F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)も、大規模F1チームが小規模チームとの関係を強化して自分たちの“Bチーム”にしようとする動きに懸念を示している。
■ウィリアムズがメルセデスのBチームに?
ウィリアムズのチーフテクニカルオフィサーを務めるパディ・ロウが、来季以降メルセデスからPU(パワーユニット)だけでなくギアボックスとリアサスペンションの供給を受けることを認めた。
これはウィリアムズが事実上メルセデスのBチームとなる可能性を示すものだと受け止めている者も多い。
■F1で進む「スーパーチーム化」
F1ではレッドブルがトロロッソというジュニアチームを有しているのはよく知られているが、フェラーリはハースやザウバーとの関係強化を進めてきており、この2チームも事実上フェラーリの“Bチーム”と呼んでもおかしくないような存在となっているとも言われている。
大規模F1チームにとって、サテライト(衛星)チームとも呼ばれるBチームを持つことは、単にさまざまなコンポーネントやパーツを販売できるだけでなく、そのチームから得られるデータを自分たちのパフォーマンス改善に利用することができるという非常に有利な立場が得られることになる。
最近ではこういう形でいくつかのチームを傘下に置くチームのことを「スーパーチーム」と呼ぶ傾向も出てきているようだ。
■生き残るためならBチーム化も選択肢のひとつ
今季限りでレッドブルとのエンジンパートナー関係が終わるルノーは、今後唯一の顧客チームであるマクラーレンとの関係強化を図っていくと考えられている。
そしてメルセデスは、破産宣告を受けたフォース・インディアや、やはり財政難に苦しむウィリアムズを自分たちのサテライトチームとして利用することを視野に入れていると伝えられている。
「それは、我々としても排除したくない選択肢だよ」
フランスの『Auto Hebdo(オト・エブド)』紙にそう語ったロウは次のように付け加えた。
「F1で起きようとしている変化を考えれば、最大のパフォーマンスを発揮するためにどのようにチームを運営していくかということに目を向けていかなくてはならないんだ」
■メルセデスをけん制するルノー
最近、ルノーが破産状態となったフォース・インディアの救済にメルセデスが関与することに対して反対の意思表明を行ったことが報じられたが、これはメルセデスがフォース・インディアをBチーム化することによってさらに力を増すことを妨げるためだと考えられている。
ルノーF1プロジェクトを率いるシリル・アビテブール(マネジングディレクター)は、この件に関してドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように語っている。
「我々はフォース・インディアに対して敵対するつもりなどまったくないんだ」
「だが、この話に関しては最終的に課題としてあげられる必要があるよ」
「我々は何か月にもわたって話をしてきているが、誰も耳を貸そうとしない。これは我々にとってこのことを公然化するチャンスなんだ」
一方、ルノーではマクラーレンを自分たちのBチームにしようと考えているのではないかと尋ねられたアビテブールは次のように主張した。
「マクラーレンは今後も独自にクルマの製造を続けるし、Bチームになることはないよ」
■FIAもこうした動きを懸念
だが、F1を統括するFIAもこうした問題には懸念を抱いているようだ。
F1競技委員長を務めるFIAのチャーリー・ホワイティングは次のように語っている。
「F1はそのうち2つか3つのスーパーチームたちによって支配されるようになってしまうかもしれない」