新型コロナウイルスのパンデミックにより大幅にレースカレンダーを見直す必要に迫られた2020年のF1だが、7月にシーズン開幕を迎えた後ここまでに9レースが行われているものの、その内訳は3週連続開催が3回と前代未聞の過密スケジュールとなっている。
そして、F1関係者やファンの中には、最近のレースではマシントラブルやクラッシュが増え、それに伴ってセーフティカー導入や赤旗中断となるケースが増えているのは過密スケジュールによってドライバーやチームスタッフの疲労が蓄積していることが原因となっているのではないかと懸念している者も少なくないようだ。
実際のところ、先週末にムジェロで開催された第9戦トスカーナGPは度重なるクラッシュによりセーフティカー導入1回、赤旗中断2回という非常に荒れた展開となっていた。
ムジェロを離れる際、ルノーのダニエル・リカルドはかなり疲れたのは事実だと次のように語った。
「僕は3戦連続のシリーズは好きだよ。だけど、それぞれのレースの終わり頃には本当に疲れを感じるんだ。誰もがそう感じていると思うよ」
「問題は何もないよ。だけど、これが限界かな」
「3戦連続開催の後は誰もが数日休むようにするのが正解だね。不足した睡眠を取り戻したいからね」
しかし、実際にはドライバーばかりでなくチームスタッフにも疲労が蓄積しており、それが技術トラブルの原因のひとつになっているのではないかとの声もある。例えば、モンツァで行われた第8戦イタリアGP決勝でセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)のマシンに起きたブレーキトラブルなどがそうだったのではないかと考えられているようだ。
ドイツの『Bild(ビルト)』によれば、フェラーリにブレーキを供給しているブレンボ社がベッテルのブレーキを調査したところ、それがマシンに正しく装着されていなかったことが判明したのだという。
しかし、ベッテルは、疲労がいろいろなアクシデントの直接的原因ではないと次のように語っている。
「誰もが限界に来ている。だけど、それは次から次へと3連戦が組まれているからではないよ」
80年代にアロウズやブラバムなどで活躍した元F1ドライバーのマルク・スレールもレースが連続することがドライバーの本当の疲労の原因ではないと考えているようだ。
「私はドライバーたちへの負荷が大きすぎるとは考えていないよ。彼らにとってはレース前後に何時間もかけて行われるブリーフィング(説明会)の方がよっぽど疲れるんだ」
そう語った68歳のスレールは次のように付け加えた。
「クルマに乗り込めばすぐにアドレナリンが吹き出してくる。そうすれば彼らは目を覚ますし、疲れていようがそんなことは関係なくなるよ」