初のF1タイトル獲得を達成したニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)だが、2016年のF1最終戦アブダビGP決勝でチームメートのルイス・ハミルトンが終盤に見せた戦略的な走りを批判しようとはしなかった。
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■チーム指示を無視してペースを下げたハミルトン
自分が優勝してもポイントリーダーのロズベルグが4位以下でなければ逆転タイトル獲得の望みが消えることになっていたハミルトンは、レース終盤にわざとペースを落とし、自分の後ろで2番手を走行するロズベルグにライバルチームのドライバーたちが追いついてくるように仕向けていた。
もちろん、ハミルトンがとった作戦は、フェラーリのセバスチャン・ベッテルやレッドブルのマックス・フェルスタッペンにロズベルグを追い抜くチャンスを与えようとするものだった。
■メルセデスAMGはハミルトンの指示無視を批判
だが、レース中にハミルトンに対してもっとスピードを上げるよう指示していたメルセデスAMGは、ハミルトンがこの指示を無視したことを重くとらえており、ハミルトンに対しては何らかの処分が行われるのではないかともうわさされている。
ほかにも、今回のハミルトンのとった行為に対し、批判的なコメントを行っている者も少なくない。ハミルトンと同じイギリス人元F1ドライバーであり、1992年のF1チャンピオンでもあるナイジェル・マンセルも自身のツイッターに次のように書き込んだ。
「私はスポーツマンだ。だから、私ならこういうことはしないね」
だが、メルセデスAMGのライバルチームであるレッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは、ハミルトンの行為を擁護する発言を行っており、それに対してメルセデスAMGのトト・ヴォルフ(ビジネス担当エグゼクティブディレクター)が、「彼(ハミルトン)は彼(ホーナー)のところで走ったほうがよいのかもしれないね」と返すなど、かなり険悪な雰囲気が漂っているのも事実だ。
■ハミルトンは「完ぺきだった」とロズベルグ
だが、ハミルトンのそうした妨害にもかかわらず、アブダビGP決勝を2位でゴールして初タイトル獲得を決めたロズベルグと、その父親であり1982年のF1チャンピオンであるケケ・ロズベルグも、明確にハミルトンの行為を批判しようとはしなかった。
ハミルトンがレース終盤に展開した作戦をどう思うかと質問されたロズベルグは、次のように答えた。
「とんでもないよ」
「いや、違うな。とんでもないというのは間違いだね。僕にとってはとんでもなく厳しかった、という意味さ」
メルセデスAMGがハミルトンが行った指示無視を重大視していると伝えられている中、ロズベルグはハミルトンがあの状況において「完ぺき」なドライビングをしていたと語っている。
■最終的に問題はなかったとロズベルグの父
イギリスの『Telegraph(テレグラフ)』もハミルトン擁護派だ。同紙は話題の一件について次のように書いている。
「ハミルトンの戦略はルールには反していなかったし、誰も傷つくことなくF1最終戦をさらに盛り上げていた。それなにに、なぜこれほどの騒ぎとなるのだろう?」
ハミルトンが最後にとった戦略について質問された19歳のフェルスタッペンも次のように答えている。
「もちろん、僕も彼と同じことをしただろうね」
67歳となったケケ・ロズベルグも、ハミルトンがああした戦略をとったことは驚きではなかったと次のように語った。
「あれは予想できなかったわけではなかった」
「最後の2周では、私はもっとやられるかと思っていたよ。だから、問題はなかったと言うべきだね」
■厳しい選手権だったとケケ
息子のF1生活に影響や支障をきたさないようにとの配慮のもと、ここ6年間ほどメディアに一切顔を出さないように努めてきていたケケだが、アブダビGP決勝はアブダビから100kmほど離れたところにあるドバイのホテルの一室でテレビ観戦していたという。
ケケは、グラハム・ヒルとデイモン・ヒル親子に次ぐ2組目の親子F1チャンピオン誕生が決まった2016年F1シーズンを振り返って次のように語った。
「これまでで最も厳しい選手権だったと思うよ。最終戦のゴールラインを越えるまで戦いが続いたんだからね」