今季のF1タイトル争いを繰り広げているAMGのニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンがついにF1ベルギーGP決勝で同士打ちを演じてしまった。
【結果】F1第12戦ベルギーGP決勝の順位、タイム差、周回数
まだレースが開始されてからほんのわずかな時点で、先頭を走るハミルトンを追い抜きにかかったロズベルグが、ハミルトンの左リアタイヤにフロントウイングをヒットさせてしまったのだ。
ハミルトンはパンクしたタイヤをひきずるようにしながらピットへ戻り、いったんレースを再開したものの、結局終盤にリタイアすることを選択している。
このロズベルグの行為に不満を持ったファンは、表彰台に上ったロズベルグにブーイングを浴びせ、その声はロズベルグが2位のトロフィーを受け取ったときに最高潮に達していた。
表彰台の上でドライバーへのインタビュアーを務めていたエディー・ジョーダンは、観客たちに対し、そうした行為は正しいことではないとたしなめていた。レッドブルのクリスチャン・ホーナーも、あの接触は「F1タイトル獲得を目指す2人のドライバーが同じラインを走ろうとした」だけに過ぎないとコメントしている。
ジョーダンに表彰台で、その接触事故について質問を受けたロズベルグは、「まだテレビでそれを見ていないから、今はコメントしないほうがいいと思う」と答えると、次のように付け加えた。
「それを見て、それから話をするよ」
ロズベルグから陳謝の言葉は出てこなかった。だが、ハミルトンは予想にたがわず怒り心頭だ。
「僕があのコーナーは押さえていた。あれは僕のラインだったんだ。なぜ彼(ロズベルグ)が僕に当たってきたのか分からないよ。でもきっと彼は今夜満足してここを去ることができるだろうね」
そう語ったハミルトンだが、2人の関係は、すでにモナコの予選でロズベルグがミスをしたことでポールポジション獲得のチャンスを失ったときから最悪の状態に陥っている。
ハミルトンは、ロズベルグとの関係について次のように続けた。
「モナコのときより悪くなったということはないよ。あのとき以上に悪くなることはないからね」
今回は、ニキ・ラウダ(非常勤会長)やトト・ヴォルフ(ビジネス担当エグゼクティブディレクター)といったメルセデスAMG首脳陣も即座にハミルトンの擁護に回り、明確にロズベルグを非難している。
ヴォルフは、イギリスの『BBC』に次のように語った。
「当然、受け入れられるものじゃない」
「我々はこうした状況に関してしばしば話し合いをしてきた。わずか2周目だというのに、ああいう危険な追い抜きを試みてどちらのクルマにもダメージを負わせるようなことはしてはならないんだ」
「これは彼ら2人の戦いにおいて、そしてチームにとっても決定的な事態だ。ルイスはすごく怒っているよ」
そう語ったヴォルフは、「だが彼(ハミルトン)はすぐに立ち直るだろう」と語るとともに、「対処していくよ」と付け加えた。
ロズベルグはすぐに陳謝の言葉を発することはなかったが、ラウダはちゅうちょなく「ルイスに気の毒だとしか言えない」と語り、次のように続けた。
「2周目にニコがルイスにぶつかったことは受け入れられるものではないとしか言えない。まったくもって受け入れられないよ」
かつて3度F1チャンピオンに輝いた伝説的元F1ドライバーでもあるラウダは、次のように付け加えた。
「私は、彼らはもっと賢明だと思っていたんだが、そうではなかったことは明らかだ」
先ほどのヴォルフのコメントにもかかわらず、ハミルトン自身は今季のタイトル争いにおいて大きな痛手となった今回の一件からすぐに立ち直れるという確信はないようだ。
「ロズベルグのクルマがリタイアすることがあまりないということを考えれば、彼にとっていいシーズンになりそうだね」
「いろんなことが頭の中をよぎっているよ。多分、今年は僕のためのシーズンではないのかもしれない。でも僕としてもただそれを見過ごすわけにはいかないよ。僕には素晴らしいクルマがあるし、素晴らしいチームもついている。僕はこれからも戦い続けるよ」
そう語ったハミルトンだが、ヴォルフやラウダが公然とロズベルグを非難したことがなんらかの効果をもたらすことはないだろうと考えている。
「学校へ行っていたころのことを思い出すよ」とハミルトン。
「先生たちはいろんなことを言うんだけど、実際には何もしようとしないからね。競技委員だって何もしなかったし、僕は今では彼に30ポイント(正確には29ポイント)も離されてしまった。だから、もうやみくもに頑張るしかないね」