コックピット保護装置「ハロ」の安全性に疑問の声
メルセデスF1チームを率いるエグゼクティブディレクターのトト・ヴォルフが、今季からF1マシンに装着が義務づけられたコックピット保護装置「ハロ」の安全性に疑問を投げかけた。
先週末に行われた今季のF1最終戦アブダビGP決勝でロマン・グロージャン（ハース）と接触したニコ・ヒュルケンベルグ（ルノー）のマシンが大きく弾き飛ばされ車体が上下逆さまとなった状態でコース左側のウォールに激突。
そのときヒュルケンベルグのマシンからは煙が上がる状態となったが、ヒュルケンベルグは逆さまになったマシンから自力で脱出することができず、無線で「助けてくれ、火が出ている！」と叫んでいた。
幸い、マシンの火はコースマーシャルたちの消火活動によって消し止められたが、ヒュルケンベルグはマシンが上向きに戻されるまでコックピットの中に収まったままの状態が続いていた。
「自力では脱出できなかったんだ」
救出された後に記者たちにそう語ったヒュルケンベルグは次のように付け加えた。
「右側にはウォール、左側にはハロがあったからね」
F1競技委員長を務めるFIA（F1統括団体である国際自動車連盟）のチャーリー・ホワイティングは、マシンが逆さまになってもヒュルケンベルグの頭部がしっかりと守られたということを重視し、ハロを装着した効果があったとの見解を示している。
だが、ヴォルフは別の見方をしている。
「私が心配しているのは、彼（ヒュルケンベルグ）は炎が上がっているのが見えたにもかかわらず、クルマから脱出することができなかったことだ」
ドイツの『Welt（ヴェルト）』にそう語ったヴォルフは次のように付け加えた。
「こういうことが実際に起きたわけだし、我々としてはドライバーがクルマからすぐに脱出できるシステムを開発すべきだよ」
2016年のF1チャンピオンであり、現在はテレビのF1解説者などを務めているニコ・ロズベルグも今回のヒュルケンベルグの事故を受け、レースカーが逆さまとなって火災が発生する可能性があることが「ハロにとって唯一の欠点であり、唯一の弱点なんだ」と語り、次のように付け加えている。
「基本的には、それ（ハロ）によって安全性はかなり向上しているよ。だけど、もう一度見直すことが必要かもしれないね」
