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【F1決勝レースレポート】レッドブル・ホンダのアルボン初表彰台!初開催ムジェロはクラッシュ3回、赤旗2回、完走12台の超サバイバルレース!

2020年09月14日(月)1:21 am

F1初開催となった第9戦トスカーナGP(13日決勝レース、ムジェロ・サーキット)決勝レースは、最初の9周で2度の多重クラッシュが発生、2度の赤旗中断と大荒れの展開となった。

●【決勝レース結果】2020年F1第9戦トスカーナGP決勝レースのタイム差、周回数、ピット回数

レースを制したのはポールポジションからスタートしたルイス・ハミルトン(メルセデス)が今季6勝目、通算90勝目を飾った。そして3位には、アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)が自身初、そしてタイ人としても初の表彰台を獲得した。アジア人としては小林可夢偉以来の表彰台となった。

■1度目のセーフティカー導入

まずスタートでマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が加速が伸びず大きく出遅れた。無線で「ノーパワー!!!」と悔しそうに叫びながら、一瞬にして中団グループに飲み込まれていった。このポジションに落ちてしまったことで次の災いに巻き込まれることになる・・・。

1コーナーを抜けた後に中団グループで多重クラッシュが発生した。前戦F1初優勝のピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)は狭いコースの真ん中を走っていると、左右から挟まれ逃げ場がなくなり、キミ・ライコネン(アルファロメオ)とロマン・グロージャン(ハース)に接触して3台はコースアウト。前を走っていたフェルスタッペンは後ろから追突され、グラベルから出られなくなってしまった。ここでホンダF1の2台のみがリタイア。1回目のセーフティカーが入った。

■ローリングスタート直後に2度目のセーフティカー導入、赤旗中断

セーフティカー先導のままレースは周回を重ねていたが、7周目のレース再開直前になってセーフティカーのランプが消え、先頭のバルテリ・ボッタス(メルセデス)含め集団になってスロー走行しながらホームストレート上でタイヤを温めるため激しくウェイビングをしていた。この時点で各マシンの間隔はかなり接近した状態だ。

7周目の再スタートで先頭グループはそのまま加速していったが、後方グループではコントロールラインを越える前にクラッシュ発生。ニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)、ケビン・マグヌッセン(ハース)、アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)、カルロス・サインツ(マクラーレン)の4台が多重クラッシュし、またすぐにセーフティカーが導入された。原因は、スタートライン前の加速するタイミングの駆け引きだ。

リプレイ映像では、マグヌッセンがまだ加速していない中、真後ろにいたラティフィが勢いよく加速し、追突しそうになったマグヌッセンを避けるため勢いよく左側に抜けた。するとやはり加速していたジョビナッツィが、ラティフィが突然左に避けたことで目の前に現れたスロー走行中のマグヌッセンを避けきれず追突。その後ろで加速していたサインツもそこに突っ込む形で4台が多重クラッシュしてしまった。

サインツは「なんてこった、すごく危険だ」と述べ、運良く巻き込まれなかったグロージャンは「ばかげてるよ!こんなの見たことない」と言い放つ。ハミルトンは「セーフティカーのランプが消えるのが遅すぎるからこうなるんだ」とレース運営側を非難。ホームストレート上には4台のマシンのデブリが散乱したため、赤旗中断となった。

赤旗中断中は、ピットレーン上でのタイヤ交換やパーツ変更などが許されているため、全員がタイヤ交換をする。またアルボンがフロントウィングを交換。エステバン・オコン(ルノー)はブレーキのオーバーヒートでリタイアとなり、この時点で13台となった。

■2回目のスタンディングスタート

レースは25分後の日本時間22時55分からスタンディングスタートで再開する。

ボッタス、ハミルトン、ルクレール、アルボン、ストロール、リカルド、ペレス、ノリス、クビアト、ラッセルというトップ10だ。

1周のフォーメーションラップを経て、10周目からとなる再スタートでは、メルセデスの2台が1コーナーでバトルとなり、ハミルトンがアウト側から前に出た。

アルボンはスタートに失敗し4番手から7番手に落ちたが、1コーナーで1台ずつ、確実にオーバーテイクしながら上位へ戻っていく。

■苦しいフェラーリ「プランC」

3番手はフェラーリのルクレール。このまま後続を抑えればフェラーリのF1参戦1000GP目を表彰台で祝えると思われた。しかし、しばらく3番手をキープしたもののペースが上がらず、18周目の1コーナーでストロールにオーバーテイクされると、その後、次々とオーバーテイクされ7番手に後退してしまう。

ルクレールは無線で「最低のタイヤだ」と訴えると、フェラーリは「プランCはどう?」と尋ねる。するとルクレールは「失うものはないから早く決断して」と促す。そして22周目にピットインすると、ハードタイヤに交換した。これで13番手の最後尾に落ちた。地元で少しでも良い結果を残したいフェラーリ、この戦略「プランC」が吉と出るか?

■メルセデス内のタイヤ戦略の駆け引き

先頭のハミルトンは順調に走行しているが25周目、「このタイヤセットは良くない。リヤタイヤが滑る」と訴える。しかし、タイムはまったく落ちていない。ハミルトンお得意の、無線で相手を混乱させる戦略か?

