで自宅に充電設備がない、なんていう場合も多いと思います。自動車通勤が多い欧州や米国などでは、自宅に充電設備がなくても、勤務先にあるので大丈夫なんていう話も聞きますが、日本ではまだそのような会社は少ないのではないでしょうか。

さらには、充電容量(航続距離)の問題もあります。高密度の電池をたくさん積めばそれだけ長く走れますが、その分価格も高くなる。手が届きそうな価格帯のものは、それなりの距離しか走れないことが多く、従来のガソリン車と同じように使おうと思うと、なかなか難しい場合もあるんですよね。

■モータースポーツが未来のクルマを作る

どんな動力をどんな燃料で走らせるのか? この課題への取り組みはまだまだ続きそうですが、そういったことを解決する方法のひとつとして、実はモータースポーツもお手伝いすることができるんです。「え~っ?! モータースポーツなんてビュンビュン飛ばすだけじゃないの?」なんて具合に、そんなこと急に言われても皆さん頭の中は「?」マークだと思いますが、モータースポーツは言うまでもなくスポーツマンシップに則ったいわゆる純粋なスポーツという顔の他に、もうひとつ自動車の開発実験の場という顔を持っているんですよね。

ご想像通り、モータースポーツの現場はクルマにとって非常に苛酷です。特に耐久レースはその最たるもので、ものすごく速いレーシングスピードで、周りに多数のクルマがいる状況の中、長い距離を走行する耐久テストをしているのと同じ状態になります。そういったデータをフィードバックして、クルマを開発する際の参考にするのですが、それをもっと日常的なシーンに置き換えたのがラリーなんですよね。

私が生まれて初めてジムカーナというモータースポーツを体験してから早20年以上になりますが、その間一度だけラリーレイドモンゴルという8日間の冒険ラリーに参戦したのを除き、メインはサーキットで開催されるレースに参戦してきました。そして昨年、一念発起。この年齢からまったく新しいことにトライするのは大変でしたが(笑)、自分のレーシングチーム「圭rally project」を立ち上げてラリーという競技を始めまして、2017年は憧れだった全日本ラリー選手権に参戦しています。

■ラリーは日常に近い その理由は?

参戦してみて改めて思うのは、ラリーは本当に日常の運転に近いということ。サーキットでのレースと違って、ラリーが開催されるのは公道です。SS(スペシャルステージ)と呼ばれる速度無制限の特別許可を受けた区間と、リエゾンと呼ばれるSSからSSへの移動区間を組み合わせて成り立っています。このリエゾン区間はラリー用に特別許可されているわけではないので、競技中と言っても他のクルマなどと一緒に制限速度や交通ルールを守って走ることになります。とはいえ、タラタラ走っていると次のSSのスタート時間に間に合いませんし、逆に早く着き過ぎてもペナルティを取られてしまいますし、なにしろ交通違反で捕まったりしたらその場で失格にされてしまうので、きちんと効率よく走ることが求められるんですよね。

これって極端に言うと、会社の業務で時間に追われながらお得意先回りをするシーンや、さまざまな用事をこなしながらお子様を幼稚園にお迎えに行かなきゃならないシーン等々に、通じるものがあるんですよ。時間制限がある中で効率よく動くという意味では同じですからね。
他にもラリー中は、途中で給油もしますし、道の駅でお手洗い休憩もしたりもしますから、より日常に近い。SSでは苛酷に走り、リエゾンでは他のクルマと一緒に普段の生活スタイルに通じる状況で走るということで、より実地に近いテストをしていることになるんです。

そういったわけで、最近レースの世界では、EVやHV(Hybrid Vehicle)でのレースが台頭してきていますけれど、ラリーでもそんな動きがあります。すでにHVのクラスはありますし、かつてはEVでの参戦もありました。さすがに完全EVでの参戦は、充電設備や充電時間の関係で、まだルールが整っていなかったりと、いろいろ問題があったようですが、今後EVの市販車ラインアップが増えてきたらEVクラスなんていうのもできるかもしれません。そこで好成績を納めるようになれば、そのEVやHVのクルマのポテンシャルの高さを証明できるでしょうし、速さを含め効率よく走れる性能を追求することで、日常シーンで使いやすいEVやHVの開発に、直結的にフィードバックもできると思います。

