先週末のF1アメリカGPにおいて2年連続で通算3度目のF1ドライバーズタイトル獲得を決めたルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)だが、レース後にチームメートのニコ・ロズベルグがとった態度には「理解できる」と語った。
【結果】F1アメリカGP決勝の順位、タイム差、周回数、獲得ポイント
■怒りのロズベルグ
アメリカGP決勝は、3戦連続でポールポジションを獲得したロズベルグとハミルトンが最前列からスタート。だが、スタート直後の第1コーナーでハミルトンがロズベルグをコース外へと押し出す形となり、ロズベルグは4番手にまで順位を落とした。
しかし、徐々に順位をばん回したロズベルグは、ペースがあがらないハミルトンを追い抜く。その後トップに返り咲いたロズベルグが安定したリードを保ち、これでハミルトンのタイトル確定はおあずけかと思われた。ところが、ロズベルグが終盤に痛恨のミスを犯してコースオフ。ハミルトンは難なくロズベルグの前に出ると、そのまま先頭でチェッカーフラッグを受けた。
そして、レース後に表彰台へと向かう控室で事件は起きた。タイトルを決めたハミルトンが、2位との文字が刺繍された表彰台用の帽子をロズベルグのひざの上にのせたところ、ロズベルグがそれをハミルトンに向かって投げ返したのだ。顔にぶつかりそうになった帽子をよけたハミルトンには、明らかに驚きの表情が浮かんでいた。
■まったく気にしていないとハミルトン
ハミルトンは、そのときのことについて、今週次のように語った。
「僕は、“ほら君のだよ”って言いながら渡したんだ。そうしたらそれが僕のほうに返ってきたんだ」
「僕は、“構わないさ”みたいな感じだったよ。全然そのことは気にしていないし」
そう語ったハミルトンは、次のように続けた。
「なぜそういうことが起きたのか、いろんな意味でよく理解できるからね。僕のチームメートでいるのは最悪のことだよ」
「レース後に失望感を抱えて(控室に)入ってきたときには、時として感情を抑えられないものさ。だから、あのことは全く真剣になど受け止めていないよ。僕は何年にもわたってニコのいろんな面を見てきているしね」
■ハミルトンにも問題ありとメルセデスAMG首脳
だが、メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフや非常勤会長を務めるニキ・ラウダは、今週末のメキシコGP(11月1日決勝)へと向かう前に、ハミルトンと話し合いを行うことになるようだ。彼らも、ハミルトンが1周目の第1コーナーでロズベルグに幅寄せを行ったことをこのまま許すわけにはいかないと認めている。
だが、ハミルトンの行動を擁護する者もいないわけではない。
■F1オーナーはハミルトンを擁護
現在のF1オーナーである投資会社CVCのドナルド・マッケンジー会長は、ブラジルの『Globo(グローボ)』に次のように語った。
「ルイスは我々のショーにおけるスターだ」
「それも、イギリス国内だけではなく、世界的なスターなんだ。彼はターン1で攻撃的だった。だが、F1を戦うのであればそれが当たり前だよ」
■あれはいい気分だったとハミルトン
ハミルトン自身も、今後ロズベルグやチーム首脳と話し合いを行う必要などはないと考えている。
「必要ないよ」
そう言い放ったハミルトンは、次のように続けた。
「誰にだって自分の意見を言う権利はある。だけど、僕は気になんかしていないよ。僕はレースに勝てたし、あのことに関してもかなりいい気分だよ」
■チームメートはハミルトンがいいとロズベルグ
ロズベルグは、アメリカGP決勝後にサーキットで催されたメルセデスAMGによるハミルトンの祝勝会にはほとんど顔を出さなかったものの、その後オースティンの街へと繰り出して行われたパーティーには遅れて出席し、カラオケで歌いながらの大騒ぎに参加したと伝えられている。
そのロズベルグは、『Bild(ビルト)』紙からハミルトンが自分のチームメートとなるのは「最悪のこと」だと語ったと聞かされると、次のように語った。
「僕は、ほかのチームメートはいらないよ」
「最高レベルのドライバーと戦うのはいい挑戦だからね」
■ロズベルグにチャンスは訪れるのか?
だが、かつてマクラーレンでミカ・ハッキネンが2年連続F1チャンピオンとなったときにそのチームメートを務めていた元F1ドライバーのデビッド・クルサードは、今のロズベルグの気持ちがよく分かると『BBC』に次のように語った。
「ただずっと頑張り続け、自分の時が来るのを待ち続けるしかないんだ」
「その時は決して来ないかもしれない。だが、ハミルトンだって何かを学び取り、速くなってきたわけだ。だからロズベルグも同じことをやるしかないね」とクルサードは結んだ。