あるヨーロッパの政治家が、大きな話題に上っているアメリカのリバティ・メディアによるF1株式買収を認めることには問題があるのではないかと疑問を呈していると伝えられている。
その政治家というのはイギリスの女性国会議員であるアナリース・ドッズだ。ドッズはこれまでにも現在のF1の収益分配システムや意思決定システムが欧州競争法に違反する疑いがあるとして、ザウバーやフォース・インディアに正式申し立てを行うよう強く働きかけてきたという経緯がある。
そしてそのドッズが今回のリバティ・メディアによるF1買収問題に大きな関心を寄せていると伝えられている。
■前FIA会長が懸念を示した利益相反問題
すでに、前FIA(国際自動車連盟)会長であるマックス・モズレーが、今回の買収には利益相反の問題があるのではないかと指摘したことが報じられていた。
今回の買収が成立するためには関係省庁の承認が必要となることに加え、F1統括団体でもあるFIAの承認が必要となるためだ。現在FIAはF1株式1%を所有しており、今回の買収取引を承認することで9,000万ドル(約90億円)もの含み利益を生むことになると考えられている。
モズレーはその際、「欧州委員会が来て、これは認められないと言うかもしれないよ。だが、彼らはそうしないかもしれないがね」と語っていた。
■着々と新F1運営体制を固めるリバティ・メディア
だが、現時点では今回の買収手続きは着々と進められている。
F1界においても大きな影響力を持つとされる世界最大級のモータースポーツ広告代理業を営むアメリカのザク・ブラウンが今年いっぱいで自分の会社であるジャスト・マーケティング・インターナショナル社のCEO(最高経営責任者)の座から降りることを認めたことが報じられているが、今後リバティ・メディアがF1運営にかかわる重要なポストにブラウンをつけることになりそうだと強くうわさされている。
ブラウンは声明の中で、「私は、自分が一番よく知っているエリア、つまりモータースポーツの分野においてこれまでの経験を生かして次の章をひもといていくことになる」と語っている。
うわさでは、ブラウンがそう遠くない将来に、バーニー・エクレストンに代わってF1最高責任者に就任するのではないかと言われている。
■FIAの利益享受は認められないと法律家たち
だが、ドッズは、こうした動きをけん制し、F1ビジネス記者として知られるクリスチャン・シルトに次のように語った。
「どんな産業であろうと、自らが監督すべき会社の売買によって監督機関自身が収益を得るというようなことは受け入れられるものではありません」
さらに、高名な2人のスポーツ専門弁護士も、今回のF1買収に疑問を呈している。
その1人であるチャールズ・ブライアスウェイトは『Telegraph(テレグラフ)』に次のように語った。
「もしFIAが今回の買収を承認すれば、それは巨額の販売利益を得たいという思いがそうさせたのだと疑う者が出てくるかもしれない」
さらに、王室顧問弁護士という肩書を持つティム・オーウェンも次のように付け加えている。
「独立した公平な機関として監督業務を行うことが求められている準司法的権力を持つ監督機関は、特定の案件によって金銭的利益を得ることはできない」