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F1と争うつもりはないとフォーミュラE責任者

2014年09月12日(金)17:47 pm

いよいよ13日(土)にフル電動フォーミュラカーによる世界選手権である「フォーミュラE」が北京で開幕戦を迎える。

これまでの自動車レースにはなかった近未来的なイメージを持つフォーミュラEは、新しい時代のレースシリーズとして、人気に陰りが出ているF1からファンを奪ってしまうのではないかとの声もある。

だが、フォーミュラEの最高責任者であるアレハンドロ・アガグは、自分たちがF1に挑戦しようなどという考えは持っていないと語った。

フォーミュラEで用いられるレースカーは、内燃機関を使わず、すべて電気の力で駆動される。このほとんど音も立てずに疾走するレースカーには、現在F1でも活躍するマクラーレン、ウィリアムズ、ルノーといったレーシングチームの技術やノウハウも注(そそ)ぎ込まれている。

■新シリーズに冷ややかな目を向けるF1関係者

このフォーミュラEについて、マクラーレンのジェンソン・バトンは次のように語った。

「レースの途中でクルマを乗り換えるなんて、かなり奇妙だよね」

「でも、うまくいくかもしれないね。すべてのレースは市街地で行われるし、これまで普通のモータースポーツに興味がなかった人たちを魅了するかもしれないよ」

「もし彼らが本当のレースファンじゃなければ、何台かのクルマが電気で走り回るのを見るのはかなり楽しいだろうね」

多分に嫌みを含んだバトンのコメントは、フォーミュラEに対するF1関係者の姿勢を大筋でかいつまんだものだと受け止めていいかもしれない。

だが、新たに始まるフォーミュラEには、F1でもよく知られた名前がかかわっている。

10チームで争われるフォーミュラEだが、そのドライバーリストには多くの元F1ドライバーの名前がある。今回オーナードライバーとして登場するヤルノ・トゥルーリをはじめ、ニック・ハイドフェルド、ハイメ・アルグエルスアリ、ブルーノ・セナ、などなどだ。ギリギリまでドライバーが決まっていなかったアメリカのアンドレッティ・オートスポーツからは今季ロータスのリザーブドライバーを務めるシャルル・ピックが開幕戦に出走することも決まっている。

もちろん、日本のファンにとっては佐藤琢磨がかつて共にF1を戦った鈴木亜久里のアムリン・アグリから開幕戦に出走することも楽しみのひとつであることは間違いないだろう。

■マシンを比較しても意味がないと元F1ドライバー

そんな中、やはりフォーミュラEに出走する元F1ドライバーであるセバスチャン・ブエミは、F1カーとフォーミュラEのクルマを比較しても意味がないとオーストリアの『APA通信』に次のように語っている。

「フォーミュラEはまったく違うものなんだ」

「(フォーミュラEは)パワーがかなり小さいというだけでなく、グリップもすごく低いしね」

F1関係者の中には、4年連続F1チャンピオンであるセバスチャン・ベッテル(レッドブル)をはじめ、フォーミュラEに対してばかにしたような目を向ける者も少なくないようだがとドイツの『Welt(ヴェルト)』紙から質問を受けたアガグは、次のように答えた。

「肝心なことは、トップドライバーたちが勝利を目指して戦うということなんだ。私からすれば、すでにこれは純粋なモータースポーツだと言える資格があると思っているよ」

そればかりではない。フォーミュラEはすでに堅実な歩みをスタートさせている。アウディやルノーといった世界的自動車メーカーも関与していることに加え、レース開催地もアジア、アメリカ大陸、そしてヨーロッパまで網羅されているのだ。

■フォーミュラEとF1は目指す方向が違う

フォーミュラEは、最終的には世界最高峰のモータースポーツであるF1にとってかわる存在となることを目指しているのだろうか?

しかし、アガグは次のように答えた。

「そうすることは誤った取り組み方だと思う」

「我々はF1を補完するようなシリーズを目指しているんだ。F1よりもいいとか悪いとか、そんなことは問題ではないんだ」

「我々をF1と争わせるようなことは公平じゃないよ」とアガグは付け加えた。

だが、今季からV6ターボエンジンによる新たな時代を迎えたF1では、これまでよりも小さなエンジン音しか発生しないことなどへの批判を受けたことなどもあり、関係者の間でもこの先F1がどういう方向性を目指すべきかという意思統一が取れておらず、混迷の状況を迎えている。

一方で、フォーミュラEの将来に向けたビジョンは明確であり、近代的でもある。

「我々は環境に優しいし、レースを行う都市に適した継続的なアプローチをすることができるという面を持っている」

「我々は燃料を消費しないし、人々も何時間もかけて郊外のサーキットへ向かう必要もないんだ」

■F1とは観客へのアプローチの仕方も違う

さらに、F1では現在テレビの視聴率も下がり、観客席のファンの数も減ってきているという状況を迎えているが、アガグはフォーミュラEでは同じような問題に直面することはないだろうと次のように続けた。

「それに関しては自信を持っているよ」

「我々のアプローチはF1とは違うからね。例えば、我々は非常にソーシャルメディアに依存している。インターネットがフォーミュラEの心臓だと言ってもいいくらいだ」

アガグはさらに続けた。

「ファンがインターネットを通じて投票することにより、お気に入りのドライバーがレースではさらに50馬力出力を上げることもできるんだ。それは素晴らしいショーになるはずだ」

「それに、フォーミュラEのレースを見るために必ずしもチケットを買う必要はないということも理解してもらわないとね。我々は大きなビデオスクリーンを用意するし、それでレースを見ることもできるんだ」

13日(土)に開幕戦を控えたアガグは、最後に次のように付け加えた。

「北京のオリンピック公園には毎日50万人が訪れる。だから、そのうちの大勢のひとたちが我々のレースを見ようとしてくれればさらにいいだろうね」

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