2016年シーズンまでエグゼクティブディレクターとしてメルセデスF1チームの技術部門を率いていたパディ・ロウが、自分がいた頃のメルセデスの方が現在のレッドブルよりも圧倒的な強さを誇っていたと主張した、
■今年のレッドブルはこれまでのメルセデスより強いとラッセル
現在のハイブリッド方式F1エンジンが導入された2014年からドライバーズタイトルを7年連続、コンストラクターズタイトルを8年連続で獲得した絶対王者のメルセデスだが、2021年にドライバーズタイトルをマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に奪われると、2022年にはドライバーズタイトルばかりかコンストラクターズタイトルもレッドブルに奪われ、ついに無冠となってしまった。
そして、2023年シーズンもまだ序盤とは言え、レッドブルに大きな差をつけられてしまっているのは明らかだ。
昨年バルテリ・ボッタスに代わって7度F1王者となったルイス・ハミルトンの新しいチームメートとなったジョージ・ラッセルは、レッドブルの現在の支配力はかつてメルセデスを凌駕すると考えている。
イギリス出身の25歳のラッセルは、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語った。
「レッドブルは、僕がこれまで見てきた中で最高のレーシングカーだ」
「過去10年間のどのメルセデスF1マシンよりも優れているよ」
■ハミルトンやヴォルフもレッドブルに白旗
ハミルトンもこのラッセルのコメントと同じようなことを言っている。
そして、メルセデスのチーム代表を務めるトト・ヴォルフも、今やレッドブルがF1の新たな支配者となったことを認め、次のように語っている。
「我々が同じように強い年もあった。だが、このスポーツでは、同じ者がずっと勝つのがショーとしてはよいことではないにしても、それは彼らがいい仕事をしたからであって、我々はそうではなかったということだ」
■メルセデスの強さは歴史的にも“異常”だったとパディ・ロウ
だが、こうした中、60歳のロウは、かつてのメルセデスが現在のレッドブル以上に圧倒的な強さを誇っていたのは確かだと主張している。
「あれほどまで大きくリードしたことがあったとは思わないよ」
『formel1.de』にそう語ったロウは、次のように続けた。
「2014年は、我々にはどれだけ有利にスタートすることが必要かを見極めることができる日が続く状況だったよ」
「シーズン中、かなり多くのレースでそうだったんだ」
「なぜ今、みんながそのことをそんなに秘密にしようとしているのか私にはわからないよ」
「いずれにせよ、誰もが我々がそうしていたことをうすうす気付いていただろうが、正直なところ、F1の歴史から見れば、それはかなり異常なことだったんだ」
「彼らはそのことを恥じる必要はない。ブリックスワース(メルセデスのエンジン部門)の人たちは、エンジンに関して素晴らしい仕事をした。それはモータースポーツの歴史上、最も顕著な成果のひとつだったんだ」
「その結果、率直に言って、ほかのエンジンメーカーにとってはかなり恥ずかしいほどの大きなリードを得ることができたのさ」
メルセデスでの大きな成功を手土産に2017年3月にウィリアムズに移籍したロウだったが、ロウが手がけたウィリアムズF1マシンは低迷し、その責任をとらされる形で2019年3月に現場をはずれ、同年6月に正式にチームを離脱している。
その後、ロウはF1の世界に戻ることはなく、2020年に合成燃料会社『Zero Petroleum』を共同設立している。