先週、F1最高責任者のバーニー・エクレストンが、現在のF1オーナーである投資会社CVCがF1を売却する可能性があることを認めたと報じられていた。
『Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)』と『Reuters(ロイター通信)』は、F1の買収を検討しているのはNFL(アメリカンフットボール)のマイアミ・ドルフィンズのオーナーであるスティーブン・ロスが運営する企業であると指摘していた。その報道によれば、ロスにはカタールのスポーツ関連投資部門が後ろ盾としてついているという。
エクレストンも、「私が所有している株式も彼ら(CVC)と一緒に売却することになるだろう」とそうした報道を認める発言を行っていた。
■買収候補に複数の名前
だが、F1買収に動いているのは、そのロスの会社だけではなさそうだ。エクレストンも「3つか4つ」の投資家がF1買収に乗り出す可能性があると示唆していた。
レッドブル・レーシングやトロロッソのオーナーである世界的エナジー飲料メーカーのレッドブルも、F1買収に興味を持っているようだとしばらく前からささやかれている。
そして、『Sunday Times(サンデー・タイムズ)』が今回報じたところによれば、世界的テレビ会社として知られる『Sky(スカイ)』も、アメリカで通信会社リバティー・グローバルを運営する資産家のジョン・マローンの支援を受けてF1買収に名乗りを上げることになりそうだという。
その記事には、スカイとリバティーは「すでにCVCとの間で買収に関する非公式な話し合いを行った」との関係者のコメントが引用されている。
『Sunday Times(サンデー・タイムズ)』はさらに、トミーヒルフィガーやペペジーンズといった世界的ファッションブランドを展開しているカナダのローレンス・ストロールも「F1買収の入札に参加するのではないかとうわさされている」とも指摘している。ストロールの16歳の息子は現在フェラーリのドライバーアカデミーの一員であることもよく知られている。
「CVCはゴールドマン・サックス(投資コンサルティング会社)に、選択肢に関する助言を求めることにしている」と『Sunday Times(サンデー・タイムズ)』は付け加えている。
■投資家の視線はフォーミュラEに?
興味深いのは、こうしたF1買収に関するニュースは、CVCが昨年初開催され、先週末にロンドンで最終戦が行われたフォーミュラEシリーズの買収を検討していたと『Times(タイムズ)』紙が報じたのに続いて出てきたことだ。
だが、『Times(タイムズ)』によれば、CVCのドナルド・マッケンジー会長は、欧州競争法に抵触する可能性があることからフォーミュラEの買収からは手を引くことにしたという。
最近、F1の人気低迷が叫ばれている中、フル電動フォーミュラカーによるレースシリーズであるフォーミュラEや、ハイブリッドエンジンを搭載するプロトタイプによるレースが注目を集めるWEC(世界耐久選手権)は逆に人気の高まりを見せつつある。
かつて2010年にはF1に参入した経験を持ち、現在はフォーミュラEにヴァージン・レーシングを送り込んでいるリチャード・ブランソンは、フォーミュラEが数年のうちに「F1をしのぐものになるだろう」とまで語っている。
だが、F1とフォーミュラEの統括団体であるFIA(国際自動車連盟)のジャン・トッド会長は次のように主張している。
「彼ら(F1とフォーミュラE)がお互いに張り合う存在だと考えるのはばかげているよ」
「F1は魅力的だ。なぜこれほどネガティブな話題が多いのか不思議に思うよ。もっとよいものにしようという情熱はどこへ行ってしまったんだろう?」とトッドは付け加えた。