フェラーリ創業者エンツォ・フェラーリの息子であるピエロ・フェラーリが、現在レッドブルのチーフテクニカルオフィサーを務めるエイドリアン・ニューウェイに対してフェラーリが何度も移籍オファーを出していたことを認めた。
■今のフェラーリに必要なのは“忍耐”
現在フェラーリの副会長を務めている77歳のピエロ・フェラーリは、イタリアの名門F1チームの2023年シーズンがここまでのところいい状況ではないことを認めている。
「もちろん、そうなっていない」
母国イタリアの『Autosprint(オートスプリント)』にそう語ったピエロ・フェラーリは、次のように続けている。
「だが、私は困難な状況になるだろうと恐れていたよ」
「我々は今ある機材で間に合わせるしかないんだ。問題は、現在の予算制限の中で、2024年型マシンのための作業を危うくすることなく、現状を改善するためにどれだけの投資をするかを決断しなければならないことだ」
「我々は忍耐強くなければならないよ」
■フレデリック・バスールには時間を与えることが必要
しかし、フェラーリは前チーム代表であるマッティア・ビノットに対しては忍耐強くはなかったようだ。フェラーリは2022年をレッドブルに次ぐ2位に終わったものの、チーム代表と技術トップを兼任していたビノットを更迭し、その後任には昨年までアルファロメオのチームCEO兼代表であったフレデリック・バスールを起用している。
「彼にはこの事態を収拾するための時間を与えなくてはならない」
バスールについてそう語ったピエロ・フェラーリは、次のように付け加えた。
「彼はレースをよく知る人物であり、何年もこの環境に身を置いてきている。だから、彼は信頼に値するよ」
■フェラーリ改善の鍵は外部からの人材獲得
ピエロ・フェラーリは、チームを向上させる鍵は、重要な人材を外部から多く招き入れることだと認めている。
「我々には、異なる経験を持つ人たちが必要だ」
「歴史を振り返ってみると、私たちが本当に組織改革を行ってスタッフをほかのチームから移籍させたとき、その結果は非常によく目に見えていた」
ピエロ・フェラーリはそう語ると、次のように付け加えた。
「我々は特定のことに関しては優秀だが、ほかのことに関しては外部からスペシャリストたちを招く必要があるよ」
■レッドブルが強いのは偶然ではない
そして、そのスペシャリストの1人が、天才的F1マシン設計者とも言われるイギリス出身エンジニアのニューウェイであることは間違いないだろう。
最近もフェラーリが64歳のニューウェイの引き抜きに動いたとの噂がささやかれていたが、ニューウェイはレッドブルとの契約をさらに延長したことが明らかとなっている。
ピエロ・フェラーリは次のように続けた。
「彼ら(レッドブル)は、全てのサーキットで強くてうまくやれるマシンを造ることを得意としている。彼らが強いのは今だけではないんだ」
「今日、レッドブルはハイブリッドエンジンで勝っている。だが、以前は自然吸気エンジンで勝っていた。(セバスチャン)ベッテルは彼らと共に4回F1タイトルを獲得したが、それが偶然ではなかったのは確かだよ」
■フェラーリは何度もニューウェイを誘っていた
それゆえ、ピエロ・フェラーリによれば、イタリアのマラネロに本部を置くチームはかなり以前から何度もニューウェイをイギリスからイタリアに誘い出そうと試みていたという。しかし、それは常にうまくいかなかったようだ。
「彼はモンテゼーモロにもジャン・トッドにもノーと言ったんだ。どうやら彼は移籍を望んでいないようだね。彼はイングランドに留まっていたいようだ」
2007年シーズンまでフェラーリのチーム代表を務めていたジャン・トッドと、2014年9月までフェラーリの会長を務めていたルカ・ディ・モンテゼーモロの名前をあげながらそう語ったピエロ・フェラーリは、次のように付け加えた。
「それはさておき、彼の文句の付けようのないスキルは別としても、彼は自分だけでやっているわけではないんだ。彼の周りには非常に優秀な人材がいるよ」