立ち消えになっていた1チームあたりマシン3台体制の案が鈴鹿サーキットのパドックで再浮上した。レッドブルがF1を撤退するかもしれないのだ。
■レッドブルとフェラーリ
それまではレッドブルが最新『Aスペック』エンジンの獲得を巡ってフェラーリと交渉を重ね、かなり合意に近づいたと見られていた。
「レースはコース上で行うべき。交渉はあくまでビジネスだ」とイタリア『Corriere della Sera(コリエーレ・デラ・セラ)』紙に話すのはフェラーリのチーム代表、マウリツィオ・アリバベーネだ。
「メルセデス・ベンツと同じくわれわれもクルマとエンジンを販売している。交渉相手は、どこの誰だろうとかまわない。あとは需要と供給が満たされるかどうかだ。それで初めて契約は成立する」
■完全に消えたメルセデス・エンジン供給の可能性
その一方でレッドブル社主ディートリッヒ・マテシッツのよき友人ゲルハルト・ベルガーは、メルセデス・ベンツ再接近の可能性を指摘していた。
ところが27日(日)までに様相は明らかに変わる。
メルセデスAMGのトト・ヴォルフは、次のように言う。「こと細かに分析した結果、われわれのスタンスははっきりした」「やはり(レッドブルへの供給を)望まない」
「レッドブルはF1にとって好ましいブランドだが、まず第一に考えるべきはわれわれ自身だ」
レッドブルの代わりに彼らがパートナーに選んだのは、下位チームのマノー・マルシャだ。メルセデス・ベンツ子飼いのDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)ドライバー、パスカル・ヴェアラインにシートが用意されるというのだ。
「それですべてうまく行きそうだ」とヴォルフ。「まずは、パズルの全ピースが当てはまらなければならない。そして、ある程度は静観する。(現在エンジンを供給している)ロータスの動向もあるのでね」
ロータスとは2016年の契約も残っているが、財政的に苦しい彼らは破たんかルノーに身売りする以外に道はない。
■フェラーリのためらいにレッドブルは
従ってレッドブルの選択肢はフェラーリ以外にないが、ドイツ『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』誌の報道によるとフェラーリは最新型『Aスペック』の供給をちゅうちょしているという。
しかし「旧型『Bスペック』の供給を受けるぐらいならF1撤退を選ぶのがレッドブルの考え方だ」
「われわれの立場はフェラーリ、マクラーレン、あるいはウィリアムズと違う」とレッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは話す。
「われわれにとってF1活動は、マーケティング的に意味のあるものでなければならない。最高の道具があるのに手に入らないといった制限があってはならないのだ」
■息を吹き返した1チーム3台制
レッドブルとトロロッソのF1撤退が現実問題に発展するなら、1チーム3台体制はグリッドのすき間を埋める案として大きな実現の可能性を持つ。
ドイツ『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』誌は、フォース・インディアに代表される小チームも異論はないと伝えている。同チームのオットマー・サフナウアーは、費用をカバーするため「2,500万ドルないしユーロを(年間賞金に)追加して」もらえればといったようなことを話している。
大チームのメルセデスAMGにもメリットはある。
「ドライバー市場には有望な若手がたくさんいる」とヴォルフ。「彼らを競争力のあるマシンに乗せて、24のグリッドを実力あるドライバーで埋めればいい」
「だが再優先はあくまでレッドブルのF1残留だ」