F1関係者の中には、ニコ・ロズベルグ(メルセデスAMG)が2014年シーズンのF1タイトルを獲得しそうだと考える者が増えてきているようだ。
純粋な速さという点では、チームメートのルイス・ハミルトンのほうが上だと考える者が多い。だが、現在、チャンピオン争いをリードしているのはロズベルグのほうだ。先週末のF1オーストリアGP(第8戦)で勝利を飾ったロズベルグは、ハミルトンに対するリードを29ポイント差にまで広げている。
■ロズベルグの強みは一貫性
今季はハミルトンが4勝しているのに対し、ロズベルグが優勝したのは3回だ。それにもかかわらず、これほど差が開いた原因は、ハミルトンがこれまでの8レースで2回リタイアしているのに対し、ロズベルグはすべてのレースにおいて2位以上でフィニッシュしていることがあげられる。
元F1ドライバーで、現在は解説者を務めるクリスチャン・ダナーは、『Bild(ビルト)』紙に対し、「これほど一貫性のあるドライバーを見たのはミハエル・シューマッハ以来だ」とロズベルグを評価している。
また、かつてマクラーレンやレッドブルで活躍した元F1ドライバーのデビッド・クルサードは、ロズベルグが今年これほどまでに一貫性のある成績を残せている理由のひとつには、「戦略」的な部分もあるのではないかと考えている。
「恐らく、彼は予選ではそれほどリスクを負わないようにしているんじゃないかな。ミスを犯す危険を最小限にして、どちらかと言えば堅実なやり方で臨んでいるようだ」、とクルサード。
■切れ味も増した今年のロズベルグ
だが、それだけではない。やはり元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーは、これまではその「天使のような顔」にだまされていたものの、今年のロズベルグにはその性格に新たに鋭さが加わったように感じているとしている。
1997年のF1チャンピオンであるジャック・ビルヌーブも同じように感じているようだ。
「みんなと同じように、僕もこの2人の中ではハミルトンのほうがすごいと思っていたよ。だけど、今シーズンのニコは、さらにその上をいくすごさを示している」
『Bild(ビルト)』にそう語ったビルヌーブは、次のように続けた。
「過去3レースにおいて、彼は後ろからの攻撃に対して攻め返すこともできるというところを示してきた」
「それこそ、このスポーツでタイトルを取るためにやらなくてはならないことなんだ」
■勝ち続けるしかないハミルトン
だが、現時点でロズベルグに29ポイントのリードを許したとはいえ、まだハミルトンをチャンピオン候補からはずすことはできない。
オーストリアGP後に、イギリスの新聞には次のようなハミルトンのコメントが紹介されていた。
「気を引き締めてかからないとね。じゃないとニコにやられてしまう」
「ポイントゼロのレースを2つやってしまった。だから、また本来の形を取り戻す必要があるよ」
だが、クルサードは、ロズベルグが慎重にミスを避けてきている以上、ハミルトンはもはや同じようにミスを防ぎ、リタイアのリスクを避けるといったやり方を取るだけでダメだろうと考えている。
「ポイント差が大きくなっているし、ハミルトンが戦い方を変えても難しいだろう。とにかく、彼はレースで勝ち続けるしかないんだ」
そう語ったクルサードは、次のように付け加えた。
「だが、もしロズベルグがリタイアするようなことがなければ、今の差を埋めるにはかなり時間がかかるだろうね」