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「ハロー型頭部保護装置」ドライバーの反応は?

2016年03月05日(土)17:12 pm

F1では2017年からドライバーの頭部保護装置をF1カーのコックピットに設けることを計画している。だが、これに対するF1ドライバーのとらえ方もさまざまなようだ。

●【画像】ハローをドライバー目線で見るとこんな視界

■フェラーリが「ハロー型」試作品をテスト

今年2回目のF1公式シーズン前テストが3日目を迎えた木曜日(3日)のバルセロナで、フェラーリのキミ・ライコネンがドライバー頭部保護装置を備え付けたF1カーでコースへ現れた。

今回フェラーリがテストを行ったのは、ドライバーのヘルメットの周りを囲むようにする「ハロー型」と呼ばれる保護装置の試作品で、ドライバーの視認性や運転への影響を調査することが今回のテストの目的だったようだ。翌日の4日(金)には、チームメートのセバスチャン・ベッテルも同様のテストを実施している。

ちなみに、「ハロー(halo)」とは、宗教画などで聖人の頭の後ろに描かれる「後光」を意味する語で、ドライバーのヘルメットを丸く囲むような形状をしていることからこう呼ばれている。

■視界は悪くなかったとライコネン

今回のテストに使用されたのはカーボン製の模型だったようだが、実際にその装置を装着してテスト走行を行ったライコネンは、運転中の視界について質問を受けると次のように答えた。

「少しばかり前方視界が妨げられるけれど、ほとんど違いがなくて驚いたよ」

■見た目は史上最悪だとハミルトン

だが、2015年に2年連続で通算3度目のF1王座についたメルセデスAMGのルイス・ハミルトンには、2007年のF1チャンピオンであるライコネンのコメントは信じられなかったようだ。

「ランチのときに何枚か写真を見たよ」と語ったハミルトンは、自分の顔を手でおおって見せながら、「これ以上何も言えないよ」と語った。

ハミルトンは自身のインスタグラムにも、この装置を装着して走行しているフェラーリF1カーの写真をアップし、そこに次のようなコメントを添えている。

「これはF1の歴史においても見た目の悪さでは最悪だよ」

「僕も安全を追求することは評価するよ。だけど、これはF1なんだし、今の形で全然問題などないよ」とハミルトンは付け加えている。

■ファンも大多数が否定的

以前から、F1カーのコックピットはオープンのままであるべきだと主張しているニコ・ヒュルケンベルグ(フォース・インディア)は当然ながら今回の試作品についても否定的だ。

「身の毛がよだちそうだ」と語ったヒュルケンベルグは、「こんなことはやめてくれ」と付け加えた。

エンジニアの中にも今回の試作品の形状に不安を感じた者がいる。フォース・インディアのテクニカルディレクターを務めるアンドリュー・グリーンは次のようなコメントを行っている。

「もしパーツがあの装置の上の部分に当たって、それがドライバーの胸に跳ね返ったらどうなると思う?」

F1ファンも今回の試作品を見て衝撃を受けたようだ。『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』や『Blick(ブリック)』がソーシャルメディアを通じて実施したファンの意識調査によれば、およそ75%が今回の保護対策装置の導入には反対だと回答したという。

■ロズベルグやベッテルは導入に前向き

だが、ハミルトンのチームメートであるメルセデスAMGのニコ・ロズベルグは、自分のツイッターにすべて大文字を用いて「大賛成」だと書きこんでいる。

4日(金)に保護装置試作品を装着して走行を行った最年少4年連続F1チャンピオンの記録を持つベッテルも、「見た目の悪さは無視しよう。これは命を守るためだからね」と語ったと伝えられている。

■まだ不十分だとビアンキの父

F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)やF1関係者がこうしたドライバー保護対策活動を強めるきっかけとなったのが、2014年に鈴鹿サーキットで起こったジュール・ビアンキ(マルシャ)の事故であったことは間違いない。その後2015年にはインディカーにおいてもジャスティン・ウィルソンが走行中に他車のパーツの直撃を受けて死亡するという事故も発生していた。

鈴鹿での事故以来意識が戻ることなく、2015年7月に他界したビアンキの父は、今検討されている対策ではまだ不十分だとフランスのテレビ局『Canal Plus(カナル・プリュ)』に次のように語った。

「一歩前進したが、これですべての問題が解決できるわけではない」

「FIAはジュールとジャスティンの事故を受けて対策を進めることにしたが、さらなる取り組みが必要だよ」

■危険だからこそF1だとクビアト

一方、ヒュルケンベルグは、F1にはある程度の危険が伴うほうが「セクシー」だとの発言も行っているが、レッドブルのダニール・クビアトも同じような意見のようだ。

クビアトはロシアの『Sportbox(スポートボックス)』に次のように語った。

「僕がレースを続けてきたのは、ひとつにはそれが危険なことだからなんだ。僕はそのリスクを負いたいと思っているよ」

実際のところ、多くのドライバーたちが、F1がいろんな意味でかつてのような魅力ある姿を失ってきていることに失望感を表しているのも確かだ。

■今のF1は「悲しい」とアロンソ

現在のF1カーは、以前に比べればエンジン音も貧弱となり、スピードも10年前に比べれば遅くなってしまっている。さらに、今年からゲーム的要素を含んだような予選方式が導入されることが4日(金)に決定したが、これに関しても真の速さを競うべきF1のあり方からは逆行するものだという意見もある。

3日(木)に、現在のF1に関して「おかしくなっている、あるいは方向性が定まっていないと思うか? それとも健全だと思うか?」と質問されたハミルトンは「あまり言い過ぎないほうがいいと思うけれど、最初の2つはその通りだと思うよ」と答えていた。

2005年と2006年にルノーで2年連続F1チャンピオンとなったフェルナンド・アロンソ(マクラーレン)も、現在のF1が抱えるさまざまな状況に関して「悲しい」と語ったと伝えられている。

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