先週末のF1シンガポールGP(第14戦)決勝で、ランキング首位でレース開始を迎えていたニコ・ロズベルグに起こったトラブルを受け、メルセデスAMGでは今後信頼性向上を最優先課題としていくことになる。
【結果】F1第14戦シンガポールGP決勝の順位、タイム差、周回数、ピット回数
チームメートであり、今季のF1タイトルを争うライバルのルイス・ハミルトンに22ポイント差をつけてシンガポールGP決勝に臨んだロズベルグだったが、電気系トラブルによってリタイアを喫し、優勝して25ポイントを獲得したハミルトンにランキング首位の座を明け渡してしまった。
ロズベルグに起こったトラブルはステアリングホイールの電子制御系のもので、ロズベルグはそれによって無線やDRS、そしてギアチェンジなどが正常に作動しないという問題を抱え、最終的にリタイアを余儀なくされていた。
■めったにないトラブルに見舞われたロズベルグ
メルセデスAMGのビジネス担当エグゼクティブディレクターであるトト・ヴォルフは、今回のようなステアリングの電気接続系に関するトラブルはめったに起こるものではないと認め、『Welt(ヴェルト)』に次のように語った。
「メカニックが私に語ったところによれば、同じものをホンダ時代から使っており、これまでこうした問題が発生したことはなかったということだ」
2008年シーズン限りで撤退したホンダのチーム資産を前メルセデスAMGチーム代表のロス・ブラウンが引き継ぎ、ブラウンGPとして2009年のF1タイトルを獲得。そのチームをメルセデスが買収して、現在のメルセデスAMGへと至っている。つまり、それほど長く使っていた電気系システムに今回突然問題が発生したというわけだ。
ともあれ、今回ロズベルグがノーポイントで終わったことで、今では逆にハミルトンが3ポイントのリードを持って残りの5レースに臨むことになった。そして、そのうちの1レースである最終戦はポイント2倍システムが適用されることになっている。だが、そのハミルトンも、今季すでにいくつかの信頼性の問題を経験してきている。
■メルセデスAMGの信頼性に付け入るチャンスをうかがうレッドブル
21日(日)のシンガポールGP決勝が始まる前には、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、ポイントランキング3番手につけているダニエル・リカルド(レッドブル)には今季のF1タイトル獲得のチャンスはないだろうと語っていた。だが、シンガポールGPでロズベルグがノーポイントで終わったことにより、これまで首位と72ポイントも離されていたリカルドも、一気にトップとの差が57ポイントに縮まってきている。
レース後、ホーナーは次のように語った。
「彼ら(メルセデスAMG)の信頼性の問題によって、我々もタイトル争いに加わり続けられるといいだろうね」
メルセデスAMGの技術部門エグゼクティブディレクターであるパディ・ロウも、信頼性の問題がメルセデスAMGとして取り組むべき課題であると認め、次のように語った。
「今年の初めからチーム内で話をしていたんだ。我々のクルマが圧倒的に強いことが分かったときからね。クルマの故障によってF1タイトルが決してしまうようなことにならないかというのが私の一番大きな不安だったんだ」
「そんな心配はないなどと強がるつもりはないよ。そうではないからね。それが我々の弱点のひとつなんだ」
そう述べたロウは、次のように付け加えた。
「それを改善するために、目に見えない部分でも多くの作業を行っている。だが、これは長期的なプロジェクトなんだ」
■タイトルのゆくえが信頼性によって決まってはならない
現実的には、メルセデスAMGが今季のドライバータイトルもコンストラクタータイトルもほぼ手中に収めていることは間違いないことだろう。だが、ドイツが誇る世界的な自動車メーカーであるメルセデスにとっては、その勝ち方も重要だ。
「今回のトラブルによって、ニコはランキングトップの座をわずか1レースで失ってしまった」とロウは続けた。
ロウは、ハミルトンかロズベルグが最終的にタイトルを勝ち取るにせよ、それが信頼性の良しあしの結果で決まってしまうことになるのは「我々にとって全く満足いかないことだ」と主張。
ヴォルフもそれに同意し、次のように結んだ。
「我々は、F1タイトルが、どちらか片方のドライバーのクルマが壊れることによって、別のドライバーに転がり込むようなことにするわけにはいかない」