2016年からF1参戦を開始したアメリカンF1チームのハースだが、その今季型F1マシンは過去2年のものと比べると格段の進歩を遂げたのは明らかだ。
■ハースの2018年型車はフェラーリのクローン?
先週末に行われた今季のF1開幕戦オーストラリアGPではケビン・マグヌッセンとロマン・グロージャンが予選で6番手と7番手の位置を確保。ダニエル・リカルド(レッドブル)の降格によってグリッドがひとつずつ繰り上がってスタートしたハースのドライバーたちは決勝ではさらに順位を上げて4番手と5番手を走行するというパフォーマンスを見せていた。
惜しくも2台ともにピット作業ミスによってリタイアを余儀なくされてしまったが、仮にピットでのタイヤの装着作業に問題がなければ、チーム結成以来最高の成績を収めていた可能性が高かった。
だが、ハースのライバルチームたちは、今年ハースがこれほどまでにパフォーマンスを向上させることができたのは、ハースの2018年型マシンが技術提携契約を結んでいるフェラーリの2017年型車をコピーしたものにほかならないからだという疑念を抱いている。
そして、フォース・インディアはハースがルール違反を犯していないかどうかについてF1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)による調査が必要だと訴えている。
現在のF1ルールでは、PU(パワーユニット)やギアボックスなど特定のコンポーネントについてはエンジンメーカーやほかのチームから購入して使用することが認められているものの、原則としてシャシーは独自に開発したものでなくてはならないとされている。
もしハースがフェラーリからシャシーの設計情報まで提供を受けていたとすれば、それはルールに反することになってしまうのだ。
■ハースの影にはフェラーリありとフォース・インディア
「彼ら(ハース)は昨年のフェラーリを使っているよ」
フォース・インディアのチーム副代表を務めるロバート・ファーンリーはそう主張している。
フォース・インディアの技術責任者を務めるアンドリュー・グリーンも、フェラーリの事実上のBチームだと言われることもあるハースがフェラーリとさまざまな情報を交換し合っていることは間違いないと推測し、次のように語った。
「彼らが開発や問題の早期解決に向けてお互いに連絡を取り合ったりしていないと断言できる者など誰もいないよ」
■ハースはシャシーもフェラーリから買っているとマクラーレン
マクラーレンのレーシングディレクターを務めるエリック・ブーリエも、母国フランスの『Auto Hebdo(オト・エブド)』に次のように語っている。
「ハースのクルマはボディーワークの下は100%フェラーリだよ」
「彼らはクルマを製造しておらず、購入しているだけだ。そしてマラネロ(フェラーリのファクトリー)から買ったのであれば悪いはずはないさ」
さらに、マクラーレンを率いるエグゼクティブディレクターのザック・ブラウンも『The Sun(サン)』紙に次のように語った。
「彼らがフェラーリと非常に密接な提携関係にあることは誰もが知っていることだ。それが行き過ぎていないかどうかを確認する必要がある」
■この件については調査が必要だとフォース・インディア
フォース・インディアのチームCOO(最高執行責任者)を務めるオットマー・サフナウアーも次のように主張している。
「空力に影響する表面はすべて独自のものでなくてはならない。もしそうでないとすれば、調査を開始しない限りどう言っていいか分からないよ」
■調査大歓迎だとハース
ライバルチームたちからの疑念の声に対し、ハースのチーム代表ギュンター・シュタイナーはスペインの『Marca(マルカ)』を通じて次のように反論している。
「もし彼らが幽霊を目にして問題を抱えたのだとすれば、私は彼らに訴状を出すよう勧めるよ。私は彼らにFIAに行く道を非常にはっきりと示してあげることができる」
■フェラーリとハースのマシンが似るのは論理的結果
シュタイナーはさらに、今季のハースF1マシンVF-18とフェラーリの2017年型マシンが似ている理由を次のように説明している。
「我々はフェラーリと同じホイールベースを用いているが、サスペンションは同じものを使っている。だから論理的にそうなるんだ」
今回、ライバルチームたちから一斉砲火を浴びることになってしまったシュタイナーは、「自分たちが無能であることを正当化したいのであれば、攻撃が最大の防御になるからね」と語り、次のように付け加えた。
「2倍の金を使っているのに我々の後ろになってしまったら、そのチームのオーナーは“自分たちはここで何をしているんだ?”と問い正すべきだろう。だが、何かを口にするときは単なる仮説ではなく、論拠を示す必要があるんだ」