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小規模チームからも疑問? エクレストンの新エンジン導入計画

2015年10月29日(木)19:36 pm

F1最高責任者であるバーニー・エクレストンが進めようとしている2種類のF1エンジンを並行して走らせるという計画を歓迎しているチームはそれほど多くはないようだ。

■新規格エンジンの導入を目指すF1ボスとFIA

エクレストンは最近、統括団体であるFIA(国際自動車連盟)のジャン・トッド会長も味方に引き入れており、FIAでは2017年から新たにエンジンを供給してくれる独立系エンジンメーカーを募集することを正式に発表している。

エクレストンが導入を考えているのは、恐らくはインディカーで使用されているエンジンをベースとした2.2リッターのツインターボエンジンで、供給元としてはコスワースあるいはイルモアが想定されているようだと言われている。

「我々はこの新たなエンジンを導入しなくてはならない」と語ったエクレストンは、現在のF1の問題は、小規模チームは非常に厳しい運営状況に置かれるという状況のもと、メルセデスAMGが圧倒的な強さを誇っていることでファンのF1離れが進んでいることだという。

その根本的原因が、F1が2014年から導入した1.6リッターV6エンジンとエネルギー回生システムを組み合わせたパワーユニットにあるというわけだ。

■新エンジンを導入しなければ2020年にはF1がなくなるとエクレストン

「自動車メーカーたちがハイブリッド技術を売りたいと思っていることは理解している」

ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』にそう語ったエクレストンは、次のように続けた。

「だが、それによって利益が得られるのは彼らだけだ」

「私の仕事はF1を売ることだし、ファンはみんなワクワクするようなレースを望んでいる。だからこそ、この新たなエンジンが必要なんだ。もしこのまま続けていたら、我々は2020年にはもういなくなってしまっているだろう」

■レッドブルはエクレストン案を支持

このエクレストン案の最大の支持者はレッドブルだろう。ルノーとの決別を決めたはよいが、別のエンジンサプライヤーを見つけることができず、F1撤退の危機が現実のものとなってきている。

そのレッドブルでモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、エクレストンの案について次のように語った。

「F1がついに理にかなったことをしようとしているよ」

「これこそ本当のレースを取り戻す方法だ。我々は常々、ハイブリッドは間違った手段だと言い続けてきた。だがそのときは誰もがそれを一笑に付していたよ」

だが、エクレストンの案に反対の立場に立つ者がいるのも確かだ。その筆頭はメルセデスだろう。メルセデスでは巨額の投資を行って現在のパワーユニットを開発。環境に優しいというイメージにより市販車の販売で利益を得るとともに、F1では現在圧倒的な優位を誇っている。いまさら別規格のエンジンを導入するという案にもろ手をあげて賛成するはずがない。

■疑問を呈する小規模チームたち

だが、財政的に苦しい立場に置かれている小規模チームの中にも、エクレストンの計画に首をかしげるところも少なくないようだ。エクレストンやFIAが今回の計画を進めている理由のひとつに、エンジン価格の引き下げがあるにもかかわらずだ。

フォース・インディアのチーム最高執行責任者であるオットマー・サフナウアーは、次のように語った。

「もし、彼ら(エクレストンやFIA)がこの計画を推進することができると考えているのであれば、なぜ予算制限を導入することができていないんだい? あるいは、A仕様エンジンやB仕様エンジンといったものを設けることを禁止したり、メーカーに最小限のチームに供給させたりするというようなこともね」

同じくフォース・インディアでチーム副代表を務めるロバート・ファーンリーも次のように付け加えた。

「独立系のメーカーを入れるという考えはいいよ。だが、その詳細が分かるまでは何とも言えないね」

■事実上別カテゴリーが誕生するとザウバー

さらに、ザウバーの女性チーム代表であるモニシャ・カルテンボーンはもう少し違う考えを持っているようだ。高額なパワーユニットの購入に苦しみ、強く予算制限を訴えているカルテンボーンではあるが、F1が現在のハイブリッドエンジンを導入したこと自体は間違いだとは思っていない。

「唯一間違っていたのは、その導入方法なんです。私たちは今それを修正する必要があるんです」

そう述べたカルテンボーンは、次のように続けた。

「私はF1内に2つのクラスを設けるという案にも反対していました。ですが、今回の新たなエンジン導入計画は、まさにその方向へと向かうものとなるでしょう」

現在のF1ルールでは、シャシーはチームが独自に設計製造しなくてはならないことになっている。かつて、小規模チームにはカスタマーシャシーを購入することを認め、一緒にレースはするものの、大規模チームとは別の“GP1”カテゴリーを創設してはどうかという案が検討されたことがある。カルテンボーンのいう2つのクラスとはそのことだ。

「そうなれば、私たちは公平性を持つことが難しくなります。システムが非常に複雑なだけに、空力や車両重量に関する開発をさらに進めることが必要となります。それは単にコストの増大につながるのです」

そう続けたカルテンボーンは、次のように付け加えた。

「私たちはそういう方向へ進まないほうがいいと思います」

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