下位に沈む小規模F1チームが現実的に崩壊し始めた今、F1は危機的状況を迎えつつあり、そのDNAをあらためて再生させる必要に迫られている。
2010年にF1参入を開始した3チームのうち、すでにHRTは2012年シーズン限りで姿を消している。そして、残った2チームであるケータハム、そしてマルシャも破産管財人が介入するという末期的症状に見舞われている。
少なくとも、現時点では今週末のF1アメリカGP(11月2日決勝)、そして翌週末に行われるブラジルGP(11月9日決勝)は、9チーム18台のみで戦うことになることが確定的状況だ。
■現在のF1のあり方に疑問を呈す声
ケータハムのチーム創設者であるトニー・フェルナンデスは、先週末に自身のツイッターに次のように書きこんだ。
「F1は素晴らしいスポーツだ。バーニー(エクレストン/F1最高責任者)は素晴らしい仕事を成し遂げた。だが、F1は自身を見つめ直す必要に迫られている」
かつてHRTのドライバーを務めていたインド人ドライバーのナレイン・カーティケヤンも、「F1には金がかかり過ぎ、小規模チームが継続できるような状況ではないよ」と語っている。
数年前からF1が危機的状況を迎えることになると警鐘を鳴らしていた前FIA(自動車連盟)会長であるマックス・モズレーも『Times(タイムズ)』に次のように語り、暗に自分の後任であるジャン・トッドを批判した。
「どうやら、これまでの行いの報いがきているようだね」
■存続の危機を抱えているチームはほかにも
F1では今シーズン、大規模なコスト削減、あるいはコスト上限設定の案が大規模チームの反対によって否決されていた。そして、現状ではケータハムとマルシャが消える可能性が濃厚となったともに、ほかにも存続の危機にあるとされる小規模チームもある。
そのひとつであるザウバーの共同オーナーであり、F1初の女性チーム代表であるモニシャ・カルテンボーンは、イタリアの『La Stampa(ラ・スタンパ)』に次のように語っている。
「F1そのものも、破たんすることがないほど素晴らしいものではありません」
存続の不安を抱えていると考えられるチームはほかにもある。ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は、フォース・インディアは27日(月)までにメルセデスに対してエンジン代金の支払いを行う必要があり、それができなければケータハムやマルシャ同様にアメリカGPへの参加が危ぶまれることになるかもしれないと報じている。
そのフォース・インディアでチーム副代表を務めるボブ・ファーンリーは、多くのチームが破たんの危機を抱えていると認め、『Telegraph(テレグラフ)』に次のように語った。
「2010年に3つの新チームが参入したが、それらすべてが破たんしてしまった」
「最初から、行き詰まるのは目に見えていたんだ」
「F1の運営に対して口を出せるのはたった5チームだけだ。こういうことを続けていれば、我々はもっと多くのチームを失うことになるだろう」
■3台エントリー実現がさらに加速
こうした状況の中、今後もF1チームが減り続けるようであれば、3台エントリー制導入は避けられないだろう。現状ではレース主催者との間に、少なくとも16台を出走させるとの契約が行われているが、これ以上チームが減ることになれば現実的に参戦数が16台以下に減ることも十分に予想できる。だが、3台エントリーを可能とすれば、その契約に違反するリスクを軽減するも可能となる。
だが、F1、そしてレース主催者は、しばらくの間はグリッドに並ぶF1カーの減少を甘んじて受け入れるしかない状態だ。大規模チームでは3台エントリーを行うには少なくとも2か月前に正式な要請を受ける必要があるとしているためだ。
『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』は、エクレストンによってまず3台エントリーを開始するチームとしてあげられているのはフェラーリ、レッドブル、そしてマクラーレンだとしている。
そして、そのうちどこか1チームでもこれを断れば、その次にメルセデスAMGに声がかかることになりそうだと伝えられている。
このうち、フェラーリとレッドブルはすでにエクレストンに対して同意したと考えられているが、マクラーレンに関しては現時点ではちゅうちょしていると伝えられている。その理由は、その3台目のクルマの費用を誰が負担することになるのかが明確となっていないためだという。
こうした中、レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコは、3台エントリーに関しては問題はないと『Sport Bild(シュポルト・ビルト)』に対して次のように語った。
「ミルトンキーンズ(のファクトリー)にはまだ余裕があるし、クルマの数が少ないのに対し、我々には多くの素晴らしいドライバーがいるというぜいたくな悩みの解決にもつながるからね」
■遅いクルマが減っても誰も何も思わないとカーティケヤン
現在、チーム数減少という危機を迎えているF1だが、2005年にジョーダン、そして2011年と2012年にHRTから出走していたカーティケヤンは、遅いクルマが消えたからといってそれをさびしく思うファンはいないだろうと考えているようだ。
「オースティンでは18台となる」
そう語ったカーティケヤンは次のように続けた。
「でも、悲しいことに、レースが始まって最初の1周が事故もなくすぎれば、それからは誰も出ていないクルマのことをさびしいと思ったりはしないさ。それが真実だよ」