2012年F1シーズンまでマルシャでドライバーを務めていたティモ・グロックが、現在のF1の資金調達モデルが小規模チームを苦しめていると語った。
グロックは、所属していたマルシャが資金を持ち込めるドライバーとの契約を目指さざるをえなくなったことにより、チームからの離脱を余儀なくされ、今シーズンはDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)に活動の場を移すことが決定している。
そのグロックが、今回の件について次のように語っている。
「身をもって経験したよ。小規模チームが最後尾から抜け出すことがどれだけ難しいことかってね」
「上位チームたちはバーニー・エクレストン(F1最高責任者)から大金を受け取り、それによって小規模チームをちょっとばかり飢えさせている」
「予算を増やすためにスポンサーを見つけることはさらに難しくなってきている」
小規模なチームにおいては、財源をねん出するために「ペイドライバー」と呼ばれるスポンサー資金持ち込みが可能なドライバーに頼らざるを得なくなる傾向が強くなってきている。まだ正式な発表は行われていないものの、グロックの次にこうした流れの犠牲者となるのがケーターハムのヘイキ・コバライネンだと見られている。
グロックはさらに、次のように続けた。
「これまでもペイドライバーはいたし、彼らにまったく才能がないというつもりはない」
「パストール・マルドナード(ウィリアムズ)やセルジオ・ペレス(マクラーレン)は、よい支援者に恵まれながら、同時に速く走る力もある。それならまったく文句のつけようがないよ」
「でも、F1がだんだんそういう方向へ向かっているのは残念だよ」
数年前に、当時F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)の会長であったマックス・モズレーによってF1の予算制限計画が提示され、小規模チームにもチャンスが広がるかとの期待を集めたことがあった。だが、このときに起こった政治的論争によって結局予算制限の実施は見送りとなっていた。グロックは、とりわけマルシャはこのことで窮地に立たされた、と次のように続けた。
「もし予算制限が導入されていれば、CFD(コンピューターによる空力シミュレーション)でのみクルマを製造するという手法がとれたはずだ。だが、そうはならなかった」
「そのため、僕たちは早い段階でCFDだけでやるのは無理で、やはり風洞も必要になると判断した。その後マクラーレンとの共同作業ができるようになったが、かなり遅れてしまった」
「昨年は、僕たちが進歩したことを示すことができたし、(1周あたり)1.5秒以上も短縮できたよ。でも大きな進歩を果たすためには、2倍の予算が必要となるんだ」
『Der Spiegel(デア・シュピーゲル)』は先週、マルシャは、グロックとの契約を中途解約し、そのシートをほかのペイドライバーと契約するために確保、グロックに対しては違約金の支払いをするしかなかったと報じている。
その件について尋ねられたグロックは、「契約上のことはあまり話せないんだ。それは僕とマルシャだけの話だからね」
DTM参戦のためにBMWと3年におよぶ複数年契約を結んだと伝えられているグロックだが、もうF1への復帰は考えていないのかと尋ねられると次のように答えた。
「様子を見るよ」
「現時点では目の前のことに集中している。数年後にどうなるかは、成り行きを見守ることになるね」