トト・ヴォルフ代表は、2022年にメルセデスF1がここまで不調であることがルイス・ハミルトンを引退に追い込む可能性を否定した。
7度のワールドチャンピオンのハミルトンはメルボルンで、新しいマシンをドライブすることは「楽しくない」と認めていた。さらに悪いことに、トップチームのフェラーリやレッドブルに追いつくための策は「何の進歩もない」と言う。
■メルセデスを悩ます問題はポーパシングだけではない
メルセデスF1の最大の問題は「ポーパシング」現象だと言う。
「これまで経験したクルマの中で最悪のクオリティで、僕らはこれを取り除くことができないんだ」とハミルトンは認めた。
ところが、フェラーリの新マシンもF1の新しいグランドエフェクト・エアロダイナミクスによって激しく跳ねているが、シャルル・ルクレールは今のところチャンピオンシップを支配している。
「その通りだ」とヴォルフは続けた。
「でも、我々のバウンシングはもっとひどいんだ。なぜならコーナーまで引き込むからだ。フェラーリはストレートで跳ねるだけだから、その差は歴然だ」
「ドライバーは疲れるが、ストレートの時間はほとんどない。フェラーリはターンインすると、すぐにクルマが安定するんだ」
ポーパシングがいまだに大きな問題であるのに対し、ヴォルフは新しいパーツを持ち込んで「さらなる混乱」を引き起こすことは「意味がない」と言う。
「ダウンフォースを増やせば、跳ね返りがさらに悪化することだってあり得るんだ」
レッドブルに関しては、バーレーン最終テストに持ち込んだアップグレードがバウンシングの問題を解決したとヘルムート・マルコ博士が語っている。
■メルセデスF1、世界タイトルを諦める
しかし、メルセデスの問題はポーパシングだけではないとヴォルフは主張する。
「例えば重量だ。ほかにもいろいろな問題がある」
「要するに、もう時間がないから、今年は世界タイトルを争うことはできないだろう。マシンは深刻な重量オーバーで、我々はその原因を理解できていない」
「レースウイークエンドを一種のテストととらえて、来年は必ず上位に食い込めるようなクルマに仕上げていかなければならない」
「このようなクルマの開発は科学であり、高度な物理学であり、我々はどこかで間違っていた」とヴォルフは『Osterreich(オスターライヒ)』紙に語っている。
■ハミルトンは引退しない?
メルセデスが2022年のチャンピオンシップを事実上断念し、ハミルトンが最近「精神的、感情的」に苦しんでいることを認めたため、37歳のハミルトンがすぐに引退を申し出るのではないかと考える者もいるようだ。
「ルイスは前向きに対処している。我々はお互いを高め合おうとしているんだ」とヴォルフは語った。
「自分のしていることが嫌になったら、立ち去るしかない。しかし、ルイスはこの仕事が好きなんだ。彼は素晴らしい状態だし、彼のライフスタイルは非常に規律正しいものだ。そして、彼には何年も何年も先がある」
とはいえ、現在のハミルトンのボディランゲージは、特に落ち込んでいると言う人もいる。
「一日の始まりには陽気なルイスが見え、セッションが予想以上に悪くなると落ち込むルイスが見える」とヴォルフは認めている。
「私はセッションや週末という単位で考えるのはやめて、年単位で考えないとならない」
「これは一時的なものであるべきだし、長期的な下降スパイラルではないはずだ。一時的なものだろうから、今は正しいことをしなければならない。ストップウォッチでタイムを計るのではなく、精神的にね」