スイスにあるミハエル・シューマッハの自宅から送られてきたメッセージを読んだフェラーリのチーム代表マウリツィオ・アリバベーネは、涙がこぼれ落ちるのをこらえきれなかったという。
これまで長く不振が続いていたフェラーリだが、かつてフェラーリ時代に5回F1王座に輝いたシューマッハの後輩にあたるセバスチャン・ベッテルが、見事に移籍2戦目にしてフェラーリに35レースぶりの優勝をもたらした。フェラーリのメンバーは誰もがこれまでのうっぷんを晴らすかのように、その感動にひたっていた。
だが、フェラーリのスポンサーであるマールボロの責任者としてシューマッハ時代をチームとともに過ごした経緯を持つアリバベーネは、ベッテルがトップでチェッカーフラッグを受けたときにもあまり感情を表に出さないように努めていたという。
「私は常に冷静であろうと心がけていたんだ」
イタリアの『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』にそう語ったアリバベーネは、次のように続けた。
「だが、1通のメールを見て泣いてしまったよ」
『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』によれば、それはシューマッハのマネジャーであるザビーネ・ケームからのものだったという。ケームは先週末のF1マレーシアGP(第2戦)をそのシューマッハの自宅で、彼の妻であるコリーナとともにテレビで見ていた。
そして、F1キャリアを通じて7度F1チャンピオンに輝いた伝説的ドライバーのシューマッハは、46歳となった今も、自宅で2013年末のスキー事故で脳に受けた損傷のリハビリを続けている。
アリバベーネは、ケームから受け取ったメールの内容を明かすことはなかったが、これまでにもベッテルとシューマッハには共通点があることを発見したと語っていた。
「最初にそれに気付いたときには、かなり感動したよ」
「彼らは気質も違えば性格だって違う。だが、セバスチャンの仕事への取り組み方は、みんなのやる気を引き出すためにすべての事をすごく深く掘り下げていくし、時には建設的な批判を行うんだ。それはミハエルを思い出させるものだったよ」
そう語ったアリバベーネは、次のように付け加えた。
「彼らはどちらも同じ文化的背景を持っているし、こうした完ぺき主義的な部分を持っている。それが、彼らがフェラーリに持ち込んだものなんだ」
アリバベーネは、表彰台の中央に立ったベッテルの中にシューマッハの姿を見ていたに違いない。