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ジル・ド・フェランが分析する「F1人気低迷」の理由は?

2015年08月13日(木)17:21 pm

F1からファンが離れてしまったのは、あまりにもF1が完ぺきを求めたからかもしれない。

そう主張したのは、かつてアメリカのCARTやIRL(インディ・レーシング・リーグ)で活躍していたブラジル出身の元ドライバー、ジル・ド・フェランだ。

現在47歳となるド・フェランは、CART時代に2度年間タイトルを獲得。IRLに転向してからは、有名なインディ500でも優勝を飾った経歴を持っている。そして、2005年から2007年にかけてBARホンダのスポーティングディレクターを務めていたことでF1でもおなじみの人物だ。

ド・フェランがF1にかかわっていたころからほぼ10年が経過したが、この間、年々F1観戦者数が減少傾向にあり、再びファンの心をつかむために、再び大きくルールを改正すべきだとの議論も行われている。

こうした現状について、ド・フェランは、世界最高峰のモータースポーツであるF1は「自らの成功の犠牲者」となってしまったのだと考えている。

■技術的に高度になり過ぎたF1

「F1はこれからも最高峰自動車レースであり続けるだろう」

ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』にそう語ったド・フェランは、次のように続けた。

「だが、F1はあまりにも完ぺき過ぎ、人間的な要素に欠けているんだ」

「過去20年にわたって、F1には巨額の投資が行われてきたし、すべてのことがほぼ完ぺきだと言えるところにまで到達している。今や、ドライバーたちが目指すのはミスやトラブルに巻き込まれることを避けることになってきている」

「今、私はこういう疑問を抱いているよ。まだ、何か悪いところが残されているだろうか、とね。グリッドの後方にいるクルマでさえ、すごくよくできていると言わざるを得ないんだからね」

ド・フェランは、80年代や90年代のF1は今とは対照的に、不完全な怪物のようなマシンをてなずけるためにドライバーが大いに苦労していた時代だったと主張。だからこそ、あのころがF1における最高の時代だったと思えると次のように続けた。

■もっとドライバーの存在感を示すべきだ

「ああいう方向性に戻すことはいいことだと思う」

「我々の時代にも、誰もが完ぺきなレースをすることを夢見ていたよ。ポールポジションからうまくスタートを決め、何のミスも犯さずに走り、タイヤをいたわりながらもほかのクルマを周回遅れにし、そして優勝する。そんなレースをね」

「だが、残念ながら、観客はそういうレースを見たいとは思っていないんだ」

「だけど、もし必要なものがすべて自分の手の内にあり、そういう完ぺきなレースを計画することができるような状態になると、状況は危険な方向へ進んでしまう。それが、金がF1にもたらした災いなんだ」

「現在のF1ドライバーたちも懸命に完ぺきなレースをすることを目指して取り組んでいると信じているよ。外部からはよく見えない部分だけれどね。私は30年もレースをしてきたから分かるんだろうが、一般の観客には、それは難しいことだよ」

■まだ捨てたものではないF1人気

そう語ったド・フェランだが、それでもF1は世界で最も人気の高いモータースポーツであることには変わりはなく、あまり失望し過ぎる必要もないと次のように続けた。

「何か問題について話をするときは、いろんなことがそれに関係してくるものだからね」

「私は金曜日の朝にシルバーストン(第9戦イギリスGP)に向かったんだが、交通渋滞に巻き込まれてしまったよ。だから(まだそれだけの人気があるということは)、問題も手が付けられないほど大きいわけじゃないということだ」

■自分たちが主体性を持つべし

ド・フェランはさらに、最近世界中のファンを対象とした意識調査が行われたことに言及し、そこでファンが求めていることを参考にしようとするにしても、あまりにも大きくルールを変えようとするのは賢いやり方ではないだろうと次のように語った。

「ヘンリー・フォード(自動車会社フォードの創設者)が言った言葉があるんだが、彼が人々に何が欲しいかと尋ねたら、みんなは“速く走る馬が欲しい”と答えたんだそうだ。それに、もしスティーブ・ジョブズが人々に対して欲しいものは何かと尋ねていたとしたら、そのとき“スマートホン”が欲しいと答えた人などいなかったんじゃないかな」

「私が言いたいのは、ファンが何を望んでいるかを知るのは重要なことだが、実際にどういうものを提供するかを決めるのは、そのビジネスに携わっている人たちであるべきだということさ」とド・フェランは付け加えた。

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