また、ラリーは観光地で開催されることが多いので、走行中は非常にクリーンで音も静かなEVやHVは、環境への配慮という意味でもいいかもしれないですね。WRC(世界ラリー選手権)では、世界遺産がスタート地点になっていたりもしますが、そういった特別な場所とモータースポーツのコラボレーションなんてことも、もっとやりやすくなると思います。元々人が集まる場所でラリーをやれば、新たなファンが増える可能性も高まりますしね。

まぁ、もちろん、こんな小難しいことを考えてラリーを始めたわけではありませんが(笑)、モータージャーナリストとして、モータースポーツと自動車を日本の文化にしたいと思って参戦していますので、その活動の一環として新たな発信ができたら面白いなと思います。EVやHVでの参戦にも興味津々です。

■自動運転でラリーも近い?

さて、もうひとつ最近の話題と言えば自動運転ですが、これもラリーと関連付けができます。いまあるものはあくまでも運転支援技術ですが、公道で行うというラリーの性格上、さらに実地に基づいたテストができると思うんですよね。特にラリーカーが走る前にコースの安全性チェックを兼ねて走行する00(ゼロゼロ)カーや0(ゼロ)カーは、自動運転になる日が来るかもしれません。SSがクリアできるくらいの自動運転ができれば、それこそどこでも自動で走れるでしょうから(笑)。

自動運転はつまらないなんていう声も聞こえてはきますが、お子様やご主人の毎日の送り迎えを自動運転車が代行してくれたら主婦の皆さんはかなり負担が減りますし、休日のロングドライブもお出かけ時の元気な時はいいとして、遊び疲れた復路は自動運転してくれたらラクだし安全です。ようは、使い方が大事なんだと思うんですよね。

自動車側の技術もそうですが、道路側のインフラ整備に法整備に…と課題が盛りだくさんなので、急に全面的に自動運転になることはあり得ませんが、高速道路の1車線だけ自動運転レーンにするなど、限定的にはすぐにでも施行できるような今の世の中で、EVなんて音がないからつまらないとか、自動運転なんて乗せられているだけでつまらない、などと頭から決めつけるのはちょっと勿体ないと思います。その場その場に応じて、クルマを使う人が自由に選択して使えるならば、それでいいと私は思っています。

それと同じで、モータースポーツなんて危なそうとか、環境に悪そうとか決めつけるのではなく、もっと大きな目で見て、観客として参加者として主催者としてetc…、多方面から参加してもらえてこそ、文化になっていくんだと思います。そして、女性は新しいものへの柔軟性が高いという文献もあるそうですし、モータースポーツに関心がある女性も増えているようなので、同じ女性として私自身まだまだワクワクしています!

■ワクワクする未来を見せてくれる東京モーターショー

そして、そのワクワクのこれからの形を見せてくれる、そのヒントを提示してくれるのが、モーターショーなんです。自動車業界は日進月歩、ものすごい勢いで進化しています。もしかすると、明日にはいま抱えている悩みをブレイクスルーするような技術が、誕生するかもしれません。そして、そんな最新技術や、そこへのトライの過程、そしてそこからつながる未来のカタチを見せてくれる場のひとつが、モーターショーなんですよ。

最新のカッコイイデザインのクルマを見る楽しみももちろんありますが、これから登場する未来の予想図、デザインも技術も見どころ盛りだくさん。特に、EVやPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)については日本が一歩も二歩もリードしている分野ですから、見どころ満載なこと請け合いです。
日本のこれから、世界のこれからを見学&体験しに、ぜひぜひ第45回東京モーターショー(2017年10月27日(金)〜11月5日(日)、東京ビッグサイト)へ出かけてみてくださいね!

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