トロロッソから2014年、親チームのレッドブルに移ってきたダニエル・リカルドの快進撃が続いている。これにクリスチャン・ホーナー、ディートリッヒ・マテシッツ、ヘルムート・マルコ博士らレッドブル首脳は一様に、「驚き」の表情だ。
オーストラリアからやってきた新入りの活躍で、F1ドライバーズ世界選手権4連覇の絶対的エース、セバスチャン・ベッテルの影が薄くなってしまったのだから、それも当然である。
リカルドがF1に上がって最初のボスとなったのはコリン・コレス博士だ。彼は、リカルドの躍進ぶりに何の驚きも感じないという。
F3時代のベッテルもよく知るコレス。チーム代表を務めていた今は無きHRTがレッドブル育成選手のリカルドをドライバーに起用したのは、2011年のことだった。
「若いにも関わらず、セバスチャン(ベッテル)はとてつもなく経験豊富なドライバーだ。ダニエルもダニエルで、才能は計り知れない」と、ドイツ『Die Welt(ディー・ヴェルト)』に話すコレス。
「4度のF1世界王者として、セバスチャンにはより大きな重圧がかかる。彼には勝ちが義務付けられているんだ。ダニエルも自分なりの規範を持ち、まじめに取り組んでいるが、本来は底抜けにリラックスした性格の持ち主だよ」
「その点がセバスチャンに対する大きなアドバンテージだ」
「最初にダニエルがレッドブルをドライブすると聞いたとき、そんなチーム内の構図がはっきりとイメージできたよ」
「今もいったように、私は両ドライバーをよく知っている。ダニエルは少なくとも非常に高いレベルでベッテルを相手に戦っている。というわけで、ここまでのダニエルに何ら驚きは感じない」
「2人は、とても才能豊かで自分に厳しく、アグレッシブだ。ミハエル・シューマッハ、(キミ)ライコネン、(フェルナンド)アロンソに次ぐ世代のドライバーだね」
「しかしダニエルは持ち前の性格から、新世代のマシンも新規則もまったく気にならない。これは彼にとっていちばんの資質だよ」
「HRT時代から彼の才能ははっきりとみてとれた。ドライバーとして申し分なかったよ。私以外、ほとんどの人間は気づいていなかったが、当時も今も、私にとって彼は将来のF1世界チャンピオンだ」
「HRTのようなチームは誰にも相手にされない。従ってダニエルがいかに優秀か分かっていたのは、われわれとレッドブル、それにごく一部の関係者だけだった」
最終的にベッテルがチーム内の優位を取り戻すかどうか質問されたコレスは、次のように答えている。「それは誰にも分からない」
「ただひとついえるのは、彼(ベッテル)にとって簡単ではないということだ。そんな状況をダニエルもF1ファンも楽しむといいよ」
「彼(リカルド)はF1にとって願ってもない存在だ。2人の戦いはこれから、どちらにどう転ぶか分からない。すごくエキサイティングな展開じゃないか」