今年のF1カーは大幅なレギュレーション変更により、空力によるダウンフォースや幅広タイヤによるグリップ向上が図られ、昨年までよりもかなりコーナリングスピードが向上している。
この速くなった新F1カーへの期待も大きく、今週末に開催されるF1第2戦中国GP(9日決勝)にも昨年よりも多くの観客が訪れるだろうと期待されている。
■オーバーテイク減少の予想が的中したオーストラリアGP
だが、F1カーのスピードアップが図られた反面、コース上でのオーバーテイク(追い抜き)はかなり減ることになるだろうと言われていたが、実際にメルボルンで行われた開幕戦オーストラリアGP決勝はまさにその予想通りの結果となっていた。
これに関し、3度F1王座についた元F1ドライバーであり現在はメルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダは、『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「メルボルンはこれまでも常にオーバーテイクが難しいサーキットだったんだ。モンテカルロよりもわずかにいいくらいだ」
確かにラウダが言うようにメルボルンのアルバート・パーク・サーキットはオーバーテイクが難しいのは確かだ。しかし、実際のところ2016年のオーストラリアGP決勝では合計37回のオーバーテイクが行われていた。ところが今年はそれがたった5回に減ってしまったのも事実だ。
■長いストレートがある中国ではオーバーテイク増加の期待
そんな中、レッドブルのマックス・フェルスタッペンは母国オランダのメディアに次のように語った。
「オーストラリアではオーバーテイクは難しいね。だけど、中国には長いストレートがあるからもっと増えるはずだよ」
今季ウィリアムズからメルセデスAMGへと移籍したバルテリ・ボッタスも同様の考えを持っているようだ。
「幅が広くなったクルマは空気により大きな穴を開けるんだ」
そう語ったボッタスは、次のように付け加えている。
「だから、ストレートに十分な長さがあれば、ブレーキングポイントに到達するまでに(前車に)接近するのはたやすくなるはずだよ」
■もう少し様子を見たいとFIA
F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)のF1競技委員長を務めるチャーリー・ホワイティングも、オーストラリアでオーバーテイクが減ったからといって、今のところあわててルールを見直すことは考えていないと次のように語った。
「まだたった1レースが終わっただけだ」
「メルボルンは常にオーバーテイクの問題を抱えているが、いずれにせよ、DRSゾーンを延長することは不可能だったんだ」
そう語ったホワイティングは、次のように付け加えている。
「だが、上海やバーレーンは長いストレートがあるサーキットだ。だから、もしまたそこでも問題が起きるようであれば、ゾーンを延長することを検討することもできるだろうね」
■状況によっては今後DRSゾーンの延長も
DRSとは“Drug Reduction System”の略語であり、リアウイングの角度を変えて空気抵抗を減らすことにより一時的にスピードアップを図り、前のクルマを追い抜きやすくするシステムだ。多くのサーキットでストレート部分に2か所、このDRSを作動させることができる区間(DRSゾーン)が設けられている。
このDRSは、ドライバーの力量によらず、人為的にオーバーテイクを増やすものだとして批判的な見方をする者も少なくない。だが、これまで以上にオーバーテイクが難しくなった今季のF1では、逆にDRSゾーンをこれまでよりも長くするといった対応をとる必要があるのではないかとの意見も出されている。
ホワイティングのコメントからすれば、中国GPとその1週間後に行われるバーレーンGP(16日決勝)でのオーバーテイク数などを検討した上で、その後グランプリが開催されるサーキットでDRSゾーンがこれまでよりも長く設定されるという可能性もありそうだ。