さまざまな疑念や憶測を呼んでいる22日(日)に起きたフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)のクラッシュだが、元F1ドライバーのジャック・ビルヌーブもあの事故に関しては「奇妙」な印象を受けていると認めた。
アロンソは、その事故の後4日間を病院で過ごし、26日(木)から同じバルセロナ-カタルーニャ・サーキットで始まった2015年シーズン前最後の公式テストを欠場している。
だが、マクラーレン・ホンダでは23日(月)夜に出した声明で、あれは「普通の事故」だったと強調。マクラーレンの総帥であるロン・デニスも26日(木)にアロンソは「全くの無傷だ」と断言している。
しかし、それにもかかわらず、アロンソが2週間後のF1開幕戦オーストラリアGP(3月15日決勝)に出場できるかどうかもいまだにはっきりしていない。
■低速走行のアロンソが風であんな事故を起こすとは考えにくい
多くのF1関係者が疑問を感じている今回の事故だが、1997年のF1チャンピオンであるビルヌーブも、この件に関しては表に出てきていない要素がたくさんあるのではないかと考えている。
「クルマのコントロールを失うことはあるものだ。技術的問題によるものもあれば、集中力が欠けたことによる場合もある」
イタリアの『La Repubblica(レプブリカ)』にそう語ったビルヌーブは、次のように続けた。
「風のせいでそうなるときもあるだろう。僕もインディアナポリス500では時速360kmで走行中に風に悩まされた経験もあるよ」
「限界ギリギリで走っていれば、ミスも犯しやすいものだ。でも、この事故に関する報道をたくさん読んだけれど、スピードはそれほど出ていなかったとされている」
「そういう状況でアロンソのようなドライバーがこうした事故を起こしたとすれば、それは奇妙な話に聞こえてしまうよ」
「もちろん、僕は医者ではないし、彼(アロンソ)とも話をしていない。だけど、あのクラッシュはそれほど激しいものではなかったと理解している。恐らく、衝撃を受けた角度が悪かったのかもしれないが、それは分からない。でも、この事故に関しては少しばかり困惑させられているよ」
そう語った43歳となるビルヌーブは、次のように付け加えた。
「謎に包まれた感じなのが気になるんだ。彼ら(マクラーレン)はさまざまなことを語っているものの、それが真実かどうかは誰にも分からないからね」
■F1のERS導入に異議をとなえるビルヌーブ
現在、マクラーレン・ホンダMP4-30を運転していたアロンソが、事故を起こす前に何らかの発作を起こしていたか、もしくは気を失ってしまうような状況となっていたのではないかとの憶測が飛び交っている。だが、デニスは、ホンダのエネルギー回生システムによってアロンソが感電していたのではないかという疑念に関しては、強くこれを否定している。
「僕には、そうだとも違うとも言えないよ。何にも情報を持っていないからね」とビルヌーブは続けた。
「でも、僕はこの“パワーユニット”というものが好きになれないんだ。ドライバーたちはクルマから降りる際には、感電の危険を避けるために安全だというライトが点滅するまで待たなくてはならないし、マーシャルたちも(感電防止用の)手袋を装着しなくてはならないんだ」
「進歩することに反対しているわけじゃないよ。だけど、それによってショーとしての要素に何かが加わるわけではないよね。だとしたら、それはばかげているし、不要なリスクを背負うことになる」
■アロンソは医者の忠告に従うべきだ
だが、アロンソが4日も入院しなくてはならなかった理由が、頭に受けた衝撃のためであったとすれば、アロンソは再び運転を始める前に完ぺきに回復しなくてはならないとビルヌーブは主張している。
「頭は、腕や脚とはわけが違うからね」とビルヌーブ。
「彼がメルボルン(オーストラリアGP)に姿を見せるのは間違いないと思っている。なぜなら、僕たちドライバーはクルマに乗りたいと思うものだからね」
「だけど、1999年のスパ・フランコルシャン(ベルギーGP)では、僕も頭にものすごい衝撃を受けたことがあった。そして、その20分後にはまたクルマに乗ったんだ。でも、1周したところでクルマを止めたよ。目の中に星がたくさん見えたからね」
「脳に関しては、2度目の衝撃を受けると致命的になる場合があるんだ」
そう語ったビルヌーブは、次のように付け加えた。
「フェルナンドはドライバーとしての才能と勇気を持ち合わせている。だけど、彼も医者の言うことは聞くべきだね」