F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)が2016年からF1出走に必要なスーパーライセンス発給要件を厳しくするとともに、新たにポイント制を導入することが明らかとなった。
だが、もしこの制度が以前から運用されていたとしたら、F1チャンピオンとなったドライバーさえ、デビューが認められていなかったかもしれない。
今回FIAがスーパーライセンス発給要件の厳格化に動いた背景には、今年17歳という若さでトロロッソからF1デビューを果たすことが決まっているマックス・フェルスタッペンの件があるのは明らかだ。まだ自動車運転免許も取得できない年齢のドライバーが世界最高峰モータースポーツのドライバーとなることに対しては各方面からさまざまな批判を呼ぶこととなっている。
だが、今週明らかにされたポイント制では、下位カテゴリーでの成績によるポイントなどが厳密に定められており、これをそのまま運用すれば現在すでにF1のトップドライバーとなっている者でさえ、その要件には当てはまらなかったはずだというケースも出てくるようだ。
■ヒュルケンベルグはOK、リカルドはNG
『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』のトビアス・グルーナー記者の計算によれば、例えばフォース・インディアのニコ・ヒュルケンベルグはF3でもGP2でもタイトルを獲得しており、スーパーライセンス発給の基準となる40ポイントを優に3倍も上回るポイントを獲得できていたことになるため何の問題もない。
だが一方で、2014年に4年連続F1チャンピオンであったセバスチャン・ベッテル(フェラーリへ移籍)を大きく上回る成績を残したレッドブルのダニエル・リカルドは、F1昇格前のフォーミュラ・ルノーやF3などでの成績では、ライセンス発給に必要な40ポイントには届いていなかったという。
■ライコネン、バトン、ディ・レスタもアウト
さらに、キミ・ライコネンやジェンソン・バトンというF1チャンピオンとなったドライバーでさえ、もし当時同じポイント制が導入されていたらF1デビューが認められていなかったことになる。
グルーナーは、「DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)のタイトルはまったく考慮されていないため、元フォース・インディアのドライバーだったポール・ディ・レスタもスーパーライセンスが受けられなかったことになる」と付け加えている。
■シューマッハの現役復帰も認められなかった?
さらに、仮に2016年からの新制度が2009年シーズン終了時に適用されていたとすれば、かつて7度F1チャンピオンに輝いた偉大な元F1ドライバーであるミハエル・シューマッハが2010年にメルセデスから現役復帰することも認められなかったはずだという。
これはFIAの新ライセンス発給要件では、F1経験ドライバーであっても、前年度に少なくとも5レースに出走した実績があるか、あるいは過去3年の間に15レースに出走した経験があることが必要とされるためだ。
グルーナーは、次のように締めくくっている。
「理論的には、F1チャンピオンとなった実績を持っていてもそれだけではスーパーライセンスを発給してもらう条件を満たさないということだ」