2021年にアストンマーティン(現レーシングポイント)に加入することになったセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)だが、すぐに「飛躍的に向上」するとは思っていないと語った。
レッドブル時代に4年連続でF1チャンピオンとなった実績を持つベッテルだが、2015年に移籍したフェラーリではタイトルに手が届かないまま今季限りでそのシートを失うことになった。
そのベッテルが今季非常に戦闘力を高めたレーシングポイントに移籍し、2021年から新たにアストンマーティン・プロジェクトに加わることになったのはいい判断だと評価している者も多い。
アストンマーティンにとってはF1チャンピオンの称号を持つベッテルを迎え入れることで大きなマーケティング効果が期待できるのは確かだろう。さらにベッテルはレーシングポイントのオーナーである大富豪のローレンス・ストロールや個人的にアストンマーティンの株主となったメルセデスF1チームCEOのトト・ヴォルフの支援を受けられることになる。
2021年に新たなチャレンジを開始することになるベッテルは母国ドイツの『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に対し、アストンマーティンへの移籍を決めたことには満足していると次のように語った。
「僕にとっては透明性やオープンな姿勢が重要だったんだ。つまり、何が可能で、何がそうではないということがはっきりと示されていることがね」
「野心が必要だし、目標が必要だ。そしてローレンス・ストロールが掲げる目標は僕のものと足並みが揃っている。それが僕たちをつないでいるんだ。彼は自分が何を達成したいのか明確な考えを持っている。僕はそれにすごく感銘を受けたよ」
「だけど、すぐに飛躍的に向上できるわけではないこともはっきりしている」
「僕はまだレーシングポイントにかかわってはいないし、新車の計画のための会議などにも参加していないんだ」
「そうすることは許されてもいない。僕はまだフェラーリに雇用されているわけだからね」
フェラーリではタイトルをとることができなかったベッテルだが、これまでのF1での歩みはベッテルが師と仰ぐミハエル・シューマッハの歩みと似ていると考えている者もいる。
シューマッハはベネトン、ベッテルはレッドブルでF1チャンピオンとなり、その後フェラーリへ移籍。ここでは両者の実績には差が出てしまったものの、その後はどちらも新たなチームをトップチームに導く役割を負うことになった。シューマッハはメルセデス、ベッテルはアストンマーティンというわけだ。
しかし、ベッテル自身はそういうふうに比較されることをよしとはしていない。
「そういう比較が何かの役にたつとは思わないよ。僕の状況を当時のミハエルと比較することなどできないからね」
「まず、時代が違っていた。次に、チームが違うし、そこでは違うことが求められるんだ」
そう語った33歳のベッテルは次のように付け加えている。
「だけど、一番重要なのは、ミハエルがメルセデスに加入したときの年齢(41歳)が違うし、彼はそれまで3年間F1で走っていなかったんだ。僕はまだ(キャリア)中盤にいるし、単にチームが変わるだけさ」