アラン・プロストは、F1のドライバーズタイトルの獲得回数において、現時点ではミハエル・シューマッハの7回、ファン・マニュエル・ファンジオの5回に続く、単独3位となる4回という記録を持っている。だが、今年、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)がその記録に並ぶことになるかもしれない。
事実、その可能性はF1モナコGP(第6戦)で一段と高くなっている。現在ポイントランキング首位のベッテルは、レース前にはわずか4ポイントであった2番手キミ・ライコネン(ロータス)との差を21ポイントにまで広げている。
ベッテルが今シーズンにも、プロストの持つ記録に並ぶことを気にしているかとドイツの『Welt(ヴェルト)』紙に問われたプロストは次のように答えた。
「私は常に自分自身に対して、自分の力で変えられるものは変えようと言ってきた」
「そして、自分自身でどうしようもないことは気にしないよ。僕にどうしろって言うんだい?」
「彼(ベッテル)はそのうち私を追い越すだろう」、と付け加えたプロストは、さらに次のように続けた。
「ミハエル・シューマッハにグランプリ勝利数記録を抜かれたときは、ちょっと違ったよ」(※)
「それはうれしいことではなかった。もし自分がトップにいれば、その位置にとどまりたいと思うものだからね」
「でも、もし自分がF1の歴史において成功したドライバーの、2番手か3番手、あるいは4番手にいるのであれば、何も変わることはないよ」
プロストは、ベッテルを高く評価していることを認め、25歳のベッテルには「重大な」弱点は見いだせないと次のように続けた。
「ここ数年、彼が勝てるのは最前列からスタートしたときだけだと言われ続けていた。だが、昨シーズン彼はそれに反論した」
「昨年の夏、彼と話したことがある。フェルナンド・アロンソ(フェラーリ)が彼よりもかなり前からスタートする場面でね。私は彼に、“やれるか?”と聞いた。“ええ、間違いなく”と答えたよ」
「偉大なドライバーになるためには、こういった信念が必要なんだ」とプロストは付け加えた。
しかし、そのプロストも、ベッテルとチームメートのマーク・ウェバーの関係が悪化していることが、その勢いを損ねる可能性があることも認めている。
自身もかつて、アイルトン・セナとの間に悪しきライバル関係があったことで知られているプロストは次のように続けた。
「そう、そういうことも起こる。私もナイジェル・マンセルのせいで1990年のタイトルを失った」
「そういうことはすごく簡単に起こってしまうものだ」
レッドブルが、来シーズンはベッテルと、彼の友人であるキミ・ライコネン(ロータス)によるドライバーラインアップとすることを検討していると報じられているが、それもそういう理由によるものだ。
しかしプロストは、「だが、もしチームメートとタイトル争いをしているときに、彼は友人でいられるだろうか? 私の経験によればまったく逆だね」と主張している。
(※)プロストは歴代最多となるF1GP通算51勝の記録を有していたが、2001年にその記録をミハエル・シューマッハ(当時フェラーリ)に破られている。シューマッハはその後その記録を91勝にまで伸ばしている。