ピレリが、F1カナダGPに変更したタイヤの導入を見送り、単にテストを行うだけという形に変更したのは、ほぼ間違いなく、一部のチームがそれに対する同意を拒んだことによるものだ。
レギュレーションには、唯一のF1公式タイヤサプライヤーであるピレリがタイヤに変更を加えることができるのは、安全上の理由がある場合、もしくはすべてのチームの合意が得られた場合に限られると記されている。
しかし、カナダGPでは剥離(はくり)減少が発生しにくいように改良されたタイヤが新たに導入される予定だと伝えられていたものの、ほぼ間違いなくいくつかのチームがこれに反対したことが29日(水)に明らかになった。
オーバーヒートを防ぐために、これまでのスチール製に換えてケブラー繊維製のベルトを内部に施したタイヤは、カナダでは単にテストのみに使用されることとなり、ピレリとしてはその次のレースとなるF1イギリスGP(6月30日決勝)でそのタイヤをデビューさせたいと望んでいる。
これに関し、ロータスのチームオーナーであるジェラルド・ロペスは、29日にドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』に次のように主張した。
「まだ先にテストもしていないタイヤでレースはしないよ」
「それに、現在の力関係を変えてしまうようなタイヤは容認できない。それは単に不公平となるだけだ」
「それまでタイヤに問題を抱えていたチームが突然勝つようになれば、家でF1を観ている人たちはだまされたような気になってテレビを消してしまうよ」
さらにロペスは、安全上の理由による変更だということも受け入れられないと、次のように続けた。
「タイヤのトレッドが失われるのは、バースト(破裂)よりも安全だ」
「私は、それが(安全上の観点から)それほど大きな問題だとは思えない。やはりすべては金と政治的なものによるものだ。だが、観客はバカじゃないよ」
「もしわれわれがサーキット上ではなく、事務所や委員会だけで決定を行っていけば、いつの日か観客はひとりも残らなくなってしまうだろう」
ロペスはさらに、ピレリは受け身に回らず、もっと堂々とすべきだ、と次のように付け加えている。
「実際のところ、彼ら(ピレリ)は立ち上がって次のように言うべきなんだ。われわれはいいタイヤを造った。それは要請通りのものだ。だから、チームはそれに合わせるべきだし、それに合うクルマを造るべきだ、とね」