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角田裕毅だけ、なぜセーフティカーの追い越し指示が出なかった?「いつもはセーフティカーの前に出られるのに・・・」またもや現場の柔軟な判断が求められるレアケース発生

2022年11月14日(月)12:18 pm

2022年F1第21戦サンパウロGP(ブラジル、アウトドローモ・ホセ・カルロス・パーチェ)の決勝レースを終え、角田裕毅(アルファタウリ)が次のように振り返った。

●【2022F1第21戦サンパウロGP】決勝レースのタイム差、周回数、ピット回数

角田は、セーフティカー前にはウィリアムズの2台と同一周回で競り合い、この3台とも周回遅れになっていた。しかし、セーフティカーが明けるとなぜかウィリアムズの2台はトップと同一周回になり、角田裕毅だけが周回遅れ扱いにされるという不思議な結果になった。それを映像とデータから読み解いてみよう。

■いつもはセーフティカーの前に出られるのに・・・

角田裕毅
スターティンググリッド:ピットレーンスタート
決勝レース:17位

「レース前の変更でマシンのフィーリングは少し良くなったのですが、それでもまだ快適とは言えず、今日はペースが上がらなかったです」

「いつもはセーフティカーを追い抜けるのに、今日はポジションをキープするように言われたので、前に出るチャンスがないまま1周遅れでレースを終えてしまいました」

「大変な週末だったので、来週の最終戦アブダビに向けて、なぜこれほどまでに苦戦しているのかを調査しなければなりません」。

■角田に何があった?

セーフティカーの追い越し指示が出なかった角田裕毅だが、いったい何があったのだろうか?映像とタイミングモニターで確認してみると意外な事実が判明した。

映像上の51周目から52周目のホームストレートで、角田はトップのジョージ・ラッセル(メルセデス)に周回遅れにされた。この時点での周回遅れと順位は16番手角田裕毅、17番手アルボン、18番手ニコラス・ラティフィ(ウィリアムズ)だった。

52周目、ターン10から11の間でランド・ノリス(マクラーレン)がコース上でマシンを止めたことで、セクター2&3がイエローフラッグ区間になった。この2つのセクターでは追い抜き禁止になった。ノリスがリタイアしたことで、この時点での順位は15番手角田、16番手アルボン、17番手ラティフィの順だ。

53周目、イエローフラッグはバーチャルセーフティカー(VSC)に切り替わった。これで全車は全区間で一定速度まで速度を落として走らなければならない。これにより前後のマシンとの差はほぼ変わらないまま低速でレース周回数を重ねることになるため、順位は変わっていない。

54周目、バーチャルセーフティカー中の角田は、トップのジョージ・ラッセル(メルセデス)のすぐ後ろを走っていた。つまりこの時点では角田は周回遅れのままになっている。

55周目、バーチャルセーフティカーからセーフティカーに切り替わった。ピットレーン出口から出てきたセーフティカーを先頭にラッセル、角田裕毅、アルボン、ハミルトンの順で走行している。

55周目の終わり、運命の時がやってくる。角田はピットレーンに入ると加速し、ピットレーン側のコントロールラインを超えた時点では、コース上を走るラッセルを1秒間ほど追い抜いている。この瞬間のコントロールライン通過時の順位では、角田は同一周回になっているのが映像で確認できる。この“わずか1秒間ほどの同一周回”が運命の分かれ道となった。

56周目、セーフティカーを先頭にラッセル、アルボン、ハミルトン、ペレス、サインツ、そしてピットアウトしてきた角田、ラティフィという順で隊列を作ってターン4に入っている。つまり実際は角田は上位4台に周回遅れにされたことになる。

タイミングモニターでも15番手アルボン、16番手角田、17番手ラティフィという順で、3台が1周遅れを意味する「1L」となっている。

58周目、「周回遅れの23号車(アルボン)と6号車(ラティフィ)はセーフティカーを追い抜けるようになった」と表示が出ると、アルボンとラティフィがセーフティカーの前に出た。その時点でタイミングモニターのアルボンとラティフィからは周回遅れの「1L」が外れてタイム差が表示された。角田裕毅のみが周回遅れの「1L」のままだ。

つまり、実際には角田裕毅は52周目から周回遅れだったものの、55周目には1秒間ほど同一周回になってしまったため、記録上で判断したスチュワードは同一周回の角田裕毅にセーフティカー追い越しの許可を出すことが出来なかったようだ。

■ラップチャートでも・・・

レース後に発表されたラップチャートを確認すると、22号車の角田裕毅の順位変動はこう記録されている。

LAP50:16番手、同一周回
LAP51:15番手=周回遅れ(ラッセルに抜かれて周回遅れ、ノリスがストップ)
LAP52:15番手=周回遅れ
LAP53:15番手=周回遅れ
LAP54:15番手、同一周回(ピットイン)
LAP55:16番手=周回遅れ
LAP56:16番手=周回遅れ
LAP57以降:17番手=周回遅れ(アルボンとラティフィはトップと同一周回のままフィニッシュ)

映像ではノリスがストップした時のラップ数は「LAP 52/71」と表示されているが、レース後のラップチャートでは4号車のノリスの記録は「LAP 50」の12番手が最後で、「LAP 51」では4号車は消えている。映像とラップチャートの記録上ではズレが出ていることは注意したい。

■ルールブックを正確に読みすぎたことで起こったレアケース

結局、角田だけが周回遅れのままフィニッシュしたわけだが、これはセーフティカーが入ったタイミングと角田がピットインした際に一瞬だけ同一周回になったタイミングを正確にルールに照らし合わせると、実際は周回遅れであってもジャッチをする瞬間だけ“同一周回”だった角田には、セーフティカーを追い越して良いというルールが当てはまらなかったということになる。

ルールは明文化しなければならないため、このような複雑なレアケースまでは網羅できていなかった。もし一年前のように一人のレースディレクターが責任を持って現場を見て柔軟に判断することが出来ていれば起こっていなかったことだろう。

本来、ピットアウト後の角田はウィリアムズの間でコースに戻っていたのだが、スチュワードがルールブックに則って正確に判断した結果、一人だけ周回遅れになったことは不運としか言いようがない。もしこれがポイント圏内から脱落するようなケースだったら・・・もっと大きな問題になっていただろう。

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