ルノーのF1プロジェクト責任者であるシリル・アビテブールが、ほほ笑みの表情を浮かべながらモナコを後にしたと伝えられている。
【結果】F1モナコGP決勝の順位、タイム差、周回数、獲得ポイント
今季ここまで、F1公式エンジンサプライヤーであるルノーは厳しい状況に置かれている。2015年仕様のパワーユニットも、パフォーマンスと信頼性の両面で大きな問題を抱えており、ワークスエンジンを供給しているレッドブルからは強い非難を受けていた。
■モナコで安定感を示したルノー
だが、先週末のF1モナコGPでは、レッドブルのダニール・クビアトが4位、ダニエル・リカルドが5位と今季最高位でのフィニッシュを達成。まだメルセデスAMGやフェラーリとの差はあるものの、再びレッドブルとルノーが上位争いにからめるまでになってきた。
ポイント圏内を走行しながらクラッシュに終わったトロロッソのマックス・フェルスタッペンを除けば、それ以外のルノーエンジン搭載マシンはすべてポイントを手にすることができていた。
「私は、本当にヴィリー(フランスにあるルノーF1プロジェクト本部)のことを考えているよ」と語ったアビテブール。ルノーF1エンジンの製造を担当するルノー・スポールでは、これまでの状態から脱するためにスタッフ全員が「すべてをなげうって」改善に取り組み続けてきていたのだという。
アビテブールは、『AFP通信』に対し、ルノーはモナコでの目標であった「信頼性とドライバビリティー」改善を達成することができたと語り、次のように続けた。
「ドライバーたちは一度も不満を口にしたりしなかったよ。彼らは望んだときに攻めることができていたし、タイヤをいたわることもできていた」
■ルノーF1復活にも一歩前進?
そのアビテブールにとって、モナコではほかにもうれしいことがあったかもしれない。
ルノーの最高経営責任者であるカルロス・ゴーンも先週末のモナコに顔を見せていた。ゴーンはそこでF1最高責任者のバーニー・エクレストンと会って話をしたと伝えられている。
ゴーンは、エクレストンに対し、ルノーとしてはレッドブルとトロロッソとの間で結んでいる2016年までのエンジン供給契約は最後まで守るものの、その後は自らのワークスチームを再び立ち上げる計画であることを伝えたのではないかとうわさされている。
■長いストレートのあるカナダには不安も
モナコではまずまずの結果を出すことができたルノーだが、モナコはもともとエンジンパワーによる差があまり出てこないサーキットであることは誰でも知っていることだ。
ワークスエンジンの供給を受けるレッドブルでは、長いストレートがある次戦カナダGP(6月7日決勝)では、ルノーエンジンも再び苦戦を強いられることになるだろうと見ている。
それだけではない。カナダでは、今季5台目のエンジン搭載により、グリッド降格ペナルティーを受けるドライバーが出始める可能性もあるのだ。
■ルノーにとってはライバルとの差を縮めるチャンスも?
だが、アビテブールはほほ笑みを浮かべながら、メルセデスとフェラーリがカナダでは「より保守的」な取り組み方をしてくるのではないかとほのめかした。
F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が最近、燃料流量のチェックをさらに厳密に行うと発表したが、これがルノーにとっては有利に働くかもしれない。
事実、F1関係者の間では、メルセデスやフェラーリでは、燃料流量制限ルールに違反していると指摘されることを避けるために、高度な燃料システムの使用を取りやめるのではないかとのうわさがささやかれている。それが事実であれば、カナダGPが行われるモントリオールのジル・ビルヌーブ・サーキットにおいても、ライバルメーカーたちとルノーの差が縮まる可能性もあるだろう。
「モントリオールを楽しみにしているよ」とアビテブールは締めくくった。