昨年4年連続でF1チャンピオンとなったセバスチャン・ベッテル(レッドブル)が、来シーズンに復活することになったマクラーレン・ホンダへの移籍に関して興味を示していると報じられている。
マクラーレンの総帥であるロン・デニスは、エンジンパートナーのホンダとともに新たな時代を迎えるにあたり、力のあるトップドライバーとの契約を望んでいると伝えられており、その候補としてフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)、そしてベッテルの名前があげられている。
■アロンソやハミルトンの獲得は困難か
だが、アロンソは今週、単に現在の契約を全うするばかりでなく、今後もフェラーリとの契約延長を望んでいると明言。事実上、マクラーレンへの移籍を否定している。
さらに、デニスが食指を動かしているもうひとりのトップドライバーであるルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)については、仮に今季のタイトルをチームメートのニコ・ロズベルグに持って行かれたとしても、圧倒的な強さを誇っているメルセデスAMGのシートを手放すことはないだろうというのが大方のF1関係者の見方だ。
メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフも「ルイスはほかのどのチームとも交渉したりはしていないよ」と語り、「だから、我々はお互いに信頼し合えているんだ」と付け加えている。
そうした状況を踏まえれば、マクラーレンとしては最終的に現チャンピオンであるベッテルしか選択の余地はなくなるかもしれない。
■ベッテルにはチーム移籍を促す要因も
ベッテルは、今季ルノーエンジンが新たなV6ターボ時代に乗り遅れたことに加え、さまざまなトラブルに見舞われたこともあってここまで苦戦の連続となっている。しかも、今年から新たなチームメートとなったダニエル・リカルドにも後れを取るといった状態だ。
F1関係者の中には、レッドブルが今後ダニール・クビアト(トロロッソ)や来季トロロッソから史上最年少でのF1デビューが決まったマックス・フェルスタッペンといった若手スターへの世代交代を視野に入れていることもあり、ベッテルがレッドブルを去る可能性も出てきているのではないかと考える者たちもいる。
■ベッテルがマクラーレンへの興味を示したとのうわさも
そんな中、イタリアの『Italiaracing(イタリアレーシング)』と『Omnicorse(オムニコルセ)』は今週、マクラーレン・ホンダがベッテルに興味を抱いているということは、間違いなく本人の耳にも届いていると報じた。
『Italiaracing(イタリアレーシング)』では、ベッテルはマクラーレン側からの誘いには乗らず、来季もレッドブルにとどまるだろうと推測している。
だが、『Omnicorse(オムニコルセ)』は、ベッテルがマクラーレン側からの誘いに対し、新たなマクラーレン・ホンダのプロジェクトに関して「確実な保証」を求めるという趣旨の回答をしたようだと書いている。つまり、マクラーレン・ホンダが、2015年にメルセデスAMGに対抗できるだけのパッケージを確実に用意できるのであれば、移籍を検討することもあり得るというスタンスだ。
『Omnicorse(オムニコルセ)』は、「イタリアでのうわさによればベッテルはマクラーレンに対し、返事をするにあたって、よく考えるための時間が欲しいと答えたようだ」としている。
■ベッテル移籍のカギとなるかレッドブルの元空力責任者
マクラーレンにとって、ベッテル獲得の大きな切り札となるかもしれないのが、過去4年にわたってベッテルとともにF1タイトルを獲得したレッドブルで空力責任者を務めていたピーター・プロドロモウが数日前からマクラーレンで業務を開始したことだろう。
デニスはプロドロモウの加入に関し、最近次のように語っていた。
「(プロドロモウの加入は)我々の空力チームの活力を増強させるだろう。だから、私は来季の空力パフォーマンスに関して不安など持っていないよ。いい結果となるはずだ」
■ホンダもすぐに優勝争いにからむと明言
さらに、現時点では圧倒的な力を誇るメルセデスエンジンに対抗するという目標には手が届かないようだとのうわさがささやかれる中、ホンダも今週、できる限りすぐに勝利することを目指していくことを明言している。
本田技術研究所の新井康久専務は、F1公式サイトのインタビューに次のように答えた。
「メルセデスに対抗できるという自信はありますよ」
「F1は我々の戦略面において非常に重要な位置を占めるものです。そしてホンダにとっては勝利することが非常に重要なんです」
そう語った新井氏は次のように付け加えている。
「我々のブランドに対する認知度を高めたいと思っていますし、私は来年は数レースで優勝できると固く信じています」