ホンダF1テクニカルディレクターの田辺豊治が2019年F1シーズンにはエンジンの“信頼性”が向上したことにより、パフォーマンスにより大きなウエイトを置くことができていたと認めた。
2015年にマクラーレンのエンジンパートナーとしてF1活動を再開したホンダだったが、2014年からF1に導入されたPU(パワーユニット)と呼ばれる複雑なハイブリッド方式エンジンの開発にてこずり、以後3年間にわたって苦しいシーズンを送ることになってしまった。
そして、2017年シーズン限りでマクラーレンと決別したホンダは2018年にはレッドブルのジュニアチームであるトロロッソにPUを供給。そして2019年にはトップ3チームのひとつであるレッドブルとのコラボレーションを開始した。
その2019年には、F1開幕戦オーストラリアGPでマックス・フェルスタッペンが幸先よく3位表彰台に上ると、第9戦オーストリアGPで見事に初優勝を達成。ホンダにとっては2006年のハンガリーGP以来となる勝利だった。
特に、シーズンが後半に入るとホンダPUのパフォーマンスも格段に向上し、フェルスタッペンが第12戦ハンガリーGP、第18戦メキシコGP(予選後にペナルティーを受けてポールポジションは失っている)、第20戦ブラジルGPで予選最速タイムを刻むなど、メルセデス勢、フェラーリ勢とも互角の戦いができるまでになった。
結局、2019年のホンダは3勝をあげ、11回表彰台に上るという2015年にF1復帰して以来最高の結果を残している。
全21戦で戦われた2019年シーズンは、PUコンポーネントのうちICE(内燃機関)、TC(ターボ)、MGU-H(熱エネルギー回生システム)は年間3基まで、MGU-K(運動エネルギー回生システム)、ES(バッテリー)、CE(電子制御システム)は年間2基までとルールで定められていた。
実際のところ、ICEを例にあげれば、レッドブルは5基、トロロッソは7基を投入するなど、ホンダPUを使うドライバーたちは全員が一定のグリッド降格ペナルティーを受けている。
だが、これらの年間規定数超過は、マクラーレン時代のようにPUトラブルが多発したことが原因となっての追加投入ではなかった。事実、レッドブルが2019年にPUトラブルでリタイアを余儀なくされたのは第4戦アゼルバイジャンGPでのピエール・ガスリー1回だけだった。
つまり、ホンダが2019年に年間規定数を超えるPUコンポーネントを投入したのは、グリッド降格のリスクを負いながらパフォーマンスの改善開発を進めていたためだ。
2018年からテクニカルディレクターとしてホンダF1プロジェクトをリードしている田辺は、2019年を振り返りながら『motorsport.com』に次のように語っている。
「予選に向けて優先すべきことは何なのか、あるいはどうすればレースに勝てるのかを学ぶことができたと思っています」
「その一方で、今年も信頼性は完璧とまでは言えなかったものの、昨年以降かなりよくなりつつあります。ですから(信頼性の)対策テストやベンチテストを行うのではなく、もっと前向きな開発に取り組むことができたわけです」
2018年シーズン以前は「問題を取り除くためのテストに多くの時間を割いていました」と認めた田辺は次のように付け加えた。
「これからは、パフォーマンス改善のために多くの時間をかけることができるようになります。各エリアについて、さらに詳細な検討を行うことができるのです」
フェラーリやメルセデスのPUと肩を並べるところにまで来たホンダが、2020年に初のF1ドライバーズタイトル獲得に挑戦するフェルスタッペンをどこまで後押しできるのか、それが来年の大きな注目点となるのは間違いないだろう。