トロロッソのチーム代表を務めるフランツ・トストが、2020年シーズンもピエール・ガスリーとダニール・クビアトのドライバーランアップを継続したいと望んでいることを明らかにした。
イタリアのファエンツァにファクトリーを構えるトロロッソだが、来季はオーナー企業であるレッドブルが展開するファッションブランドである“アルファタウリ”を新たなチーム名称とすることが確定したと報じられている。
これにより、2006年から使用されていたイタリア語で“赤い雄牛”を意味するトロロッソというチーム名称が今季限りでF1から消えることになるようだ。
2006年以来トロロッソのチーム代表を務めてきたトストにとっても、慣れ親しんできたチーム名称に別れを告げるのは感慨深いものがあるはずだ。
そのトストは、新チーム名称で迎えることになる2020年シーズンも、できれば現在のドライバーラインアップを継続したいと考えているようだ。
トロロッソのドライバー人事権はオーナー会社であるレッドブルにあり、シニアチームであるレッドブル・レーシングのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーやモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコらが決定権を持っていると考えられている。
もともとトロロッソはレッドブル・レーシングでF1タイトル獲得を狙えるドライバーを育成するために運用されてきているチームであり、かつて2010年から2013年までレッドブルで4年連続F1チャンピオンとなったセバスチャン・ベッテル(現フェラーリ)や、2019年からルノーに移籍したダニエル・リカルドなどもトロロッソを経てトップF1ドライバーの地位を得てきたドライバーだ。
だが、近年ではレッドブルの契約下にある若手ドライバーの層が薄くなってきているという現実がある。
そうした状況のもと、今季はリカルドの後任としてガスリーがレッドブルに昇格することになったため、2017年シーズン途中でトロロッソをクビにされていた元レッドブル所属ドライバーのダニール・クビアトをトロロッソに復帰させるとともに、すでにフォーミュラEチームとの契約を結んでいたアレクサンダー・アルボンを強引に引き抜いてF1デビューさせたという経緯もある。
ところが、レッドブルに昇格したガスリーがなかなか期待通りのパフォーマンスを発揮できないという状況が発生。夏休み後のF1ベルギーGP以降はアルボンをレッドブルに昇格させ、ガスリーをまたトロロッソに降格するという、傍目には少々ドタバタしたドライバー人事を行ってきている。
さらに、マルコは2020年には改めてガスリーとアルボンのパフォーマンスを見極めて、そのどちらかをマックス・フェルスタッペンのチームメートとしてレッドブルで走らせる計画であることを明らかにしている。
しかし、オーストリア出身のトストは2020年もトロロッソとしてはガスリーとクビアトのラインアップをこのまま継続したいとフランスの『Auto Hebdo(オト・エブド)』に次のように語った。
「彼らとならやりやすいんだ。彼らはチームのことをよく知っているからね」
「彼らなら、もう私が教える必要はない。多分、彼らはレッドブルに行くのが少しばかり早すぎたのだと思う。これまでもしばしば言ってきたが、ドライバーたちと3年間一緒にやるのが私の理想なんだ」
「彼ら2人にとって(レッドブルへの早期昇格は)楽な状況ではなかったよ」
「来年に向けて、レッドブルがどういう判断をするか様子を見るしかないが、彼らはどちらも非常に速いし、我々は彼らの仕事に非常に満足しているよ」
「個人的には、ダニールとピエールには2020年も我々のところで続けて欲しいと思っている。どうなるかはメキシコGP(27日決勝)後に発表されることになっているがね」
トストはさらに、今季の第13戦ベルギーGPから再びトロロッソで走っているフランス人ドライバーのガスリーはすぐにトロロッソのF1マシンに順応することができていると次のように続けた。
「ピエールに関しては(クビアトとは)違いがあったんだ。彼はそれほど長く我々と離れてはいなかったからね。夏に彼と私のオフィスで会ったとき、私は彼にこう言ったよ。『まるで昨日ここから去ったように感じるよ』とね」
「ダニールの方はレッドブルでもっと長くやっていた。だが、どちらもすぐにこのチームとクルマと再びうまくやっていくことができるようになったよ」
今季ガスリーがレッドブルで期待されたような結果を出すことができなかったのは、トップチームでのプレッシャーが大きすぎたためだったのかと質問されたトストは次のように答えている。
「私はあそこにいたわけではないから、なんとも言えないよ」
「多分、彼は(レッドブルの)マシンの挙動に親しめなかったんじゃないかな。それに、彼は冬(バルセロナテスト)に2度クラッシュしてしまっていたから、それでちょっと自信を失ってしまったんだ」
そう語った63歳のトストは次のように付け加えている。
「だが、F1のような世界にいるのであれば鋼のような気持ちを持つしかないんだ。特に、マックス・フェルスタッペンと対峙するようなときにはね」