先週末にモントリオールで開催された今季のF1第7戦カナダGPは、フェラーリのセバスチャン・ベッテルに5秒ペナルティーが科されたことで後味の悪い終わり方となったのは事実だ。
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そして、そのペナルティーを巡って、F1関係者たちがそれぞれの意見を展開している。
■ベッテルはペナルティーを与えられるにふさわしいとロズベルグ
メルセデス在籍時代にはルイス・ハミルトンと熾烈なライバル関係にあったことで知られる2016年のF1チャンピオンであるニコ・ロズベルグは、ペナルティーを科されたことに対してあまりにも感情的になっていたベッテルの姿勢は到底許されるものではないと次のように主張している。
「彼(ベッテル)はいつでも自分が正しいと考え、ほかの人たちを批判するんだ」
「レース後に見せたああいう仕草や失礼なコメントはまったく無用のものだった」
ベッテルはレース後に義務づけられているコース上でのインタビューをすっぽかし、ピットレーンに止められたハミルトンのマシンの前に置かれていた1位を示すボードを脇にどけてしまうなどの行為を行っていた。
だが、ベッテルはレース後3時間が経過した時点でも母国ドイツの『Bild(ビルト)』に対し、「僕は何も後悔していない」と主張している。
■以前同じことをしたハミルトンは罰せられなかったとリカルド
ロズベルグの意見はともかく、ここまでのところベッテルのレース中の行為に対して与えられた5秒ペナルティーと2ペナルティーポイントという裁定は厳し過ぎたと考えている者の方が多いようだ。
昨年までレッドブルに所属していたダニエル・リカルド(ルノー)は次のように語った。
「僕は2016年のモナコでルイスに同じようなことをやられたことがあった」
「僕の意見だけど、あのときは今回のカナダよりもっと危険だったよ。だけど彼は何のペナルティーも受けなかった」
「どちらにしても、あれは普通のことだったと僕は思っている。激しく戦っていただけさ」
■裁定に一貫性がないことが問題だとクビアト
今年トロロッソ・ホンダでF1復帰を飾ったダニール・クビアトも次のようにコメントしている。
「もし彼が5回連続でああいうことをしたということであれば、そのときはペナルティーを与えるべきかもしれないだろうけれどね。僕は、あのペナルティーは厳し過ぎたと思っているよ」
「競技委員たちのところに行くときはいつもどうなるか分からないんだ」
「彼らは困難な仕事を抱えているし、決して簡単なことではないよ。だけど、裁定に関して一貫性がないことが問題であることは誰もが分かっていることさ」
■恥ずべきペナルティーだったとビルヌーブ
1997年のF1チャンピオンであるカナダ出身のジャック・ビルヌーブも今回はベッテルを擁護している。
「あのペナルティーはF1にとって恥ずべきものだよ」
『motorsport-magazin.com』にそう語ったビルヌーブは次のように付け加えている。
「今回はドライビングのミスだったわけだし、ルイスもすぐにアクセルを緩めることができた。あれは汚いドライビングではなかったよ。常に“どうぞ、僕を追い抜いてください”と言うわけにはいかないものさ。これはゲームじゃないんだからね」
2番手でチェッカーを受けながらもベッテルにペナルティーが与えられたことで優勝が転がり込んできたハミルトンでさえ、もし自分がベッテルと同じ立場にあったとしたら「セバスチャンとまったく同じ」ことをしていただろうと認めている。
■史上最悪の裁定だったとストーナー
2007年と2011年に世界最高峰二輪選手権MotoGPのチャンピオンとなった実績を持つケーシー・ストーナーは、今回のベッテルに対するペナルティーはF1史上「最悪の決定」だとまで語り、今年3月に急逝した前F1競技委員長チャーリー・ホワイティングに言及しながら次のように付け加えた。
「こういうときには、チャーリー・ホワイティングがいなくて残念に思うよ」
■いずれにしてもメルセデス有利は変わらないと伊メディア
最近ではベッテルに対する批判的な報道が増えているイタリアのメディアだが、『Corriere della Sera(コリエーレ・デラ・セラ)』は今回ばかりはフェラーリとベッテルが勝利を「盗まれた」と主張している。
フェラーリでは今回のベッテルに対する裁定に対し、異議申し立てを行うことになると伝えられている。だが、実際のところ裁定が覆る可能性はほとんどないと考えられている。
『La Stampa(スタンパ)』は次のように書いている。
「あのペナルティーが正しかったか間違いだったかにかかわらず、それによって何も変わらない。メルセデスの7勝0敗だ」