全23戦で争われる2023年のF1だが、まだたった1レースを終えたに過ぎない時点でイタリアの名門F1チームであるフェラーリ内部にすでに大きな混乱の火種が生まれていると伝えられている。
■チーム内の混乱が噂されるフェラーリ
イタリアの『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』によれば、開幕戦バーレーンGP決勝をマシントラブルによるリタイアで終えたシャルル・ルクレールが、その後フェラーリ会長のジョン・エルカーンに直接面会を求めたという。
同時に、フェラーリF1チームの新たな代表となったフレデリック・バスールと、フェラーリCEOであるベネデット・ヴィーニャの間に対立があるという噂も浮上してきている。
『Corriere dello Sport(コリエーレ・デロ・スポルト)』は、バスールは、解雇された前チーム代表のマッティア・ビノットの責任の一端はヴィーニャが負うべきものだったことがわかって驚いていると報じている。
同紙はその一例として関係者の次のようなコメントを引用しながら、バスールは人事的決定やチームとスポンサーとの取引に関して自分がほとんどコントロールできない立場にあることに気づき始めているようだとしている。
「バスールは新しいスポンサーと契約することを望んでいた。だが、フェラーリのリーダーに止められてしまったんだ」
バスールが、プレシーズンテストと開幕戦の舞台となったバーレーンへ向かう際、フェラーリのチームメンバーたちとではなく、ライバルチームのメルセデスを率いるトト・ヴォルフと一緒の飛行機で移動したのもそのためではないかと考えられているようだ。
■レーシングディレクターもフェラーリ離脱を希望?
『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』はさらに、先週、車両コンセプト責任者を務めていたダビッド・サンシェがほかのチームへ移籍するためにフェラーリを離脱したことが明らかになったが、レースチームのマネジメントを担当していたジョナサン・ジャコバッツィとジノ・ロザトが、戦略責任者であったイニャキ・ルエダと共にフェラーリを去ったと主張している。
そして、同紙によれば、現在レーシングディレクターを務めているローラン・メキーもフェラーリを離脱することを望んでいるという。
サンシェ同様フランス出身のメキーは、かつて2014年シーズン序盤までフェラーリを率いていたステファノ・ドメニカリが最高責任者を務めているF1組織への転身を望んでいるのではないかと噂されているようだ。しかし、同じフランス出身のバスールがその移籍を拒否するために介入したものと考えられている。
『La Gazzetta dello Sport(ガゼッタ・デロ・スポルト)』によれば、「バスールは拒否権を行使しており、現在は袋小路に入っている」という。
『Corriere della Sera(コリエーレ・デラ・セラ)』は、それ以外にもさらにフェラーリを去る可能性がある者が複数いると次のように報じている。
「テクニカルディレクターの立場にあるエンリコ・カルディレをはじめ、何人かの契約がまもなく切れる」
「安全な場所にいる者は誰もいない」
■この問題の発端は前会長にあったとラルフ・シューマッハ
フェラーリ史上最も成功したドライバーであるミハエル・シューマッハを兄に持つ元F1ドライバーのラルフ・シューマッハは、フェラーリのこうした問題は、2014年10月から2018年7月に亡くなるまでフェラーリ会長を務めていたセルジオ・マルキオンネの時代まで遡ることができると示唆している。
「フェラーリにはある種の遺産があり、それは現在の会長の責任ではない」
「それは、アルファロメオを復活させた前会長にまで遡るんだ」
『formel1.de』にそう語った47歳のラルフ・シューマッハは、次のように付け加えている。
「フェラーリを再びオールイタリアンのチームにして、そのDNAに戻そうというのが彼の考えだったんだ。だが、彼らはその過程において多くのことを見落としてしまったのだと私は思っている」