今季のF1第17戦アメリカGP決勝のファイナルラップで起きた“事件”が大きな話題となっている。
●【決勝結果】F1アメリカGP決勝レースのタイム差、周回数、ピット回数
■ファイナルラップでのオーバーテイクにペナルティー
56周で争われたアメリカGP決勝がファイナルラップに入ったとき、そこまで3番手を走行していたフェラーリのキミ・ライコネンをレッドブルのマックス・フェルスタッペンがあざやかにオーバーテイクしてみせた。
規定数を超えるパワーユニットエレメントを投入したことで大きなグリッド降格ペナルティーを受けたフェルスタッペンは16番グリッドから決勝をスタートしたが、そこから素晴らしいレース展開を見せてついに3位表彰台を手にいれたかと思われた。事実、フェルスタッペンはファンの投票によってこの日のベストドライバーに選出されている。
ところが、レース後の審議の結果、フェルスタッペンがライコネンを追い抜くときに4輪とも正規のコースを逸脱していたことからアンフェアな形で利益を得たと判断され、5秒加算のペナルティーが科されてしまったのだ。
これによりフェルスタッペンは4位に滑り落ち、ライコネンが3位表彰台を取り戻すこととなった。
■F1競技委員長は辞職すべきだとヨス・フェルスタッペン
このFIA(F1統括団体である国際自動車連盟)の裁定に対し、フェルスタッペンとその父親であるヨス・フェルスタッペンは怒り心頭だ。
9月30日に20歳になったばかりのフェルスタッペンがいつも自分にペナルティーを科そうとするFIAの競技委員は「愚か者」でしかないと語れば、元F1ドライバーである父親のヨスも母国オランダのテレビ局『Ziggo Sport Totaal(ジッホ・スポルト・トタール)』に次のように語った。
「もしこの決定の背後にチャーリー・ホワイティング(FIAのF1競技委員長)がいるとしたら、彼は即刻辞めるべきだね」
■レッドブルばかりかメルセデス首脳もFIAを批判
もちろん、フェルスタッペンが所属するレッドブルの首脳陣も怒りを隠せない。アメリカGP決勝ではほかにも多くのドライバーたちがフェルスタッペン同様に4輪をコース外に出す形で走行していたにもかかわらず、それらの者にはペナルティーが科されていないじゃないかというわけだ。
さらに、レッドブルのライバルであるメルセデスAMGの非常勤会長を務めるニキ・ラウダでさえ、ドイツのテレビ局に次のように語った。
「昨年、競技委員たちがあらゆることに対してペナルティーを科していたとき、我々はチャーリー・ホワイティングと長時間にわたる会議を行って『レーシングドライバーにはレーシングドライバーらしくさせようじゃないか』と言ったんだ」
「どうしてまた今になって石器時代へ戻ろうとするのか理解できないし、それはこのスポーツにとってよいことではないよ」
■裁定はやむを得ないものだったとF1競技委員
今年のアメリカGPでFIAから競技委員を委託された者の中には元F1ドライバーのミカ・サロがいたが、そのサロでさえコース上に描かれた白線をはみ出してはならないというルールがあることはF1にとって理想的なことだとは言えないとの考えを示している。
だがサロは、今回の件に関しては競技委員としてはあの裁定を下すしかなかったのだと主張している。
「同じことをしたほかのドライバーたちはそれによって利益を得てはいなかったんだ。そしてこの件が我々が審議すべき唯一の状況だった」
母国フィンランドの『Ilta-Sanomat(イルタ・サノマット)』にそう語ったサロは、次のように付け加えた。
「マックスは素晴らしいレースをしたよ。だが、最後の動きはちょっとやり過ぎだった」