今年からマクラーレンで走ることになるダニエル・リカルドだが、ルノーを去るという決断をしたことに後悔はないようだ。
2019年にレッドブルからルノーに移籍したリカルドだが、新型コロナウイルスのパンデミックにより足踏み状態に置かれていた2020年F1シーズン開幕前の5月に2021年にはマクラーレンへ移籍することを発表していた。つまり、実際のところ1シーズンを戦っただけでルノーを離脱することを決めたことになる。
リカルドはマクラーレンに所属していたカルロス・サインツが2021年にフェラーリへ行くことになると聞いた時に移籍の気持ちが固まったのだと明かしている。
フェラーリはセバスチャン・ベッテルに替えて2021年にサインツを起用することをやはり5月に発表していた。
「カルロス・サインツのニュースを聞いて、僕も行動を起こすべき時だと理解したんだ」
フランスの『Auto Hebdo(オト・エブド)』にそう語ったリカルドは次のように説明している。
「簡単な決断ではなかったよ。シーズンがまだ始まってもいなかったんだからね。そして、ルノーにそのことを告げるのはさらに難しかった。だけど、僕は2019年シーズンのことを考えて決断を下したんだ。あのシーズンはチームにとって非常に厳しいものだった」
しかし、F1関係者の中にはリカルドは移籍の決断を早まったのではないかと考えている者も少なくないようだ。というのも、2020年にはルノーが前年よりもかなりパフォーマンスを高めたからだ。
実際のところ、コンストラクターズランキングではコンスタントにポイントを積み重ねたマクラーレンが3位、ルノーが5位という結果に終わったものの、表彰台獲得回数では3対2でルノーの方に軍配が上がっている。
新型コロナウイルスの影響によりどのF1チームも財政的に厳しい局面を迎えているが、長い目で見れば独立系チームのマクラーレンよりも世界有数の自動車会社であるルノーのワークスチームの方が財政面での安定度が高いのは間違いないだろう。
つまり、2021年以降はアルピーヌと名前が変わるルノーの方がマクラーレンをしのぐパフォーマンスを見せる可能性も十分にありそうだ。
ルノーを去ることにしたのをがっかりしているのではないかと質問された31歳のオーストラリア人ドライバーは次のように答えた。
「いや、僕は誇りに思っているよ。僕が成し遂げたこととチームが見せた大きな進歩をね」
「僕は自分がその進歩に貢献できたと信じているんだ。できることは全てやったよ。2年というのは短かったかもしれない。だけど、僕たちが一緒に始めた2019年シーズンよりはかなりいい形で昨シーズンを終えることができた。だから、去るのは悲しいけれど、がっかりはしていないよ」
そう語ったリカルドは、マクラーレンへの移籍が自分のキャリアを後退させることにはならないという自信があると次のように続けた。
「もしマクラーレンでなければそうだったかもしれない」
「このチームはこのスポーツにおいて特別な位置にあるんだ」
「新しい小規模チームなどとは違い、そこには豊かで成功に富んだ歴史がある。フェラーリにはティフォシ(熱狂的ファン)がいるけれど、マクラーレンだって大きな注目を浴びているよ」
「確かにカスタマーエンジンを使っている。だけど、それ以外のことでファクトリーチームに劣っているものなど何もないよ。彼らは重んじられているし、ファクトリーチームのような扱いを受けているよ」
レッドブルの育成ドライバーとして2011年にHRTでデビューし、2021年には11年目のF1シーズンをマクラーレンで迎えることになるリカルドは次のように付け加えた。
「これから先どうなるかは時間がたたないと分からないけれど、僕には自信があるよ」
2021年からルノーエンジンからメルセデスエンジンにスイッチするマクラーレンでリカルドがどのような走りを見せるのかに注目だ。