ホンダは、F1モナコGP&インディ500、栄光ある二大レースへの挑戦にあたり、フェルナンド・アロンソなどのインタビューを公開した。
●【インディ500日程・結果】アロンソ、佐藤琢磨の結果まとめ/第101回インディ500スケジュール
■5月はレース界最大の1カ月
インディ500が行われる5月は、ファンや関係者の間では“レース界最大の1カ月”と呼ばれている。5月28日がレースファンにとって特別な一日であることは間違いない。なぜなら、モナコGPとインディ500が同日に開催され、世界中の何百万人とものファンがテレビにくぎ付けになるからだ。
2017年はその注目度がさらに高まっている。現役F1チャンピオンであるフェルナンド・アロンソがブリックヤード(※1)で戦い、同じくモナコGPウィナーでF1チャンピオン経験者のジェンソン・バトンがモナコでマクラーレン・ホンダに復帰。このアロンソの挑戦については大きな話題と注目を呼んでいる。
なぜモナコとインディ500は特別なレースなのだろうか。
(※1)ブリックヤード…インディアナポリスは当初レンガ敷きのコースで、その名残としてアスファルト舗装が施された現在でも、コントロールライン上の1ヤードのみレンガが残されている。これにちなんで、同地は「ブリックヤード」という愛称で呼ばれている。
■ホンダは歴代3位のメーカー
インディ500は、1911年に第1回が開催。モータースポーツ黎明期に大規模なレースでその魅力を伝えようという計画の一環だった。
ホンダはインディ500において大きな成功を収めており、2004~12年の9連勝を含む通算11勝を挙げている。これは、歴代のエンジンマニュファクチャラーの中で3番目に多い勝利数だ。
■アロンソ「どちらもウォールに囲まれミスが許されない」
モナコGPで2勝を挙げているフェルナンド・アロンソは、インディアナポリスでも予選5番手とすばらしい活躍をみせた。
「レーストラックがウォールに囲まれているという点で、2つのコースは似ているんだ」
「どちらもミスが許される余地はない、それが数多ある他のコースと比べて異なる点なんだ。ただ、似ていると言ってもインディ500のほうが明らかにスピードが速いから、もしクラッシュするならモナコのほうがマシだろうね(笑)」
■F1モナコGPは平均速度160km/h、インディ500は平均速度360km/h
モナコでは、タイトなコース特性とガードレールに囲まれた視界により、実際の平均速度は時速160km程度にもかかわらず、コクピットでの体感スピードは実際よりも速くなる。
一方、インディアナポリスでは予選で計測される4周の平均速度が時速360kmにも達する。この違いは、エンジニアリングに影響する。
■F1モナコGPの特別な準備
F1モナコGPについて、Honda R&Dチーフエンジニアの中村聡は次のように語る。
「モナコでは、出力はそれほど要りませんが、何よりも重要なのはレスポンスです」
「また、ドライバビリティも必要です。そして、オーバーテイクが難しいコースなので決勝よりもむしろ予選の重要性が高いのも特徴です。今年は車幅がワイドになっているので、例年よりもその傾向は高いでしょうね。だから、予選で最大の結果を残せるようにしなければなりません。これが、ほかのサーキットと大きく違うポイントです」
「モナコに向けての特別な準備として、独特のエンジン特性になるようなセッティングを持ち込みます。例えば、フェアモント・ヘアピン(※2)では回転数がかなり低くなるので、それに対応させます。ほかのサーキットでは、あんな回転数で走ることはないですから」
(※2) かつては“ロウズ・ヘアピン”と呼ばれたターン6。レースが行われる全コースのコーナーの中で最も小さい回転半径となっている。
■インディ500の独特の取り組み
アメリカにおけるホンダの開発拠点であるHonda Performance Development(HPD)で、F1における中村と同様の役割を担うレースチームプリンシパルのアラン・ミラーは、インディ500にも独特の取り組みがあると語る。
「ここインディアナポリスでは、ほかと違ったエンジンサイクルになります。レースの間はほとんど1万1000回転から1万2000回転で走行するので、それに合わせたエンジン特性に仕上げなければなりません。ロードコースとは全く違います。また、ギアのシフト回数も同様です。そして、燃費がレースに大きな影響を及ぼすので、常に改善策を探っています」
「レースに向けて新しいエンジンを使うので、それを見込んでシミュレーションをします。年間で使えるエンジンは4基までと定められているので、インディ500のあとは、ロードコースのレースでも同じエンジンを使わなければなりません」
「さらに、加速も考慮しなければなりません。イエローフラッグ明けのリスタート(※3)では加速力が重要になるからです。イエロー中も時速120~160㎞程度と決して遅くはありませんが、リスタート時にはそこから一気に時速320km近くまで加速します。だから、ドライバーは、イエロー中1速か2速で走っていますし、ピットアウト時にも加速が必要です。最高速だけを考えていてはダメなんです」
(※3)インディカー・シリーズではイエローフラッグが提示されるとセーフティカー導入となる。
■HPDではインディ500での勝利が絶対的にナンバー1
またミラーは、インディ500ではほかのレースよりもプレッシャーがかかるかと質問されると、「もちろん!」と明快に答えた。
「HPDでは、インディ500での勝利が第一のゴールなんだ。シリーズ中のどのレースよりも重要で、どんな事柄よりも優先される。もちろん、ドライバータイトル、マニュファクチャラータイトルも欲しいし、どのレースでも勝ちたいと思っているさ。でも、インディ500が絶対的にナンバー1だよ」
■アロンソ、忘れられない素晴らしいレースになる
インディアナポリス、モンテカルロ市街地コースともに、開催当初からほとんど変わっておらず、モータースポーツの歴史を感じることのできる、偉大なサーキットだ。
アロンソは、モナコとインディ500の伝統について次のようにコメントした。
「モナコやインディアナポリスで猛スピードのマシンが走れば、ショーとしての魅力やそのスリルもあって、観客やファンの皆さんにとっては、忘れられない素晴らしいレースになるはずだよ」
「だから、こうした伝統のレースは続いていくんだ」