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【F1】主要4チームが一斉に代表交代!2026年を見据え新体制作りを急ぐ・・・フェラーリ、ウィリアムズ、マクラーレン、アルファロメオの狙いは?

2022年12月14日(水)5:00 am

2022年12月13日、各チームの再編が一気に動き出した。

■ザウバーのバスール代表がフェラーリ新代表に就任

まず、噂されていた通り、アルファロメオF1として活動しているザウバーはフレデリック・バスールCEO兼チーム代表の退任を発表すると、同時にフェラーリがバスールのチーム代表(チーム・プリンシパル)就任を発表した。この計画は夏ごろから進んでいたと見られる。

■マクラーレンがザイドル代表の退任と新代表就任を発表

その2時間後、今度はマクラーレンがチーム代表のアンドレアス・ザイドル退任と、新チーム代表にアンドレア・ステラの即時就任を発表。

ステラは2015年からマクラーレンの主要メンバーであり、レース運営責任者、パフォーマンス・ディレクター、2019年からはレーシング担当エグゼクティブ・ディレクターを務めてきた。

■ザウバーがザイドル新CEO就任を発表

そのマクラーレンの発表直後、ザウバーグループは空席になったCEOにアンドレアス・ザイドルが2023年1月から就任すると発表した。

ザイドルCEOの最初の仕事として「新チーム代表の選任」に取り組んでいるという。

■スイス紙のベテラン記者は「カピートしかいない」と報道

噂では、ザウバーの新チーム代表には、12日(昨日)にウィリアムズのチームCEO兼代表の辞任を発表したばかりの64歳のドイツ人ヨースト・カピートではないかとささやかれていた。

というのも、現在アルファロメオというチーム名で戦っているスイス拠点のザウバーは、2026年からF1参戦を開始するアウディと手を組むことが明らかとなっている。

アウディはフォルクスワーゲンの傘下であり、かつてフォルクスワーゲンのラリーチームを率いていたカピートに、アウディのワークスF1チームの運営を任せたい、と考えるのは自然な流れだと考えられていた。

スイスの『Blick(ブリック)』紙のベテラン記者で高い評価を得ているロジャー・ブノワは、「カピートを除けば、ほかに名前はない」と報じている。

■ザウバーはグループCEOとF1チーム代表の体制

前任者のフレデリック・バスールの肩書きは、「チーム代表兼ザウバーモータースポーツCEO」だった。

しかしザウバーは今回、「グループCEO」職にザイドルを任命した。ザウバーグループが期待する仕事としては「グループ全体の成長を継続させることが任務」としており、これはバスールが務めてきたF1の枠を超え「チーム代表やモータースポーツCEO」以上のものになると考えられる。

実際プレスリリースは、アルファロメオF1チームからではなく、ザウバーグループとして発行されていた。

そのリリースでは、前マクラーレンF1チーム代表のアンドレアス・ザイドルをザウバー・グループのCEOに任命し、「ザイドルと共にチーム代表(チーム・プリンシパル)の選任に取り組む」としている。

■10チーム中4チームで再編、2026年を見据える

F1には10チームが参戦しているが、この数週間でフェラーリ、ウィリアムズ、アルファロメオ(ザウバー)、マクラーレンの4チームで代表が代わった。

これら伝統と歴史ある古参の4チームは、チームの立て直しに一気に動き出した。改めて時系列で見てみよう。

11月29日、フェラーリはマッティア・ビノット(チーム代表)の「辞任」を発表した。
今季のフェラーリは素晴らしいマシンを創り上げたものの采配や戦略によって勝利を逃していたことから、イタリアメディアを中心にマッティア・ビノットの代表交代が叫ばれてきたが、53歳になるスイス人のビノットは最終的には「辞任」という形で28年間勤めた会社を去ることになった。

12月12日、ウィリアムズはヨースト・カピート(CEO兼チーム代表)の「辞任」を発表した。後任は後日発表としている。
ウィリアムズは今季最下位に落ちてしまい下位グループから脱出できずに苦しんでいる。2020年からウィリアムズのオーナーになっているドリルトン・キャピタルのマシュー・サベージ会長は「ヨーストが予定していた引退を延期してこの挑戦に挑んでくれたことに感謝している」とプレスリリースで述べているが、64歳になるドイツ人のカピート自身は引退とは発表していないことから、別の場所での役割を担う可能性もある。

12月13日、アルファロメオF1チームはフレデリック・バスール(チーム代表兼ザウバー・モータースポーツCEO)が「2023年1月に会社を去る」と発表した。

12月13日、アルファロメオF1チームの発表直後、フェラーリはフレデリック・バスールが2023年1月9日から「チーム代表兼ゼネラル・マネージャーに就任」すると発表した。
夏ごろから同じイタリアのアルファロメオF1チームを運営するザウバーモータースポーツのフレデリック・バスールと交渉していたとされている。

12月13日、マクラーレンがアンドレアス・ザイドル(F1チーム代表)が「チームを去り、別のチャレンジに移る」と発表した。同時にレーシング部門のエグゼクティブディレクターを務めていたアンドレア・ステラが「新代表として即時に就任」したと発表した。

