2020年8月2日(日)、F1第4戦イギリスGP(シルバーストーン・サーキット)決勝レースが行われ、ルイス・ハミルトン(メルセデス)タイヤがラスト1周でパンク、火花を散らしながらギリギリで優勝した。
●【決勝レース結果】2020年F1第4戦イギリスGPのタイム差、周回数、ピット回数
決勝レースは晴れ、気温23℃、路面温度42℃、湿度45%のドライコンディションの中で開催された。
■レース直前からドラマ
F1イギリスGPはレース前からドラマが起こった。木曜日に新型コロナウイルスの検査結果で陽性となったセルジオ・ペレス(レーシングポイント)の代役として急遽F1に復帰したニコ・ヒュルケンベルグ(レーシングポイント)が、トラブル発生でグリッドにつけないというハプニングが起こった。
ピットレーンがクローズされてもガレージから出られなかったヒュルケンベルグは、ピットスタートになるかと思われたが、マシンを降りてしまった。どうやらエンジンスタートができなかったようで、レースに出走できないままリタイアとなってしまった。
13番グリッドを空けたまま、グリッド上には19台が並ぶ。ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)とジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)が5グリッド降格ペナルティで19番、20番グリッドからの追い上げとなる。
■いきなりマグヌッセンとアルボンが接触
決勝レースは綺麗なスタートを切った。マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)はシャルル・ルクレール(フェラーリ)に抜かれるがすぐに3位を取り戻した。
1周目の終わり、ケビン・マグヌッセン(ハース)が最終コーナーでコースアウトする映像が飛び込んできた。マグヌッセンは1つ手前のターン17でミスをして姿勢を乱し、最終ターン18のイン側に飛び込んできたアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)のタイヤと接触、マシンは跳ねて外に弾き飛ばされてしまった。マグヌッセンの身体は無事だがここでリタイアとなってしまった。
この接触直後にイエローフラッグ、そしてセーフティカーが入った。気になるのは接触したアルボンだが、セーフティカーでスロー走行中、コース上でピット側に寄せてエンジニアが目視で大きな問題がないことを確認した。
■クビアトがクラッシュ
6周目にレース再開。各所で激しいバトルが展開される中、アルボンが6周目の終わりにピットインしてハードタイヤに交換。パーツ交換をした様子は見られない。このまま残り45周を走りきる戦略に変更したようだ。
メルセデスがリードしながらレースは淡々と進むが、12周目、ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)がフロントノーズを失い、後ろのウイングや左側の前後タイヤが無くなる激しいクラッシュをして止まっている映像が映された。
ここですぐに2度目のセーフティカーが入り、各車続々とピットイン。グロージャンだけがステイして賭けに出た。
リプレイ映像ではクビアトの右リヤタイヤが突然パンクしてスピンしたようにも見えた。興奮状態のクビアトはテレビカメラを叩いて歩いて行くシーンが映される。
同じマシンに乗るチームメイトのピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は「ダニに何が起きたの?大丈夫?」と心配そうにチームに問いかけると、「ターン11でクラッシュしてレースを終えたよ。大丈夫だよ」と応える。
■激しい中団バトル
19周目、レース再開。コースに唯一ステイしたグロージャンが5番手を走行する。その後方では、6番手カルロス・サインツ(マクラーレン)にダニエル・リカルド(ルノー)がターン16で襲いかかるが、サインツが守る。それをすぐ後ろで見ていたランド・ノリス(マクラーレン)がリカルドをターン18でオーバーテイクし7番手に浮上した。
5番手グロージャンにサインツが襲いかかるが、ミディアムタイヤとハードタイヤの差なのか、なかなか抜けない。サインツは「彼は(ブレーキング時に)レーン変更したよ。危ないドライビングだ。信じられない」と無線で訴える。リプレイ映像では確かに半車身だけ動いて牽制しており、これに対してスポーツマンシップに反する行為を意味する「ブラック&ホワイトフラッグ」が出された。これを繰り返し出されるとレース出場停止など厳しい処分が下される。その後、グロージャンはサインツ、そしてノリスにもオーバーテイクされてしまう。
■フェルスタッペン、レース中にジョーク
レースも半分を過ぎると、ハミルトン、バルテリ・ボッタス(メルセデス)、そしてフェルスタッペンもファステストラップを叩き出しながらレースを進めていく。
34周目、レースが膠着状態になると一人旅のフェルスタッペンがチームラジオでジョークを飛ばす。
「ドリンク飲み忘れていない?ドリンク飲んだ?」
これを聞いたメカニックたちからは笑顔が見られた。クルーが熱中症にならないように気遣う余裕があるようだ。
中団グループではいくつかのバトルが見られたものの、上位勢に順位変動は見られなかった。上位勢はこのままフィニッシュするのかと誰もが思っていたが、ドラマは最後にやってきた。
■ラスト2周でドラマ!
残り2周となった50周目、2位を走行中のボッタスが左フロントタイヤのパンクでコースアウト。フェルスタッペンが2位に上がった。映像ではハミルトンの左フロントタイヤも残り10%と表示される。するとフェルスタッペンがピットイン。どうやらファステストラップ狙いのためのタイヤ交換だ。
メルセデスはハミルトンに「タイヤが重要だからファステストラップは考えないで戻ってきて」と伝える。
すると今度はテレビカメラがパンクしたサインツを映し出した。やはり同じ左フロントタイヤだ。
すると次の瞬間、衝撃の映像が映し出された。なんとトップを走行するハミルトンも左フロントタイヤがパンクし、フロントウイングとフロアが地面と接触して火花を散らしながら走行していた。まだ丸々1周もある。この時点で2位フェルスタッペンとは33秒差。その差は26秒、23秒、21秒とどんどん縮まっていく。ファステストラップ狙いのフェルスタッペンは「いける?」とアクセル全開で迫る。
しかし、タイヤを壊したままハミルトンはトップでチェッカーフラッグを受けて優勝。フェルスタッペンはその5.856秒後方でフィニッシュした。フェルスタッペンは「あーーー!」と悔しそうだが、チームは「彼がラッキーだったんだ」と慰める。
一方、パンクでタイヤ交換をしたボッタスはベッテルを攻略できず11位でノーポイント。最後方から追い上げたアルボンは8位まで追い上げてポイントを獲得した。
優勝はハミルトン、2位フェルスタッペン、3位はルクレールだった。ガスリーは7位フィニッシュでポイントを獲得した。
次戦は1週間後、同じシルバーストーン・サーキットで「70周年記念GP」として開催される。