先週末にモンツァ・サーキットで開催された2023年F1第15戦イタリアGPではフェラーリのカルロス・サインツがポールポジションを獲得し、ティフォシと呼ばれる地元の熱狂的なフェラーリファンを喜ばせた。
●【2023F1第15戦イタリアGP】決勝レースや全セッションの結果
決勝ではレッドブルのマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスに逆転を許したものの、サインツは3位入賞を果たし、今シーズン初の表彰台に上っている。
一方、サインツのチームメートであり、事実上のフェラーリのナンバー1ドライバーだと考えている者も多いモナコ出身ドライバーのシャルル・ルクレールは、今季はここまでに2位1回、3位2回と表彰台フィニッシュの数ではサインツを上回っている。
しかし、ノーポイントで終えたレースがサインツの2回に対してルクレールは4回あったことから、イタリアGPを終えた時点でのドライバーズランキングではサインツが5番手、ルクレールが6ポイント差の6番手となっている。
そして、今年のモンツァではサインツの方に勢いがあったのは事実だ。3回のフリー走行でも全てサインツがルクレールを上回っており、ルクレールはそのサインツのマシンセットアップをコピーして予選と決勝に臨んだことを認めている。
■終盤にサインツとルクレールのバトルが展開されたイタリアGP決勝
だが、自分たちのホームレースでフェルスタッペンの10連勝を阻むことが期待されたフェラーリだったが、ポールポジションからスタートしたサインツは2番グリッドスタートだったフェルスタッペンをしばらくの間リードしたものの、15周目にオーバーテイクを許してしまった。
そして、3番グリッドからスタートしたルクレールも51周で争われたレースが32周目を迎えたところで5番グリッドからスタートしていたペレスにオーバーテイクされてしまった。
しかし、その後、サインツとルクレールとの間でレース終盤にスリリングな3位争いが繰り広げられ、この時点ではペース的に有利だったルクレールが攻撃をしかけ、それにサインツが反応するという展開がしばらく続いていた。
■「リスクは冒すな」と伝えたが自由に戦わせたとチーム代表
結局、サインツが3位のポジションを守り切り、ルクレールの約コンマ2秒前でチェッカーフラッグを受けたのだが、今年からチーム代表としてフェラーリを率いているフレデリック・バスールは、そのサインツとルクレールのバトルに関してレース後に次のように語った。
「彼らは私を少しばかり震え上がらせたよ」
「確かに、私は彼らにあまりリスクを冒さないように伝えていた。しかし、我々は彼らの責任ある行動に委ね、彼らがお互いに争うことは禁止しなかったんだ」
「私は彼らに戦わせるのが好きなんだ。私はそういう人間だ。我々はシーズンが終了するまでナンバー1もナンバー2もないという姿勢を保つつもりだ」
■フェラーリはチームオーダーについて明確にするべきだとサインツの父
しかし、サインツと同じ名前の父であり、1990年と1992年のWRC(世界ラリー選手権)チャンピオンでもある伝説的ラリードライバーのカルロス・サインツsnr.は、フェラーリのチームオーダーには一貫性がないと考えているようだ。
「おかしいことに、彼らが攻撃できるときもあれば、そうすることができないときもあるんだ。彼ら同士で戦えることもあれば、それができないこともある」
母国スペインの日刊スポーツ紙『Marca(マルカ)』にそう語った61歳のサインツsnr.は次のように続けている。
「彼らはチーム内でそれをはっきりさせなければならないよ」
■フェラーリの指示には一貫性がないとスペイン人F1解説者
また、スペインのF1解説者であるアントニオ・ロバトも、フェラーリにおける「チームオーダー」の問題は、2人のドライバーのどちらが先行しているかによって異なる対応がされる場合があることだと指摘している。
イタリアGP決勝後のバスールのコメントについてどう思うかと尋ねられたロバトは、『DAZN(ダゾーン)』に次のように答えている。
「バスールはよほど記憶力が悪いか、それとも非常にずうずうしいかのどちらかだね」
「そのどちらか、あるいは両方だ」
■フェラーリは無用の失敗をするところだったと元エンジニア
かつてスーパーアグリやBMWザウバーのエンジニアを務め、2012年にはHRTのテクニカルディレクターだったことでも知られるトニ・クケレラも、フェラーリのチームオーダーには一貫性を欠くことがあるという指摘に同意している。
「私には理解できないね。表彰台を危険にさらすなという指示だった。ところが、彼らは結局争ってしまい、2人ともグラベルにはまってしまうリスクを冒していたんだ」
2015年と2016年にはフェラーリに所属していたこともある50歳のクケレラはそう語ると、次のように付け加えた。
「彼らはもう少しで不必要な失敗をするところだったよ」
■自分の決断には誇りを持っているとバスール
しかし、フェラーリのチームオーダーに関してそうした声があることについて質問されたバスールは、次のように反論している。
「いや、それほどリスクはなかったよ」
「今は極端な議論をするときではないよ。もし我々がポジションを凍結すれば、みんなが文句を言うんだ」
「今回、我々はそうしなかったし、あのようなレースを見ることができてよかったよ。もちろん、全てがうまくいったときにこのような返事をするのは簡単だが、それは力強い応援をしてくれたティフォシに感謝する最高の方法だったと思う」
そう語ったフランス出身のバスールは、次のように付け加えた。
「リスクの考え方は常に相対的なもので、考え方もいろいろだ。だが、私はあの決断を下したこと、そしてドライバーたちがいい仕事をしてくれたことを誇りに思っているよ」