12月13日、マクラーレンの発表直後、ザウバーグループはアンドレアス・ザイドルが「2023年1月からグループCEOに就任」すると発表した。
ザイドルの最初の仕事は「チーム代表の選任」だという。アルファロメオF1は2023年シーズン限りでF1から撤退するが、ザウバーは2026年からアウディと組むことが決まっている。

この時点で、ウィリアムズとアルファロメオF1の2チームの代表が未定、またマッティア・ビノットとヨースト・カピートの去就が未定となっている。

●【チーム名】:2022年代表→2023年代表
【フェラーリ】:マッティア・ビノット代表(去就未定)→フレデリック・バスール代表(前アルファロメオF1代表)
【ウィリアムズ】:ヨースト・カピートCEO兼代表(去就未定)→TBA(近日発表)
【アルファロメオ】:フレデリック・バスールF1チーム代表兼モータースポーツCEO(フェラーリ移籍)→TBA(近日発表)※アンドレアス・ザイドルはザウバーグループCEO(前マクラーレンF1代表)
【マクラーレン】:アンドレアス・ザイドルF1チーム代表(ザウバー移籍)→アンドレア・ステラF1チーム代表(現マクラーレンのレーシング担当エグゼクティブ・ディレクター)

この4チームが代表を交代した目的は次のようなものと考えられる。

フェラーリは、チャンピオン争いの主役に戻ってきたこともあり、急ぎ体制を整えてすぐにでも結果を出したい。今回の一連の動きの中心はやはりフェラーリだ。F1はフェラーリを中心に回っていると言われているが、まさにフェラーリからドミノ倒し的に一気に動いた。

ウィリアムズは、短期的には最下位脱出を目標とし、2026年のレギュレーション変更を見据えて急ぎ体制を整えたい。創業家から引き継いだドリルトン・キャピタルが新チーム代表に誰を選ぶのか、次の一手に注目したい。

ザウバーは、2026年からのアウディとのコラボレーションに向けて、準備を進めることが急務だ。2026年までの猶予はあと3年しかない。フレデリック・バスールを失ったものの、パワーユニットを供給しているフェラーリとはザウバーが金銭的に有利になる交渉があったと考えてもおかしくない。グループCEOに就任したザイドルがどのような経営手腕を発揮するか注目だ。

マクラーレンは、ザイドルを失ったもののこの数年間で着実に体制を整えており、引き続き体制作りを強化し、常に表彰台や優勝争いに加わるレベルまで上げていくことになる。

■F1チーム代表という難しい仕事にも注目

最近はNetflixによるドキュメンタリー番組の効果もあり、アメリカと若者の間でF1人気が急上昇。さらに仮想通貨のスポンサーも増えたり、世界中がF1GPを誘致し、レース開催数が増えるなど、F1全体やチームには多くのスポンサー付き、スポンサーステッカーを貼る場所がないという嬉しい悲鳴まで聞こえてきた。ところがこれはF1運営団体と上位チームの話だ。

F1は構造的に非常にお金が掛かることから、一部の上位チームを除きF1チーム運営は厳しい状況に変わりはない。実際、中小規模チームにはスポンサーが少ないのがわかるだろう。

F1は転戦数が増えたことで旅費も増え、ハイブリッド化が進んでパワーユニットの価格も上昇、形状も複雑化し、素材も高価になったことで、昔とは比べものにならないくらいコストが上がっている。そこでF1界は小規模チームでも持続可能とするために年々マシン開発の範囲や時間を縮小し、予算上限(バジェットキャップ)を導入したことで、裕福なチームが無制限にマシン開発出来ないようにした。上位チームの開発を制限すれば、下位チームとの差が縮まると考えたからだ。

こうしたことにより予算が潤沢にあるビッグチームと予算が少ない中小規模チームのタイム差縮小と、中小規模チームの生き残りには一定の効果が見えてきたものの、小規模チームがレースで有利になることはなかった。それは、裕福なビッグチームが優秀なスタッフを引き抜くことでライバルを弱体化させ、さらに短時間で他チームより優れたマシンを作ることに成功しているためだ。

また、開発の範囲が昔より狭くなったことで、斬新なマシンが登場することも少なくなり、中小規模チームが一発逆転を狙って上位争いに加わるのが難しくなっていることから、開発の正しい方向を決め、ステップ・バイ・ステップで積み上げていくことが重要になっている。

こうした流れから、チーム代表が正しい方向性を示し、優秀なスタッフを揃え、チームとして効率よく機能させるかが今まで以上に重要な課題となっており、より複雑で難しい仕事になっている。

会社組織となっているチームは数百人を抱えており、トップを代えただけで短期間で結果が出るものではない。しかしトップが代わることで方向性は変わり、雰囲気も変わる。そのため、次の大きな変革のチャンスとなる2026年を見据えて、まずはトップから体制を整え、上位争い、さらにはチャンピオン争いに挑戦していくことになる。

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