初開催となったF1第21戦サウジアラビアGP(ジェッダ市街地サーキット)決勝レースは、2度の赤旗、3回の再スタート、複数回のセーフティカーが出動するなど荒れたレース展開となったが、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が103回目の勝利を飾った。2位はマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)、3位はバルテリ・ボッタス(メルセデス)だった。
この結果、2人のチャンピオン候補はポイント数で並び、最終戦アブダビGPでチャンピオンが決まることになった。
●【F1第21戦サウジアラビアGP】決勝レースのタイム差、周回数、ピット回数
■1度目のスタート
ポールポジションからスタートしたルイス・ハミルトンは、ボッタスとフェルスタッペンをリードしてターン1をクリアし、レースをリードして逃げていた。しかし10周目、ミック・シューマッハ(ハース)がスピンしてターン23のバリアにクラッシュ。セクター3でイエローフラッグが出された。
イエローフラッグがすぐにセーフティカーに切り替わると、メルセデス陣営は2台ともピットストップに入れた。レッドブル・ホンダはセルジオ・ペレスのみタイヤ交換をしたが、フェルスタッペンはコース上にステイアウトを選択。その後に赤旗へと切り替わったことで、ピットレーン上で自由に変更できることになり、風向きがフェルスタッペンに変わった。
■2度目のスタート
15周目にスタンディング・スタートでレース再開。ターン1までにイン側のハミルトンがリードしていたが、ターン1でフェルスタッペンが大外から被せるように入っていき、コースを大きくはみ出して、ターン2でハミルトンを横切る形でトップでコース復帰。2番手にはエステバン・オコン(アルピーヌ)が上がり、ハミルトンは3番手に落ちた。
しかしその直後、混乱する中団から抜け出そうとしていたセルジオ・ペレスがシャルル・ルクレール(フェラーリ)に接触されスピン、その影響でスローダウンした後続の1台であるジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)にニキータ・マゼピン(ハース)が追突するという2つの大きなアクシデントが発生し、再び赤旗が出された。
■順位の駆け引きは場外で?
レースが中断中、レッドブルとメルセデスのピットウォールとFIAの間では駆け引きの無線が飛び交い、17周目のリスタートでは、オコン、ハミルトン、フェルスタッペンの順でスタートすることになった。
本来ならターン1でコースアウトしながら順位をゲインしたフェルスタッペンは、ハミルトンの後ろに下がって順位を戻さなければならないところだったが、直後に赤旗になったため戻せなかった。そこでFIAは各チームと交渉し、その結果フェルスタッペンがハミルトンの後ろに下がって3番手からリスタートすることになった。
■3度目のスタート後もVSCが3度の波乱
3度目のリスタート後、ターン1でアウト側からオコン、ハミルトン、フェルスタッペンとスリーワイドのまま進入、イン側のフェルスタッペンがリードを奪ってレースを再びリードする。
23周目、ターン1で角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)とセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)が接触、角田裕毅はフロントウイングを落とし、ベッテルはスピンして、バーチャル・セーフティカーが出された。角田裕毅はピットに戻ってレースに復帰しているが、5秒タイムペナルティが科せられた。
28周目、ベッテルとキミ・ライコネン(アルファロメオ)の接触でバーツが散乱し、デブリを除去するために2度目となる短いバーチャル・セーフティカーが出された。しかし、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)は無線で「他の箇所にもデブリが散乱している」と指摘する。
そして29周目、デブリの回収のためにまたバーチャル・セーフティカーが出された。ところがアロンソは「これはセーフティカーだよ、コース上は今週末で一番ひどい状況だ」と訴える。
36周目にはまたデブリの回収のために3回目のバーチャル・セーフティカーが導入された。
■ハミルトン「ヤツはクレイジーだ!」
レース再開後、ハミルトンはフェルスタッペンのDRS圏内に入ってスリップに入ると、37周目のターン1でアウト側から被せるように入っていくが、フェルスタッペンも一歩も引かずイン側に飛び込み、スライドしながらハミルトンの前を横切り、コース外走行をしてトップをキープ。ハミルトンは「ヤツはクレイジーだ!」とフェルスタッペンの走りを批判した。
その後レッドブルは、フェルスタッペンに順位を戻すように伝えると、37周目のバックストレートでフェルスタッペンはシフトダウンしてブレーキングをして速度を落とし、不意を突かれたハミルトンは避けきれずに追突。これでハミルトンのフロントウイングの右エンドプレートが破損した。レッドブルとメルセデスからレースコントロールへ問い合わせの無線が相次ぐ。
■ハミルトン、トップを奪い返し優勝、王者争いは同点!
その後、42周目の最終ターン前のストレートでフェルスタッペンは速度を落としてハミルトンは一瞬追い抜いたが、フェルスタッペンがすぐに最終ターンのイン側に飛び込み、順位を取り戻した。
スチュワードはこのタイミングで、先ほどターン1でゲインしたフェルスタッペンに対して5秒のタイムペナルティを科した。しかし、2台の接触についてはレース後の審議対象となった。
43周目の最終ターンで今度はハミルトンがイン側に入り、ようやくオーバーテイク。ここからハミルトンは一気に引き離す。フェルスタッペンは「タイヤが終わった」と伝えると、その差を縮めることはできないままフィニッシュ。ハミルトンは10秒の大差をつけて優勝。ハミルトンはファステストラップの1ポイントも獲得し、369.5ポイントとなりチャンピオンシップ争いで同点に並んだ。
■レース後、フェルスタッペンに10秒ペナルティ!
レース後、スチュワードはストレートで減速したフェルスタッペンに対して、10秒のタイムペナルティと2ペナルティポイント(12ヶ月間で合計7ポイント)を科した。この結果、レース順位は変わらず、ドライバーチャンピオン争いは同点のまま最終戦へ向かうことになった。