NEXT...F1開催スケジュール

中野信治、2013年の悔しいル・マン24時間とWEC富士レース富士戦を振り返る

2013年12月31日(火)17:14 pm

2013年のWEC(世界耐久選手権)でル・マン24時間と富士6時間耐久レースに参戦した中野信治が、TopNewsへ今シーズンを振り返ってくれた。

昨年に続いて今年もル・マン24時間に参戦。所属チームは、昨年のWEC富士戦を共に制したデルタADRだった。しかし、結果はチームメートのクラッシュによるリタイア。レース後には「本当に悔しい」とレース後にツイッターで悔しさをにじませていた中野だが、チームとの交渉なども自分で行っているだけに、ル・マン終了時点で出場が確定していなかった富士戦に向けても、このリタイアは打撃になったという。

「チームメートのクラッシュがあって最後はリタイアしましたが、いい終わり方ではなかったので、もちろん悔しい思いもしていますし、いろいろな想(おも)いがありました」

「その後は富士に向けてどうしようかと考えました。僕にとっては流れが大事なんです。支援いただいている方にお願いする部分でもそうですし、僕のモチベーションにも言えることです。やはり、1つが良い結果でないと、応援してくださる方もワクワクする感じを与えられません。ただ単に『(レースに)出たいので応援してください』では、支援してくださる方々も興味を持ってくれないので、結果が出ないと僕がレースを出るためのハードルも高くなっていきます」

「チームには僕のドライバーとしての価値も理解してもらっているので、いくつかのチームと話をしていましたが、去年の富士で勝っていたということもあり、このチーム(デルタADR)に賭けてみようと思いました。メールと電話でチームとの交渉を続けながら、日本側で僕がやらなければいけない交渉もして(身体作りを含めた)準備を続けていました」

「去年の富士(での優勝)がなければ、今年のル・マンはなかったかもしれないので、山あり谷ありでしたが、自分の足で動いて、日本側で支援してくださる方を見つける努力も当然しました。円安で日本人ドライバーには厳しい中でどうするかと考えながらチームと交渉していましたが、大変でしたね」

通常レーシングドライバーという仕事は、サーキットで走っている以外なかなか知ることができないが、中野はF1やインディ500を経験したプロフェッショナルな国際レーシングドライバーとして、国際レースに出るために普段から様々な仕事をこなしていることがわかる。

そして今年もWEC富士戦へデルタADRから出場することが決まった中野だが、今年は富士戦の前に同じく富士スピードウェイが舞台になったアジアン・ル・マンにチームタイサンから参戦することも急きょ決定。しかも、ほとんど経験のないGTクラスへの出場だった。

「僕の新しい経験として、すごく良い経験ができて感謝しています。実際にレースを楽しめました。完走するには意外といろいろなことがあるので、完走できたことは良かったと思っていますし、”流れ”は悪くないなという感じでした」と振り返る中野。しかし、GTマシンとWECのプロトタイプマシンの違いにおどろく面もあったという。

「箱車(GTマシン)の経験はほとんどないに等しいので、良い経験ができました。富士をレース前に走ることができましたし、良かったのですが、WECの初日に(LM)P2の車(プロトタイプマシン)に乗ると、ブレーキングポイントがかなり早くなっていて、『あれ?おかしいな』と思いました」

「気がついたら感覚がGTになっていました(笑)」

「(GTの)経験がないので、1回でもやっていれば(感覚の)違いがこんなものかと分かると思うのですが、GTに乗るのが今回初めてなので、あまりにも違っていて新鮮でした」

こうして迎えたWEC富士戦。チーム(デルタADR)からの信頼も厚い中野が中心になって、「イニシャル(初期段階)のセットアップを外していた」”思うように走らないマシン”から、経験豊富でプライドも高いエンジニアを説得しながら”戦えるマシン”に仕上げていった。経験の少ない若いチームメートやエンジニアと話し合いながらチームとマシンをまとめ上げ、誰もが走りやすいマシンに仕上げていくのは中野の真骨頂だ。しかし、無情にも決勝は強い雨に見舞われて赤旗中断。ここでチーム側は当初の作戦を変更し、レースが再開されれば中野で優勝を狙いに行く予定だった。

「ドライバーが3人乗らないといけないので、チームとしては1番速いドライバーを乗せたいと考えるものです。グリーンフラッグが出てから(ドライバー)交代してしまうとロスになるので、僕が(作戦変更を)提案しました」

「セーフティカーランが始まった瞬間にスタートドライバーが出ていくので、ピットに入って2人目を乗せるんです。セーフティカーが最低でも4周は走ると予想していたので、その間に2人目が2周走って僕に交代すれば、セーフティカー中にドライバー交代をできて、僕に交代したところでレース再開すれば最後まで走れるという作戦でした」

「勝つにはそれしかないという話になり、『よしシンジ行け!』ということになりました」

結局、レースは再開されることなくセーフティカー導入のまま終了。決勝を走ることなくレースを終えた中野だが、応援してくれたファンに申し訳なく思うと振り返った。

「見に来てくれる方もそうですし、今回は友人やスポンサーの方を含めて100人近くが来てくれたので、そういった方たちが雨の寒い中で観戦するというのが申し訳なかったです。なんでこの日に降るんだとうらめしく思いましたね」

「僕は(晴れでも雨でも)どっちでもレースをできるので、見に来てくれる方にどう楽しんでもらうかをいつも考えているんです。みんなが楽しんでくれて、良い雰囲気で終え、レースのファンが増えるというのが望むべきことだと思うし、望んでいることでもあります。それを考えると残念でしたね」

不完全燃焼のまま今シーズンを終えることになった中野だが、ずばぬけた行動力ですでに来季へ向けた準備を進めている。

前後の記事
最新ニュースをもっと見る  >
TopNewsの最新ニュースが読めるよ!
facebookフォロー Twitterフォロー RSSでチェック