エステバン・オコンにとってメルセデスとの関係があるのは恵みでもあり災いでもある。
そう語ったのは1997年のF1チャンピオンであるジャック・ビルヌーブだ。
フランス人ドライバーのオコンはメルセデスと育成ドライバー契約を結んでおり、ここまでのF1キャリアを通じてメルセデスのサポートを受けてきている。
2016年のF1第13戦ベルギーGPでF1デビューを飾ったオコンは、2017年と2018年にはフォース・インディアのフルタイムドライバーを務めていた。これはその両チームにエンジンを供給していたメルセデスによる支援があったためだ。
だが、2018年シーズン途中でフォース・インディアが新オーナーに買収されたことからその年限りでシートを喪失することが確定。メルセデスでは2019年シーズンに向けてルノーやウィリアムズと交渉を行ったものの、結局シート獲得はならず、今季はメルセデスのリザーブドライバーを務めながら2020年の復帰を目指すという状況になっている。
そのドライビングスキルは高く評価されている22歳のオコンだが、ほかのチームがオコンを乗せることに抵抗を示した最大の理由はメルセデスの契約下にあるということだ。
仮にどこかのチームがレンタル移籍という形でオコンを走らせても、オコンがさらに経験を積んで成長を遂げた時点でメルセデスが取り上げてしまうということになるのであればそのチームにとって中長期的なメリットはないと考えても当然のことだろう。
ビルヌーブも、最終的にはメルセデスとの契約下にあることがオコンにとっては災いとなってしまっているとフランスのラジオ局『RMC』に次のように語った。
「エステバン・オコンはメルセデスのおかげでF1にいる。同時に、メルセデスとの関係があることで彼がほかのチームに行くことが妨げられてしまったのも事実だ」
「だけど彼はすでに十分幸運だったんだ。自分で資金を工面する必要なしに3年ほどF1にいられたわけだからね。それは驚くべきことだよ」
「彼はそれをネガティブにとらえるのではなく、誇りに思うべきだね」
ビルヌーブがこうしたコメントを行った背景には、自身が若手ドライバーのための資金提供プログラムを立ち上げたことがあるのは事実だろう。
47歳のビルヌーブは母国カナダの『Le Journal de Montreal(ジュルナル・ド・モントレアル)』に次のように語っている。
「今では才能よりも財政的貢献の方がもっと重要になっているという印象がある」
「僕はすでに長いことパドックにいるし、どういう状況なのかということに注目していた。それは多分、僕にも子供がいるからだろうね」
「ときおり、両親が僕を訪ねてきて『息子を手助けするために何をしたらいいでしょうか?』と聞かれることがあるんだ。そして僕は最初にこう答えるんだ。『彼に何かほかのことをしろと言いなさい』とね」
そう語ったビルヌーブは次のように付け加えた。
「それはひどい答えだよ。だけど、僕はうそをつくことができないんだ」