2番手を走行中のボッタスは同じ戦略ではハミルトンに勝てないと判断したのか「次のタイヤ交換ではルイスと違うタイヤにしてほしい」とチームに要求する。この場合、先にハミルトンがピットインしなければこの戦略は成立しないため、ボッタスはできるだけ長くコース上に残れるよう走らなければならない。

しかし31周目、ボッタスは無線で「左フロントタイヤが終わった。バイブレーションがひどい」と訴えると、チームは「ボックス!ボックス!(ピットに入れ)」と伝え、ピットインさせる。ボッタスはハードタイヤに交換した。やはりタイヤマネージメントはハミルトンの方が上手いようだ。

その翌周、ハミルトンもピットイン。当然ボッタスと同じハードタイヤに交換して、同じ戦略にそろえた。この間、ボッタスはトラフィックに引っかかり、ハミルトンとは4秒差から7秒差に拡がってしまった。

35周目、12番手グロージャンに最後尾ライコネンが1コーナーでアウト側から仕掛ける。2台はサイド・バイ・サイドで重なるようにターンインし、アウト側のライコネンの左フロントタイヤと、イン側のグロージャンのフロントウィングがやや接触し、少し白い煙が出た。

37周目、8番手ルクレールにクビアトが迫ると、ルクレールはピットイン。ミディアムタイヤに交換した。これでベッテルの後方となる11番手に下がった。

39周目、メルセデスはボッタスへ「右フロントタイヤはゼロだった。左フロントタイヤは20%だった」と先ほどのタイヤの摩耗度を解析した結果を伝える。「左フロントタイヤが終わった」と伝えていたボッタスと真逆の回答だ。するとボッタス「セーフティカーが出るといいんだけど」と弱気の発言。ハミルトンに追いつけないと感じているようだ。

ハミルトンは無線で「縁石避けていたら遅いよ」と伝えると、メルセデスは「ボッタスの最初のセットのタイヤに問題が出ていた。2台とも同じ指示だよ」と伝える。メルセデスはタイヤを長く持たせるために2台に縁石を避けて走るように指示していた。

■大クラッシュで2度目の赤旗

44周目、ストロールが大クラッシュ!ストロールは全開の連続高速ターン、アラビアータの2つ目、ターン9で突然「パンクした」ようで、ハイスピードのままクラッシュ。タイヤバリヤも衝撃で激しくめくれていることから、ここで2度目の赤旗中断となる。

ストロールのマシン左側は激しく損傷しており、ストロールは意識はあるものの衝撃が強かったのかしばらく動けない。しかし自力でマシンを降りてスクーターの後ろに乗ってピットへ戻った。

セーフティカー導入を願っていたボッタスはタイミングよくピットインしてタイヤ交換。しかしピットアウトすると目の前にはセーフティカーがいた。結局、セーフティカーによってトップが入れ替わることはなかったが、これでまたレースはリセットされることになった。

■3度目のスタート

46周目はフォーメーションラップ、そしてスタンディングスタートで再スタートとなる。47周目から残り12周のスプリントレースになった。コース上には12台のみ。ポイント獲得のチャンスは極めて大きく、後方の争いも激しくなりそうだ。

そしてスタートすると、リカルドが素晴らしいスタートで2番手へ浮上。トップを狙いたいボッタスは最大のチャンスでスタートに失敗し3番手に落ちるが、翌周リカルドをオーバーテイク。ハミルトンを追撃する。

ライコネンには5秒タイムペナルティが出た。セーフティカーが導入された際に、白線をカットしてピットエントリーしたためだ。ベテランらしからぬミスだが、無線で伝えられたライコネンは「なぜだ!」と苛立ちを隠せない。

アルボンも再スタートを決め、51周目の1コーナーではリカルドをオーバーテイクして3番手に浮上。これで今度こそ自身初の表彰台が現実味を帯びてきた。アルボンはボッタスの1秒後ろについて、2位を狙う。しかし2台はあっという間に2秒差まで拡がる。

■アルボン、初表彰台獲得!

最終的に、ハミルトンは90勝目をポール・トゥ・ウィンで達成。ファステストラップも獲得した。ボッタスは無念の2位。アルボンは自身初、そしてタイ人として初表彰台を獲得した。これまでのタイ人の最高位はアルボンとプリンス・ビラの4位だった。

あと一歩で表彰台を逃したのはリカルド。ルノーのボス、シリル・アビテブールは、もしリカルドが2016年にF1に復帰してから初表彰台を獲得したら、タトゥーを入れるとリカルドと約束していたが、残念ながら表彰台を逃し複雑な心情だろう。

このグランプリ前、チームを離れると発表したペレスは、5位フィニッシュ。

地元フェラーリは、ルクレールが8位、ベッテルが10位だった。ファンの前で良いところは見せられなかったものの、今のフェラーリの力を考えればダブルポイントフィニッシュは悪くない結果だ。

2000年にここムジェロ・サーキットで、現チームを運営するザウバーからF1の初テストをしたライコネンは、8位でチェッカーフラッグを受けたものお、5秒加算ペナルティを科せられ9位フィニッシュ。

完走12台でポイントを逃した2台はラッセルとグロージャンだった。ラッセルは自身初のポイント獲得を狙っていたが、残念ながらあと1つ届かなかった。

優勝したハミルトンはレース後インタビューで「まるで1日に3レースしたみたいだよ!信じられないくらいタフだった。このコースは大変だし熱かったし、今週末中ずっと速かったバルテリは後ろにいたし、簡単ではなかった。再スタートする時は集中し直さなければならなかったし、本当に本当に大変だった」と語った。

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